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探究指導コラム

NOLTYスコラ 探究プログラム

中学校・高校の「探究」に関する記事をまとめています。

2022.06.09

アクティブラーニングの種類 |手法と実践方法、授業時の注意点は?

高校では22年度から施行される新学習指導要領。教科探究や総合的な探究の時間など新しい試みが多く行われます。その中の目玉の一つであるアクティブラーニング(Active Learning、いわゆる能動的学修)。従来の座学中心だった授業から、学習者主体のグループワークやディスカッション、ディベート、体験学習などが含まれた授業への質的転換として注目され、多くの高校や大学で実践例があります。社会人教育の中でも実践されることが多いアクティブラーニングには、どのような手法や実践方法があるのか、また授業に取り入れる際の注意点についてご紹介します。

目次

アクティブラーニングが重視される背景

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そもそも、なぜ今アクティブラーニングが必要とされているのでしょうか。その理由を解説していきます。
2020年に突如起きた新型コロナウイルスの蔓延のように、現代社会は予測困難な時代(VUCA時代)と言われています。

※VUCA:Volatility(変動)、Uncertainty(不確実)、Complexity(複雑)、Ambiguity(曖昧)の頭文字をまとめた言葉

デジタルトランスフォーメーション(DX)や人工知能(AI)などテクノロジーは驚異的な速さで発展し、これまで不可能と思われていたことを次々に実現させています。例えばテレワークやオンライン授業など身近なものから、民間人の宇宙旅行などSF映画のようなことまでも挙げられます。これらテクノロジーの発展はグローバル化を促進させ、海外に移住したり、働いたりすることはもちろん、身近にコミュニケーションをとることなど数年前では考えられなかった状況を生み出し、その状況に対応できる人材が社会や企業で求められています。このような社会背景の中で、文部科学省は新しい学習指導要領において主体的・対話的で深い学び(いわゆるアクティブラーニング)を推進し、これらの時代背景に沿った人材育成を行うことを目指しています。それは単に「何を学ぶか」という学習内容だけではなく、「どのように学ぶか」という学び方や学びの経験、そして何よりも子供たち自身が「何ができるようになるか」という資質・能力の育成(キャリア教育)を重要視しているからです。

【出典】文部科学省「主体的・対話的で深い学びの視点からの授業改善」https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/__icsFiles/afieldfile/2020/01/28/20200128_mxt_kouhou02_01.pdf


アクティブラーニングの手法の主な種類

ジグソー法

最初に講師が1つの大きな課題を学習者に提示します。大きな課題はさらにいくつかのパートに細分化した状態にしておきます。そして学習者はグループに分かれ、各メンバーは大きな課題を解決するために、細分化されたいくつかの課題に一人1つずつ取り組みます。同じグループにいながら全員が違う課題に取り組むことになります。各メンバーは設定した課題を学習した後、グループで再度集まり、それぞれのパートで学習したことの他のメンバーに説明します。細分化された課題を一人ずつ分担しながら学習し、それを他者に説明することで「教える」、つまり、学習したことを言語化、アウトプットして理解を深めていく学習方法です。

探究学習

学生が自分で課題を見つけ、解決に向け取り組む学習法のことです。学校教育の現場において注目度が高まっており、小中学校の「総合的な学習の時間」、2022年度より高校で始まる「総合的な探究の時間」において主に取り組まれています。自ら興味を持った課題を設定することで生徒が能動的に学びに向かうことができます。興味のあるテーマを掘り下げたり、取り上げた社会課題に対して自らがどう貢献すべきかを考えたりさせることによって、生徒自身が将来を考えるきっかけになります。また、それをどう実現するか、興味のあるテーマを学ぶにはどんな進学先を選ぶべきかを考えさせることで、探究活動は進路指導にもつながります。

PBL

PBL型授業とは、学生が自ら課題を発見して解決する能力を育成するための授業です。従来のように、教員が講義をして一方的に知識を教え、生徒がそれをノートに書き覚える、といった受動的な学習方法とは異なるところがポイントです。「PBL」とは、「Project Based Learning」や「Problem Based Learning」などの略称で、「課題解決型学習」や「問題解決型学習」「プロジェクト型学習」といった意味があります。「Project Based Learning」では目的・目標などのテーマを設定した解決を、「Problem Based Learning」では把握されている問題の解決を目指すものとされています。

学び合い

「学び合い」とは生徒同士で教え合い、学び合う学習方法です。「この問題の解き方をクラス全員が理解する」といった目標を設定した場合は、解き方が分からない生徒は近くの分かる生徒に聞くことができるので質問しやすく、一方通行型の授業よりも理解が深まります。また、解き方が分かっている生徒も、他の生徒に説明することでより理解が深まったり、きちんと理解できていなかった箇所が明確になることもあります。

Think-Pair-Share

Think Pair Shareとは、提示された問題に対して一人で考えたあと、隣の席の生徒などとペアで意見を交換し、さらにペアで出た意見を全体に共有するという学習方法です。一人で考える時間が設けられているため、ペアでの話し合いが活発化しやすいこと、全体に共有することによって視野を広げることができます。

