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探究指導コラム

NOLTYスコラ 探究プログラム

中学校・高校の「探究」に関する記事をまとめています。

2023.08.27

高校生の探究でビジネスを知る

目次

慶應義塾大学 SFC(湘南藤沢キャンパス)研究所 上席所員を務める星野 尉治氏と、慶應義塾大学 環境情報学部に在籍しながら起業した株式会社クアリア代表取締役の平田 正英氏に学生時代に起業することの重要性やメリットを伺いました。


慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパス(SFC)研究所 上席所員 星野 尉治氏


-学生が起業を経験するメリットは

 

まず、会社を興して、実際IPO(会社の株式を一般の投資家に売り出すために、初めて株式市場に株式を公開すること)まで行く人はほんの一握りです。ただ、そこに至るまでの過程を経験するというのがとても重要です。それは就職するのか、大学院に進むのか、留学するのか、本当に起業するのか、どんな道を選択するにしても必要な経験だと思います。

慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパス(以下SFC)では開学以来、“問題発見解決”ということを言い続けています。起業家精神とはそれにまさに近い考え方であり、そこからデザイン思考、クリティカルシンキング、ロジカルシンキング、そして資金調達、マネタイズ、マーケティング、経営など、幅広い知識や経験を積み重ねていくことが重要で、意義あることだと考えています。

起業における知識や経験は、自分のキャリアを作っていく上でもとても役立ちます。ただ社長になりたいと思って起業する人も多いのですが、肩書ではなく、なぜ起業するのか、それが社会的にどんな価値があるのかを見極めるというプロセスを大学時代に経験することは非常に意義深いことだと思います。

例えば大学であれば、商学部や経営学部ではマーケティングの授業がありますが、座学だけだとなかなか起業家精神というものは身につきづらいものです。座学で学んだことを、実際の社会で実証していくということが重要です。そうでないと、机上の空論になってしまうことが少なくありません。

 

-学生時代に多くの失敗の経験を積む

 

むしろ失敗した方が良いぐらいだと思います。例えば社会で起業して失敗すると、もう明日からご飯が食べられないというような状況になることもあります。大学生でいくら失敗しても、本業は学生であり、路頭に迷うというリスクは少ないでしょう。大学生の期間を使って、それが本当にビジネスとして成り立つのかどうかを見極めた上で、それでも大丈夫だと思ったらそのまま事業として進めていく判断をしても良いと思います。または、ピボットして違う事業に展開するという道もありますし、就職する、大学院に行く、留学するなど様々な道もあります。

実際に大学生で起業したけれど、そのうちの2人は残ってそのまま事業を続け、1人はコンサルティング会社に就職したというケースも知っています。彼がコンサル会社に採用されたのも、やはり大学生活の中で起業という実体験をしていたことが大きな強みになったことは言うまでもないでしょう。コンサルに限らず、どんな会社にとっても経営やマーケティングは絶対必要な領域です。そういう意味でも大学生のうちに起業を経験しているということはとても大きな意味があります。

 

-総合型選抜で通用する高等学校での探究活動

 

高等学校での探究活動は、アウトプットに視点が偏っているなと感じます。今まで申し上げた通り、“問題発見解決”というのがとても重要です。あるいは自分が本心からこれをやりたい、これやっていると夢中になれるなどの熱量が重要です。その結果、一番アウトプットとして向いているのが起業なのか、ボランティア活動なのか、あるいは政策提言なのか、やり方はいろいろあると思います。起業やSDGsありきではなく、まずは自分起点で考えていくことが重要です。その結果何に繋がるかは、最適なものをチョイスしていけばいいと思っています。総合型選抜入試には何が役立つのとか、このカタチでいけば合格は間違いなし、というものなど存在しません。逆に多くの人が考えているようなことや、過去の合格者のケースを真似ても、合格はしにくいかもしれません。特に、SFCはオリジナリティを重要視しています。なので、独自性やユニークさを見せる方がむしろ良いでしょう。

また大学の授業で学べるような知識をたくさん持っているということより、自分がやりたいことと自信をもって言える熱量の方がより重要です。

 

-大事なことは持続可能性

 

例えば、地元の食材を使ってスイーツを作り、文化祭で売ったら200個がすぐに完売して大成功というようなケースをよく聞きます。しかしこのような起業体験は自己満足に過ぎない場合が多いです。そのスイーツが実際に市場で受け入れられるか、売上が見込めるか、コストも含めて収益があるのか。探究活動の中でやるとしても、そこまで考える必要があります。

 

-高校生で起業体験をする意義

 

