
目次
高校で行う総合的な探究の時間の基礎知識
総合的な探究の時間とは?
学習指導要領の改訂に伴い、2022年度から高等学校でスタートする科目です。教科や科目の枠を越えた横断的・総合的な学びを狙いとしています。特定の教科の枠にとらわれず、生徒自身が主体的に課題を設定し、成果や研究結果を発表します。生きる力、実社会で活用できる能力の育成を強く求める授業です。
総合的な探究の時間の目的
学習指導要領によると、総合的な探究の時間では学んだことを人生や社会に生かそうとする「学びに向かう力、人間性等」の涵養、実際の社会や生活で生きて働く「知識及び技能」の習得、未知の状況にも対応できる「思考力、判断力、表現力等」の育成という3つの柱が挙げられています。
出典:文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 総合的な探究の時間編」
https://www.mext.go.jp/content/1407196_21_1_1_2.pdf
総合的な探究の時間の目的とは、「課題を発見し、問題解決するための知識や技能を身に付けること」です。そのためには生徒が自分自身の興味関心に沿ったテーマを設定し、主体性を持って学びに向かうことがまず重要なポイントとなります。そうすることにより、自らのあり方や生き方など、将来を意識した学習を行うことができ、キャリア教育に繋がります。また、キャリア形成において、将来の目標を意識しながら課題を探すための自律性も磨くことができるというメリットもあります。客観的に自分を見つめ直す分析力やプレゼンテーションスキルを身に付けることも重要です。
高校で行う総合的な探究の時間の実践
2022年度より本格的にスタートする「総合的な探究の時間」ですが、すでに探究活動に取り組まれている学校も多くあります。どんな取り組みをされているのか、実践事例をご紹介します。
地域の活性化に向け政策を考える
探究のテーマとしてよく挙がる地域問題ですが、この学校では1 年次に地域の人の話を聞き、2年次に政策を立案するという流れで探究活動を進めています。政策の発表会には市議会議員を招き、フィードバックをもらうことで探究活動を深い学びにすることができています。学校外の大人と交流することで、働くことのイメージを持つことができた生徒や、地域貢献ができる仕事をしたいと感じた生徒も多かったそうで、進路につながる探究活動になっています。
体験を交えながらSDGsを自分ごと化し、探究活動に取り組む
この学校では「自分ゴト化」をポイントに、体験を交えながら学校全体でSDGsに取り組んでいます。
パラスポーツである「ボッチャ」の体験や、アイマスクを装着して学校を歩く体験、難民支援の活動など、生徒自身が体験することでSDGsを自分ゴト化することを狙いとしています。
総合的な探究の時間でもSDGsを共通のテーマとしており、1年次はSDGsのゴールごとに分けて調べ学習、2年次でチームを再編し、任意の社会課題の解決についてSDGsと絡めて考える取り組みを行っています。SDGsの重要性について身を持って学ぶことで、探究活動もより深い学びとなっているようです。
大学や企業に話を聞いてテーマを深掘りする
生徒がそれぞれ自分の興味に沿って探究活動を行っている学校では、より学びを深めるため大学や企業、官公庁へのインタビューを実施しています。探究活動の最初に生徒に対して「どこへ行ってもいいよ、こんなこともできるよ」と伝えておくことで、生徒から自発的に「ここで話を聞いてみたい」と声があがってくるそうです。自身の興味のあるテーマについて専門家に話を聞くことで、さらに学びに対するモチベーションが高まり、主体的に探究活動に取り組むことができています。
高校で行う総合的な探究の時間を成功させるポイント
探究活動に取り組まれている学校の事例をご紹介しましたが、「うちの学校では難しい」「ハードルが高い」と感じた先生もいらっしゃるのではないでしょうか。ここでは総合的な探究の時間を成功させるための3つのポイントについてご紹介します。
試行錯誤しながら形を変えていく
探究活動を進めていくにあたって大切なことは、「試行錯誤しながら探究の形を変えていく」ということです。今「総合的な探究の時間」をうまく回せている学校でも、「最初は生徒が付いてこず大変だった」「試行錯誤しながら形を変えていった」というお話をよく聞きます。まずは市販の教材の力なども借りつつ、生徒や周りの先生方の反応を見ながら試行錯誤しつつ、学校に合わせたよりよい形を作っていくのがいいのではないでしょうか。
正しい取り組み方を指導する
探究学習を進めるにあたり、まず正しい取り組み方や考え方を指導することも大切です。テーマを決定しても、生徒が適切な調査や分析の手法をわからなければ学習を進められないためです。調べ方や探究活動の進め方、情報の整理方法など、正しい手法を生徒に指導する時間を最初に取ると、学習効果の向上が期待できます。
自主的にテーマを選択してもらう
総合的な探究の時間では、生徒が主体的に学習に取り組むことが重要です。そのため、課題設定では生徒自身の興味のあるテーマを選ばせることをおすすめします。自身が興味を持ったテーマでなければ、調査するモチベーションを保たせにくいためです。「SDGs」や「地域課題」、「修学旅行」といった大枠を決め、その中からテーマを設定させる学校も多くあります。
また、いきなり物事に対して疑問を持つことができる高校生は多くなく、先生方からは「生徒が課題設定でつまずいてしまう」といったお悩みもよく耳にします。NOLTYスコラ 探究プログラムでは、独自に「興味関心」のステップを設けており、課題設定に向けての練習を行うことができます。
【まとめ】高校の「総合的な探究の時間」の実践例とポイントとは?
ここまで高校の「総合的な探究の時間」の取り組みの実践例とそのポイントについて見てきました。学習指導要領の改訂により、2022年からスタートする「総合的な学習の時間」では、生徒たちが自主的に学びに向かうことが重要なポイントとされています。そのためには他校の取り組み事例も参考にしつつ、試行錯誤を繰り返しながら自校にあった形を作りあげていくことが大切です。
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