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探究指導コラム

NOLTYスコラ 探究プログラム

中学校・高校の「探究」に関する記事をまとめています。

2023.10.13

学生起業家に聞く~起業経験と総合型選抜~

今回インタビューしたのは、青森の高等学校出身、地方と都市部の教育格差をなくそうと学生団体LINDEALを立ち上げ、大学3年生で起業した合同会社あしたの学校代表の吉田さんと副代表の岡田さん。またお二人とも高等学校時代の経験をベースに総合型選抜で難関大に合格されています。お二人に起業の経緯や活動内容、総合型選抜入試の体験についてお話を伺いしました。


合同会社あしたの学校
社長 兼 CEO 吉田 悠馬 氏
在籍大学 慶應義塾大学 総合政策学部 4年
初代学生団体LINDEAL代表 https://lindeal.jimdofree.com/lindeal%E3%81%AE%E6%AD%A9%E3%81%BF/


自己紹介をお願いいたします。

現在は、慶応義塾大学総合政策学部(以下SFC)に通っています。また、大学3年次に起業した合同会社あしたの学校の社長も務めています。あしたの学校では、主に中学高校の総合的な探究の時間の授業づくりのサポート、探究学習に関する学生に向けた講演、探究学習を取り入れたい企業や教員に対する研修などを行っています。

起業したきっかけについて教えてください。

起業する前に、大学のゼミで探究学習のサポートをするプロジェクトに関わっていました。高校で探究学習が必修化される前後で、先生も生徒も探究学習に対する理解が深くなく、わからないまま授業をやっている姿を目にしました。探究学習は社会に出てからも役に立つ本質的な学びができる時間です。探究学習の時間をより良いものにするためにサポートをしたいと思ったことがきっかけです。

起業してからの活動と学生団体をしていたときの活動で違いを感じることはありますか?

高校時代に学生団体の活動をしていたときは、学校外での学びの場の機会提供をしていました。学生団体の理念にもある通り、地方と都市部の教育格差の解消のために、学校外で学びたいことをもっと学べる場をつくるということをしていました。ところが探究学習の必修化によって、全国的に学校内でも教科学習外の探究の学びの機会が提供されるようになりました。あしたの学校では、学校内の探究学習のサポートをしているため、学校外から学校の中に活動の場が動いたというのは大きな変化だと思います。

起業し、学校内に入って活動する上で重要視していることはありますか。

法人格を持って学校の中に入って活動する上で、収益を上げるということは重要視しています。教育関連はなかなか収益化が難しいというビジネス上の課題もありますが、今のままでは教育におけるイノベーションが起きにくい環境が続いてします。わたしたちが成功例になれば、後続企業も参入しやすくビジネスモデルにも変化が起きると思っています。

起業してみてよかったことはありますか。

活動がしやすくなったと思います。学生団体は協賛金を得て、その資金を基に活動します。賛同してくれる支援者がいてこそ活動ができますが、会社の場合、自分たちが必要だと思う活動をし、そこから収益を得て、また必要なところに回すというサイクルを自分たちで決定できるため、活動がしやすくなったように思います。また企業である以上、収益を上げるといいう点は特に考えるようになりました。難しいところは学校自体が潤沢なお金があるわけではないので、いただけるお金に限度があるのは苦しいですが、ほかの事業で収益をあげて、教育現場に還元するというサイクルが作れると良いなと思っています。

今後の展望はどのように考えていますでしょうか。

来年からは大学院に進学し、会社の活動と学業、両方を進めていく予定です。会社の活動では、学校の授業のカリキュラムの策定、サポートなどのサービスは続けて行い、今後は総合型選抜対策でもサービス提供を行おうと考えています。本質的な探究学習を高校3年間行い、その結果として総合型選抜入試に結び付くといったサービスの提供を検討しています。

ありがとうございます。次は、ご自身の大学入試についての体験談を教えてください。

2020年にAO入試(現在の総合型選抜)を利用してSFCに入学しました。AO入試の一次試験は書類審査で、志望理由書1500字、自由記述A4二枚、任意資料を提出しました。志望理由書を書く上で特に気を付けたことは、自分自身がどのようなプロジェクトをやりたいと考えているか、そのためには何が必要で、SFCでの学びをどのように活用するのか、なぜSFCなのかをきちんと言語化することです。SFCはプロジェクトベースで学びを進めるため、自分自身で学びたいことを開拓していく必要があります。自分が何をやりたいのか、社会にどう貢献するのかを明確にし、志望理由書に落とし込む必要があります。
自由記述には志望理由書に書いた内容を補足し、自分自身がどういう人間なのかというバックグラウンドを中心に記載しました。書類提出にあたり、学生団体のスポンサーであった学習塾の経営者、SFCの先輩などに指導を依頼し、完成させました。

二次試験の面接ではどのようなことを聞かれましたか?

