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探究指導コラム

NOLTYスコラ 探究プログラム

中学校・高校の「探究」に関する記事をまとめています。

2023.12.20

総合的な探究の時間をキャリア教育と進路指導に活かすポイント

これからの予測不可能な時代を生きる上で、さまざまな課題に対して主体的に取り組み、自分の望む生き方を実現するために、キャリア教育は昨今ますます重要視されています。またキャリア教育と似た概念として進路指導もあります。今回の記事ではキャリア教育と進路指導の違いから、より充実した実践へと繋げられるようにはどのようにすればよいのかをご紹介します。

目次

キャリア教育と進路指導の違い

キャリア教育と進路指導についてどのような違いがあるのでしょうか。

進路指導とは

進路指導は,生徒の一人ひとりが,自分の将来の生き方への関心を深め,自分の能力・適性等の発見と開発に努め,進路の世界への知見を広くかつ深いものとし,やがて自分の将来への展望を持ち,進路の選択・計画をし,卒業後の生活によりよく適応し,社会的・職業的自己実現を達成していくことに必要な,生徒の自己指導能力の伸長を目指す,教師の計画的,組織的,継続的な指導・援助の過程(である。)
(出典:文部省『進路指導の手引−高等学校ホームルーム担任編』)

キャリア教育とは

学校から職業への移行に問題を抱える若者が増え,社会問題ともなっている状況である。(中略)また,身体的には成熟傾向が早まっているにも関わらず精神的・社会的自立が遅れる傾向があることや,勤労観・職業観の未熟さなど,発達上の課題も指摘されている。このような問題を背景としつつ,今日,一人一人の社会的・職業的自立に向け,必要な基盤となる能力や態度を育てることを通して,キャリア発達を促すためのキャリア教育の推進・充実への期待が高まっている。(中略)「職業観・勤労観」の形成に関連する能力を,「人間関係形成能力」「情報活用能力」「将来設計能力」「意思決定能力」の四つの能力領域に大別し,小学校の低・中・高学年,中学校,高等学校のそれぞれの段階において身に付けることが期待される能力・態度を具体的に示した。
(出典:文部科学省2023中学校・高等学校キャリア教育の手引き)

実は「進路指導と、キャリア教育の目指すところとほぼ同じ」で、いずれも生徒一人ひとりが自己の個性を理解し,主体的に進路を選択する能力・態度を育てることを目指しています。

ただ、中学校・高等学校で進路指導と聞くと就職や進学等に関する指導 ・ 援助の活動を思い浮かべる人は多いのではないでしょうか。どのような大学があるのか、どのような入試の形態があるのか、必要な学力について学校で説明を受けたり、担任の先生に相談したり。このような「出口指導」も進路指導の一部ではあり、生徒や保護者からの期待も高い部分ですが、ただ合格させるための支援に偏ってしまう場合も多くあります。

今回は大学に合格することだけを目指すのではなく、生徒が大学での学びやこれからのキャリアを考えていく上で有用となるようなキャリア・進路指導をどのように行えばよいか紹介します。

探究学習をキャリア教育・進路指導へ繋げる

「総合的な探究の時間」の学習指導要領では、課題を「自己の在り方生き方を考えながら,よりよく課題を発見し解決していく」とあり、それまでの「よりよく課題を解決することを通して自己の生き方を考えていく」からより「在り方と生き方」を絡めた課題設定が求められます。 このことから探究学習は生徒のキャリア教育や進路指導とも親和性が高い教科です。

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(出典:文部科学省:今、求められる力を高める総合的な探究の時間の展開)

また、質の高い探究とは,「探究の過程がより高度化する」ことや「探究がより自律的に行われる」こととされています。

「探究がより自律的に行われる」とは
①自分にとって関わりが深い課題になる(自己課題)
②探究の過程を 見通しつつ,自分の力で進められる(運用)
③得られた知見を生かして社会に参画しようとする(社会参)
とあり
①自分にとって関わりが深い課題になる(自己課題)→自分事
②探究の過程を見通しつつ,自分の力で進められる(運用)→自己調整
③得られた知見を生かして社会に参画しようとする(社会参画)
とも言い換えることができキャリア観の醸成に繋げることができます。

(出典:文部科学省:今、求められる力を高める総合的な探究の時間の展開)

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総合的な探究の時間をキャリア教育と進路指導に活かすポイント

①学校の進路指導やキャリア教育で行うことを意識する

進路指導のために行う授業と探究学習をリンクさせなくとも、「大学の教授を呼んで講演をする」「卒業生が大学生活や受験のアドバイスをする」「企業訪問をさせる」「職業調べをさせる」など、進路ガイダンスやそれに準ずるイベントや講話が分かれば、探究学習のテーマ設定や情報収集を共通の時間で行うことができます。

②自己理解を探究テーマとして組み込む

①とも関連しますが、進路指導には生徒の自己理解が欠かせません。進路指導の最初に行う学校もあり、1年生の段階で探究テーマに組み込むことで進路選択や実現に繋げることができます。この自己理解ですが自分の強みや弱みを考えさせるだけでなく、なりたい自分像を想像させ、そうなるためにやることを一つ決めて取り組ませると、それが探究学習として成立します。なりたい自分像はマインドマップ等を用いて、勉強面、部活面、プライベート面それそれで考えます。

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例えば、理想像に「サッカー部でレギュラーを取る」を選びます。実現のためには「仲間と連携が取れている」「メンバーから信頼される」「ディフェンダーとしてロングキックが蹴れる」等複数の要素を出して、その中から「ディフェンダーとしてロングキックが蹴れる」を目標にします。

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その目標を達成するため自ら実験しまとめます。そうすることで探究学習の課題設定~まとめ表現の1サイクルになります。生徒にとっても理想の自分に近づける、自分に合った方法が実験通して分かる、自分の勝ち筋が分かる、自己肯定感が得られる、等良い効果がうまれます

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(複数あるやり方を試し、自分に合った方法を探す)

③ビジネスをテーマに探究学習を行う

近年は総合型選抜での入試が増えています。将来のビジョンを見据えて学校、学部選びをする生徒を大学側も好意的です。社会に触れる機会として「職場体験」や「社会人講話」を行う学校もありますが、ビジネスについて体系立てて学校で教わる場面はありません。教材は売られている教材を利用、または学校向けのサービスを利用するのがおススメです。起業を疑似体験できるものを選ぶと経営戦略、企画開発、販促、経理、営業と職種が学べるのでアントレプレナーシップ教育にも繋がります。なかでも創業計画書まで作るとアイデアを考えるだけでなく、そのアイデアが市場に受け入れられるか、ターゲットは誰か、開業資金はいくらか、運用資金はいくらか、足りない資金をどう調達するか、何年で利益が出るか、など事業全体の事を考えます。実現可能性や継続性まで考えている学生は多くないため生徒の進路選択や実現でも有効です。

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まとめ

●キャリア教育と進路指導の違い
進路指導と、キャリア教育の目指すところとほぼ同じ

●探究学習のポイント
キャリア教育や進路指導とも親和性が高い教科である
探究がより自律的に行われるのは自分事、自己調整、社会参画を意識した課題
キャリア教育と進路指導を総合的な探究の時間で行うポイント
①学校の進路指導やキャリア教育で行うことを意識する
②自己理解を探究テーマとして組み込む
③ビジネスをテーマに探究学習を行う

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株式会社NOLTYプランナーズ