The Teacher's Learning

働き方改革でカットしてはマズいこと:急がば回れ
取材日 : 2024.12.27
教育研究家、一般社団法人ライフ&ワーク 代表理事

妹尾 昌俊 氏

働き方改革でカットしてはマズいこと:急がば回れ

一般社団法人ライフ&ワーク代表理事、教育研究家、OCC教育テック大学院大学教授(25年4月開校)。 
全国各地の教育現場を訪れて講演、研修、コンサルティングなどを手がけている。 
政府の委員(中教審、部活動ガイドライン検討会議など)や教育委員会のアドバイザーも務めている。 
著書に『学校をアップデートする思考法』、『校長先生、教頭先生、そのお悩み解決できます!』、『先生を、死なせない。』、『学校をおもしろくする思考法』、『教師崩壊』、『変わる学校、変わらない学校』など。5人の子育て中。

過去の連載

第1回 『ノンストップな日々、働き方をみつめなおす理由』

第2回 『働き方改革でカットしてはマズいこと:急がば回れ』

■時短が目的化、やらされ感の募る働き方「改革」

前回、忙しくノンストップな日々を見つめなおす理由について、書きましたが、関連して、わたしがすごく心配しているのは、ここ数年の働き方改革の動き。多くの学校、教育委員会は、時間外(在校等時間)の上限や目標値を守ることばかりに注目しているのでは?

教育委員会や校長が働き方改革の趣旨を十分に説明、対話しない場合、受け手である教職員(あるいは校長も含めてでしょう)にとっては、仕事は減らないのに、時間管理だけやかましく言われて、やらされ感が募る。ストレスフルなわけです。

本来、在校等時間の管理や時短は、教職員の健康を守ることや人材獲得・離職防止などの手段の一部に過ぎないのに、手段が目的化してしまっている。その結果、過少申告や持ち帰り仕事が増えている学校もあります。

学校評価や学校運営協議会(コミュニティ・スクール)などにも似た問題があります。やればいい、というものではないですよね。このサイトに参加されている先生方も、学校評価のアンケートなどは毎年やっていると思います。でも、なにか改善されたものはありますか?

■実態をみて、ガチで対話しながら対策を練る

関連して、みなさんと一緒に考えたいのは、働き方改革だからといって、つっこんだ話し合いをしたり研修したりする時間もバサバサカットして、大丈夫でしょうか。

もちろん、必要性の薄い会議や研修はやめたらよいし、進め方をもっと工夫すべきものもあると思います。とりわけ、小学校等で、授業研究に偏りがちなのは、どうかと思っています。いくら授業研究しても、いまは授業準備する時間がとれていないし、授業関連以外の不安や悩みもたくさんあるので。一例ですが、若手の先生のなかには、「保護者に電話するのが怖い」いう人もいます。そりゃそうですよね、このネット時代に電話する機会は激減していますし。そんなちょっとした困り感や不安を開示して、ちょっとしたコツを教え合うような校内研修などがあってもいいと思います。このサイトでも、みなさんの気づきや、ちょっとした取組を共有していってほしいと思います。

みなさんの学校はいかがでしょうか。対話や議論を端折ったために、かえって、関係者の理解が得られず、抜本策に着手できないままである、もしくは教育活動等を根本から見直すことができていない。そんな学校も少なくないのではないでしょうか。

これは学校にかぎった話ではなく、企業等でも似た問題はあるようです。バラバラのメンバーが組織やチームとして体を成し、うまく動くようにすること。これを「組織開発」と呼びますが、中原淳・中村和彦『組織開発の探究』(ダイヤモンド社)※1 では、3つのステップが大事だと述べています。

  • ①見える化:自分の組織の問題を「可視化」する
  • ②ガチ対話:可視化された問題を関係者一同で真剣勝負の対話
  • ③未来づくり:これからどうするかを関係者一同で決める

部活動を例にとると、わかりやすいかもしれません。先生たちのなかには、部活動指導を進んでやりたいという人もいる一方で、嫌々の人もかなりいます。普段の職員室ではどうでしょうか。後者の声も表に出ているでしょうか。熱心な人の声にかき消されてはいないでしょうか。

アンケートやヒアリング等を通じて各々の気持ちを明らかにすること、これが「①見える化」のひとつです。また、実際にどのくらいの時間的な負担が教員にも生徒にもかかっているのか計測したり、生徒の声を収集したりことも問題を可視化し、考えるヒントとなるでしょう。

ちなみに、働き方改革を進めるうえで、生徒の負担軽減や生活時間確保の視点もとても大切です。

次に、例えば、

  • 現状の全員顧問制にはどのような問題、影響があるのか
  • 少子化に伴い教員数も減っていくなか、いまの体制は持続可能か
  • いくら生徒がもっと練習したい、顧問のほうも指導したいという状況でも、長時間の部活動に問題はないのか

など、やや抜き差しならぬテーマについて、本音をぶつけながら話をしていきます。これが「②ガチ対話」というわけです。

つまり、重要なのは、たんに会議や研修をしたらよいのではない、ということです。しっかり本音をぶつけられる場をつくること、忌憚なくアイデアを出せる場(心理的安全性)をつくることが校長・教頭や研究主任らの役割として大きいです。

そのうえで、ではこれからどうするか、今年度中にはこうして来年度はこうしていくといったことを議論して決めていきます。このような「③未来づくり」の段階では、対話とちがって、一定の結論を導いていく、決めていくということが必要となります。会議や研修をしただけで、動き出さなければ、あまり意味はありません。

■保護者等とも実態を共有し対話

まずは教職員での対話と議論を進めてほしいですが、保護者や地域の方とも進めていけるといいと思います。

校長等のなかには「学校がたいへんだ、たいへんだ」とは言いづらい、と言う人が少なくありません。自分たちの弱みを見せるようだからでしょうか?

しかし、学校が忙し過ぎることは、ほとんどの保護者が報道等で聞いています。ただし、自分の学校がどのくらいかは知らない。先生たちが休憩もほとんど取れない実態や、寝不足ぎみなことも知りません。勤務時間が何時何分から何時何分までかも知らない。だって、誰も教えてくれないのですから。

率直に保護者等にも伝えることが必要だと思います。そのうえで、たとえば、部活動数の精選や行事の見直しについて話し合っていく。

こうした教職員の間や保護者等との対話と議論は、手間はかかります。でも、こうしたプロセスを大切にしないと、抜本策は進みません。急がば回れ。

☆ご意見、ご感想など、お気軽に。お待ちしております。

参考書籍

※1 中原淳・中村和彦 (著),(2008) 組織開発の探究 理論に学び、実践に活かす、ダイヤモンド社

株式会社NOLTYプランナーズ