高校生では、実際に起業するところまではできないかもしれません。しかし、それをかじってみるということはできます。高校生にとってはむしろ、大学生以上に、失敗することの意義が大きいかもしれません。やれるところまでやって、頑張ったけれどうまくいかなかった。失敗を通して自分を振り返りながら、自分に不足しているものは何か、何を学ばなければならないのかを発見することが非常に重要です。そしてそれを大学で学びたいという姿勢が大切だと考えています。

 


 

株式会社クアリア代表取締役

平田 正英氏

 

-株式会社クアリアの事情内容

 

株式会社クアリアは、中学校及び高等学校における探究学習を中心とした、教育活動の支援という事業内容で設立しました。基本的には、高等学校において探究学習をオンライン上でサポートするようなサービスを作っています。実際わたしが高校生だった頃に、自分でやっている探究に対してフィードバックをもらうことが少なかったり、実際に先生に提出しても返却してくるのが1ヶ月後だったりするというような経験がありました。できるだけ早く、そして身近な大学生からフィードバックをもらえる場所があるといいな、という思いで設立しました。

 

資金調達は基本的にはしておらず、システム作りを私、営業は共同創業者と2人でやっています。かかるコストはシステムにおけるドメイン代や、サーバー代で、月数千円ほどで維持できています。そこまで資金調達をするという必要がなく、プログラミングをやっていたのが功を奏したなというところです。

 

高校生の頃はiOSのアプリ開発という、いわゆるスマホのiPhoneのアプリ開発をしていて、ウェブの開発経験はありませんでしたが、いい機会だし、自分で作ってみようかなと思いました。最初はクオリティが低かったのですが、触って試行錯誤していく上でいいのができてきたかな、という感じです。

 

-高等学校時代の研究発表

 

高校2年生の頃にオーストラリアに留学をしていました。その当時コロナ禍ということもあって、家にいる時間が多かったので、iPhoneのアプリを作っていました。その後帰国した際に、学校の先生に研究発表会の枠が残っているので出てくれないかと頼まれました。いいですよとそのノリで答えてしまって。何を発表しようかなと思っていましたが、高校1年生の頃に作った献立アプリがあり、その改良版を作って発表しました。その発表の場にいたのが今一緒に創業している方で、その方との最初の出会いでもありました。

 

-総合型選抜での受験について

 

私の場合、志望校を決定するのが比較的遅く、高校3年生になってから志望校が決まりました。それまではアプリ制作をしてきたこともあり、漠然と情報系に進みたいなと考えていました。最終的にSFCに入りたいなと思ったきっかけは、高校でゼミがあり、STEM(Science、Technology、Engineering、Mathematics)というところのゼミ長になったことです。簡単に言うと、ゼミ長が授業を設計する役割を担います。その時に高校の理系はプログラミングの授業があるけど、文系はないところも多く、実際通っていた高校も文系はなかったので、プログラミングを学べる場所としてこのゼミを活用できたらいいなと考えました。そこでプログラミングの授業を企画したのですが、どうやって授業するのが良いかとても悩みました。どうやったらモチベーション高く授業を受けてくれるか、コードを入力するのを最初からやったら絶対面白くないよなとか、いろいろ考えました。それから教育にも少し興味を持ち始めました。情報と教育を学ぶという視点からSFCを志望しました。

 

実際の入試の面接では鋭い質問をされる場面も多々ありました。それまでに関連する論文や本は読んでいたので、自分なりに論理立てて考えて返すことはできたかなと思います。

 

 

-今後の展望

 

サービスを開始して1年ぐらい経ちましたが、実際にやり始めてからいろいろ改善点が見つかり、それをアップデートして新しくサービスを出したいなと思っています。それと合わせて、今クアリアという会社は、高校生たちにとってより良い探究をしてほしいという意図で作っており、そこまでマネタイズの意思がなかったので、実際に収益化するなら別の事業を新たにやってもいいかなと、何となくですが思っています。

 

-起業家として

 

起業している人だとタイプが分かれて、自分より優れている人と会うと落ち込んじゃうタイプと、頑張ろうと思うタイプの人がいます。僕はどちらかというと頑張ろうって思えるタイプです。自分と同世代、下の世代でも僕よりすごい人がいても嫉妬のような感情は全く抱きません。むしろ刺激というか、楽しいなっていう感情の方が大きいかもしれないですね。

起業家として、これからたくさんの人に会いたいなと思っています。高校生の時はそこまでアクティブではなかったのですが、大学に入ってから人と会う機会が本当に多くなりました。起業をしているという側面があると、イベントにも参加しやすくなったり、呼ばれたりという機会も多くあります。それを活かしつつ、知り合ってコネクションみたいな感じで作れたらいいなと思っています。

 

 ビジネスを知り、進路の自分ごと化を促す

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