面接では志望理由書をもとに質問されます。志望理由書の内容は面接担当教員の専門ではないことも多いので、そもそもの部分を質問されることも多いです。わたしは「まちづくりと探究学習」ということをテーマにしていたのですが、なぜ「まちづくり」が平仮名なのかという質問もされました。また総合政策学部志望だったので、あなたにとっての政策とは何かということも問われました。面接では細かいことも質問されますが、しっかり考え、自分の活動や経験に基づいた内容を志望理由に書いていれば、きちんと答えられるかなと思います。

合同会社あしたの学校
副社長 兼 COO 岡田 羽湖 氏
在籍大学 国際基督教大学 教養学部 4年

自己紹介をお願いいたします。

国際基督教大学(以下ICU)教養学部に通う4年生です。大学3年生の時に合同会社あしたの学校を起業し、現在は副社長も務めています。

あしたの学校を起業した経緯について教えてください。

きっかけは高校1年生の時、当時青森県に住んでいて、課外活動も探究という言葉すらも知らなかった時、はじめて16年間過ごした青森を出て、福岡で開催された日本の次世代リーダー養成塾という全国規模のサマースクールに参加しました。全国から高校生が集まるイベントで、そこで感じた都市部と地方での教育格差を是正したいと思い、高校2年生の秋に学生団体を立ち上げました。学生団体では青森県をはじめ、東北の高校生に向けた課外活動の機会を創出するというイベントを開催していました。しかし活動していく中で、学校の外での活動では、届けられるターゲットとそうでないターゲットがいることに気づき、このままでいいのかとモヤモヤしていました。それがきっかけとなって、もっと多くの人に教育・探究機会を創出、提供したいと思い、大学3年生の時にあしたの学校を立ち上げました。学校の外ではなく、学校の中に入っていくことで網羅性を高め、すべての人に届けることを実現したいと思っています。

起業してよかったことはありましたか?

ひとつは人脈が広がったことです。起業しなければ出会えなかったような企業との繋がりもできました。また東京都内の高校と一緒に活動したことで、探究学習に力を入れている先生方、探究学習を現役で行っている高校生をリアルで見ることができました。

人脈が広がってどのような変化がありましたか

探究という一つのテーマでも人によって考えていることは様々です。同じ興味を持っている人との出会いの中で、対話する機会を得ることがきたのがとても良かったです。対話する中で自分の考えていることをブラッシュアップでき、新たな気づきを得られました。

大学卒業後の進路について教えてください。

あしたの学校の会社の活動を持続しつつ、一般企業にも就職する予定です。

就活の際に起業の経験が活かされましたか?

起業をしたということよりも、その一連の活動を通じて得られた学びにフォーカスしてアピールしました。選考の中で会社側は、起業したという事実より、そこで何を得たか、中身をより重視しているように思います。面接では起業の経験からはなしを始めるのではなく、原体験である高校生の時に参加したリーダー塾で感じたモヤモヤから話をしました。そこで感じたモヤモヤを放置せずに、課題分析して、可視化した状態で、自分に何ができるのか考え行動に移していき、また大学では、新しい形でその課題に挑戦したということを伝えました。その時々で自分に何ができるのか考え、行動に移していった、課題発見からの行動力が評価されたのかなと思います。

ありがとうございます。次は大学受験についてお聞きしたいです。総合型選抜でICU教養学部に入学されたと思います。試験の内容や対策について教えてください。

当時はICU特別入試という名称でした。何を学びたいか、なぜICUなのかという志望理由書とあなたにとってのリーダーとはというお題で800字、あなたが心を動かされた経験からどのような行動をしたかを1500字、の3種類の書類を提出する一次審査、グループディスカッションと口頭試問の二次審査がありました。

審査に通過するために何が重要だと思いますか?

書類づくりは、自己推薦なので大学側へのアピールをすることが大事です。ラブレターのようなものだと思います。いかに自分がこの大学とマッチしているか、私がこの大学に入学するとどんな良いことがあるかをしっかりアピールすることが重要です。アドミッションポリシーを読み込んで、自分が大学に適した人間であることを言語化することを心がけました。またもう一つ気を付けたことは、文章全体で主語が自分になるように書くことです。どこかの誰かが言っていた言葉を借りてきたり、ネットに書いてあるようなことを書いたりするのではなく、自分自身の原体験からできたことの経験を大学の学びにどう活かすのか、この思考を言語化することが重要だと思います。 

二次審査では同のようなことを心がけましたか?

二次審査のグループディカッションでは他の学生の話をよく聞くことを心がけました。グループディスカッションでは自分の主張をするだけではなく、皆のはなしをよく聞いたうえで、一つの結論にもっていけるか、議論に一貫性があるかを問われています。人の話を聞きながら自分の意見を織り交ぜつつ、議論を進めることを意識しながら臨みました。

総合型選抜で大学受験をしようと思った経緯について教えてください。

高校に入学してからすぐ、家庭教師の先生が一般入試だけでなく、他の入試の選択肢もあるという情報提供をしてくれました。そのおかげで総合型選抜も選択肢の一つとして考えはじめました。本格的に視野に入れ始めたのは、学生団体を立ち上げてからです。実際に活動をしている中で、初めて気づいた課題もあり、教育格差という課題がより自分ごと化され、自分の言葉で語れるようになっていたので、総合型選抜でアピールできるのではないかと思いました。

その他の入試方法は考えていましたか?

総合型選抜で合格できないことも想定に入れていたので、公募推薦のために英検取得など、特に得意だった英語には力を入れていました。英検は準一級を高校2年生で取得しました。すべての科目の勉強はしていましたが、英語は好きで得意だったので特に力を入れていました。



高等学校時代の原体験から、問いを見つけ、課題解決のために常に挑戦し、行動し続けるお二人のお話を伺いました。 NOLTYスコラ 探究プログラム MyBiz編では、実社会で働くということを仮想経験し、進路設計や志望理由を生徒が自らの言葉で表現します。総合型選抜などへの対応を意識した内容となっており、進路の自分ごと化を促進します。詳細は下記からご覧ください。

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