落合 真佐美 先生へインタビュー
「総合的な探究の時間」を通して、生徒・教員の変化はありましたか。
当校では中学1年生から高校2年生までの間、読書活動推進の一環として『読書ノート』を作成しており、生徒は年間の読書活動を記録していますが、前述の修学旅行の後に、記述に変化が見られました。
「留学生にインタビューをしたときの返答内容について、深く調べたいと思い、この本を選んだ」など、探究の経験が次の行動に繋がり、自分の意志で本を手に取る傾向が増えていたのです。
もし、生徒が本を読んでいたとしても『読書ノート』のような“報告の場”がなければ、私たち教員はそうした変化を知らずにいたかもしれません。
生徒の興味・関心が喚起・増幅され、次のアクションに繋がることが、「探究」の目指すところなので、こうした変化は大変嬉しく思います。教員が「本を読みなさい」「次はこれを勉強しなさい」というよりも、よほど効果的です。
また、「教員自身がSDGsを学ぶ」という面においても、探究は良い機会となりました。
現在は小論文を課す大学が増え、テーマも多岐にわたっているため、国語科の教員だけでは対応できなくなっていることが現実です。
そのため、専門分野に関する記述を正しく書けているか、他教科の教員が添削する機会は以前よりも増えています。
小論文以外でも、生徒へ指導する際に、教員はこれまで以上に担当教科以外の知識も必要となるでしょう。SDGsは教員自身が「SDGsをちょっと調べてみよう」というきっかけづくりになりました。
「探究」の評価の部分はどのようにされましたか?
当校では、「探究」の時間に取り組んだことを生徒に自己評価をさせています。評価方法は、アンケートによる振り返りと、連携させたポートフォリオです。
自らの取り組みを5段階または10段階で評価し、その根拠を書かせることが多いですね。
成績表には、所見(自由記述)を書いています。学年末に1回、年間で生徒たちが取り組んだ項目に対して、「どのように取り組んでいたか」について記載しています。教員は生徒の振り返りを参考にして「頑張って取り組んだこと」を強調して評価を付けています。
最後に、コロナ渦での「探究」を振り返って、いかがでしたか。
コロナ禍でなければ、もう少しグループワークの時間を増やしたかったというのが正直なところです。 やはり、生徒同士が話し合い、問題を見付けて、問題に対して答えはどこにあるのかを探し、それをまとめて、最後は発表するという、本来の「探究」の流れができるのが理想だと考えています。
当時は、アクティブラーニングを実施する際にも、「15分以内」と制限を設けていました。本来であれば、授業1コマの時間をフルで使い、生徒同士のディスカッションを行いたいところでしたが、結果的に、教員から生徒へ一方向で指導するプログラムになってしまい、ある種の “もどかしさ”や“心残り”はあります。しかし、大事な生徒の安全には代えられません。
収束の見えないコロナ禍という制約の中で、いかに生徒に対して本来の「探究」の近しい学びを提供できるか。それが、我々教員に課された使命であると強く認識しています。