The Teacher's Learning

再考:働き方改革 「学校でやれることはやり尽くした」は本当か
取材日 : 2025.01.29
教育研究家、一般社団法人ライフ&ワーク 代表理事

妹尾 昌俊 氏

再考:働き方改革 「学校でやれることはやり尽くした」は本当か

一般社団法人ライフ&ワーク代表理事、教育研究家、OCC教育テック大学院大学教授(25年4月開校)。 
全国各地の教育現場を訪れて講演、研修、コンサルティングなどを手がけている。 
政府の委員(中教審、部活動ガイドライン検討会議など)や教育委員会のアドバイザーも務めている。 
著書に『学校をアップデートする思考法』、『校長先生、教頭先生、そのお悩み解決できます!』、『先生を、死なせない。』、『学校をおもしろくする思考法』、『教師崩壊』、『変わる学校、変わらない学校』など。5人の子育て中。

過去の連載

第1回 『ノンストップな日々、働き方をみつめなおす理由』

第2回 『働き方改革でカットしてはマズいこと:急がば回れ』

第3回 『再考:働き方改革 「学校でやれることはやり尽くした」は本当か』

■「文科省が悪い」という思考停止

「国が教職員定数の改善など、もっと予算を付けてくれないと、学校だけでは限界。」

「学校で既に見直せるものはやっている。絞りきった雑巾をさらに絞れと言うのか。」

学校の働き方改革をめぐって、校長や教職員から度々聞く言葉です。読者の皆さんは、いかがでしょうか。賛同する、共感する方も多いのではないでしょうか。

確かに、文科省や財務省の役割は大事です。教職員の増員を含めて、もっと教育にカネをかけないといけない、と私も考えます。

それに、文部科学省は、教育委員会や学校にスクラップ&ビルドを求めているのに、自身の施策はビルド&ビルドではないですか?学習指導要領がその典型ですし、そのうえ、キャリアパスポートだ、観点別評価だなどと、学校に負担を増やす一方です。

国に対する批判と政策提案は私も度々していますし、今後も続けるつもりです。ですが、同時に、他人のせいにして愚痴を言うだけではダメだろう、とも思うのです。

何より、今日の学校の過酷な状況は、教職員にとっては自分事です。自分と同僚の命と健康を守るためにも、また、よりよい職場にしていくためにも、教職員に心身のゆとりを取り戻す必要があります。わたしの場合、保護者ですし、全国各地に教育関係者の友人がいます。過労死や欠員まで起きているのは、他人事ではありません。

■学校でできること

「学校にできることは、たかがしれている」。そう思う人は、おそらくみなさんの周りにもいるでしょう。

本当にそうでしょうか?

たとえば、学習指導要領の量的な拡大は大きな問題ですが、指導要領をよく読むほど、「〇〇を絶対にやりなさい」とはほとんど書いていません。一部の単元を軽めに進行することもできるし、学校行事や教育課程外の活動(補習や部活動)をどうするかも学校裁量です。また、一部の自治体では、いまだ振替の取れない土曜授業を年間数回実施しています。月曜は子どもたちも疲れているようです。もちろん、指導要領には土曜授業をせよ、なんて書いていません。

教育活動やこれまでのやり方で慣れてきた仕事の一部を減らしたり、根本から見直したりするのは、手間だし、簡単ではありません。でも、お試しからでもいくつかやってみる(試行してみる)価値は、あるのではないでしょうか。

留守番電話の導入のときなども、やる前から心配事や文句ばかり言う人がいましたね。学校は子どもの命、安全を預かっているので、慎重で保守的な姿勢になりがちなのは自然なことだと思います。でも、余剰時数の削減、行事や通知表の簡素化、部活動の休養日を増やす、高校等での補習を減らすことなど、働き方改革の多くは、子どもの命には影響しませんし、いくつか試してみたらよいのです。

■事例:学校が変わっていった

わたしが支援で関わっていたある公立中学校も、当初は、教職員の反応としては「どうせ変わるわけがない」「国や市が教員数を増やすなどしてくれないと、無理だ」という、やや冷ややかなものでした。

とはいえ、多くの教職員が、忙しすぎる日々のままでいい、と思っているわけでもありません。そこで、最初に、なぜ働き方を見つめなおす必要があるのかについて、校内研修であらためて考えてもらう時間をつくりました。わたしからは、過労死等の健康リスクを高める問題や、働きすぎにより教職員の学びやインプットが犠牲になる影響について解説しました。子どものためといって、長時間勤務を続けることは、結果的には子どものためにならない、ということを考えてもらったわけです。

その後、この中学校では、改善できそうなことについて教職員でアイデア出しをしてみることにしました。「やめる、へらす、かえる、充実させる」という分類で、気軽にアイデアを出してみよう、ということにしたところ、たくさん出てきました。やはり現場には既に改善の種はたくさん転がっているのです。

この中学校では、やれることから年度内にスタート。通知表の所見を箇条書き程度で簡素化。生活ノート(生徒と交換日記のような感じで生活上の悩み等をやりとりすること)も、ひとことコメントに(別の中学ではやめる例もありますが)。掃除の回数を削減。でも、カット、カットばかりではなくて、ちょっとした雑談や職員のニーズの高い研修は充実させることにしました。

こうした結果、この中学校では、昨年度、平均の月当たり時間外勤務時間は半減し(同じ月で比較しているわけではないので、厳密な検証ではありませんが)、時間外45時間以内の教員が8割以上となりました。時短を目的化するのではなく、いくつか取り組んで挑戦していった結果として、時短は後で付いてくるのです。

なにより、時間外が減ったということ以上に、教職員もわたしも嬉しかったのは、「学校は変えていける」「自分たちの働き方は自分たちの力で変えていける」という教職員の手ごたえ、効力感でした。

もちろん、読者のみなさんの学校の実情におうじて、さまざまな難しさはありますし、文科省や教育委員会(私学であれば学校法人)からの支援もとても重要です。と同時に、学校でできること、自分たちの職場を自分たちで変えていける余地もまた大きいのではないでしょうか。

図 学校でできること事例

株式会社NOLTYプランナーズ