ラウンド・ロビン

ラウンド・ロビンとは与えられた課題に対して、順番に意見やアイディアを話していく進め方です。そこで出てきた考えに対する評価や意見、質問は行わずに進める、いわゆるブレーンストーミングのようなものです。アイディアや意見は記録しておき、その後まとめます。これは心理的安全性を高めて意見やアイディアを出しやすい状況を作ることに向いています。

ラウンド・ロビン

ピア・レスポンスとは学習者がペアになり、それぞれが書いた内容に関して、意見や改善すべきと思われる点を出し合うことを繰り返す手法です。書き手と読み手の目線からフィードバックをもらえる点が特徴です。また、他者に説明することで自身の考えや理解が深まる点もメリットと言えます。

フィールドワーク

フィールドワークとは仮説検証などのため、それに適したフィールドに赴き、調査や観察、実験などを行ったり、 聞き取りを行ったりする活動です。

アクティブラーニングの実践方法の種類

ケースメソッド

ケースメソッドはグループディスカッション型のアクティブラーニングの実践方法です。ケースを想定して、架空の人物の立場に立って参加者が討論しながら解決策を探っていきます。主体性を養ったり、自分になかった他者の視点に気づいたりすることができます。教室内で取り入れやすい手法のため、多くの教育現場で実践されています。

フィールドメソッド

フィールドメソッドは実際の現場に訪れ、調査・観察を行う実践方法です。具体的には、「商店街を活性化させるには」というテーマを設定し、商店街の人に話を聞いたり商店街の様子を見ながら活性化のためのアイデアを立案するなどです。体験・発見しながら学ぶことによって、生徒が楽しみながら取り組みやすい手法です。

アクティブラーニングを実施して身に付けられる能力

自主的に学習する能力

教師の話を聞く授業とは違い、学生が自ら考えて主体的に動くため、自然と学習する方法が理解できます。アクティブラーニングは自主的に学習するように設計された学習方法です。主体性を持って行動する習慣ができるため、社会に出た時に役立ちます。

周囲の人に協力を求めて助け合える能力

アクティブラーニングでは周囲の人とコミュニケーションをとる機会が多く発生します。そのため、協調性やコミュニケーションスキルを身に付けることができます。グループワークで役割分担や方向性などを話し合うことによって、グループで動く重要性も理解できるようになります。

課題を発見して解決できる能力

アクティブラーニングでは、様々な場面で学生が自ら課題を見つけることが必要になります。そのため課題発見能力が養われます。 また、グループディスカッションなど他者の意見を聞く機会も多くなるため、多角的な視点から物事を多角的に捉える力も養われます。

アクティブラーニングの授業を行う際の注意点

自分の考えをまとめる作業は宿題にする

課題についての考察は宿題にすることによって、限られた授業時間の中でもケースメソッドやフィールドメソッドなどの実践の時間を確保することができます。また、十分な時間が与えられることで、すぐに発言することが難しい生徒も事前に自分の考えをまとめて準備することができ、発言しやすくなるというメリットもあります。

課題に対しての役割分担は事前に決めておく

グループでのアクティブラーニングを実施する際は、役割を事前に決めておくのもポイントです。学生同士で決めると時間がかかったり役割が固定されたりするため、教員側で役割を決めておくとグループ内での役割決めにかける時間を短縮することができます。

学生が興味を示しやすい議題を投げかける

学生が興味を示しやすいテーマを取り上げるのもアクティブラーニングをうまく進めるコツです。学生が「先生にやらされている」と感じてしまうと、アクティブラーニングの効果が薄くなってしまうためです。主体的に知識を得ようとする姿勢を身に付けさせるためにも、身近な地域やものを取り上げるなど、子どもたちの興味に近いテーマを取り上げるようにしましょう。

話しやすい環境を構築する

話し合いを活性化させるためには、グループ内、クラス内で話しやすい雰囲気を作ることも大切です。本題の話し合いに入る前に、最初に簡単なゲームを行ったり、「自己紹介」「昨日の夜食べたもの」など話しやすいテーマでアイスブレイクを行うのも効果的です。

教科書やテキストの説明は簡単なものにし、アクティブラーニングに時間を充てる

アクティブラーニングに取り組む時間を十分に確保するため、教科書やテキストの説明は手短に終わらせるようにしましょう。授業範囲の教科書の予習を宿題としておくのもおすすめです。

(まとめ)アクティブラーニングの種類|手法と実践方法、授業時の注意点は?

変化の激しい現代において、生徒が能動的に学習に向かう力を身に付けるのに最適とされているアクティブラーニング。様々な手法がありますが、「総合的な学習の時間」や「総合的な探究の時間」で取り組まれている探究活動もアクティブラーニングの一種です。まずは「総合的な学習の時間」「総合的な探究の時間」でアクティブラーニングの基本を身に付けさせ、そこから一般科目にアクティブラーニングを広げていくのもいいのではないでしょうか。

株式会社NOLTYプランナーズ