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探究指導コラム

NOLTYスコラ 探究プログラム

中学校・高校の「探究」に関する記事をまとめています。

2022.01.26

高校で新設される探究科目とは?作られた理由と新科目の学習内容

「総合的な探究の時間」という科目をご存知でしょうか。2022年度より高校にて開始される新科目ですが、実は「総合的な探究の時間」以外にも「探究」に関わる授業が始まります。本記事では新設される探究科目の内容や、その背景について解説します。

目次

高校で新設される7つの探究科目

7つの探究科目とは?

2022年度から、高等学校ではカリキュラムに7つの探究科目が新設されます。「総合的な探究の時間」、「古典探究」、「日本史探究」、「世界史探究」、「地理探究」、「理数探究基礎」、「理数探究」がその内訳となります。 「総合的な探究の時間」は必履修科目(必修科目)で、その他の科目は選択科目となります。

7つの探究科目が新設された理由

ではなぜ今「探究」が重視されており、科目が新設されることとなったのでしょうか。それは生徒が自ら学び考える力を養うことが必要とされているためです。
情報化やグローバル化が進展する社会において、困難かつ予測不可能な時代=VUCA時代(VUCA:Volatility(変動)、Uncertainty(不確実)、Complexity(複雑)、Ambiguity(曖昧)の頭文字をまとめた言葉)に突入したと言われています。そういった環境で活躍できる生徒を育成するためには、学力だけではなく「自ら課題発見に取り組み、答えに向かう力」を育成することが必要不可欠です。
学習指導要領によると、総合的な探究の時間では学んだことを人生や社会に生かそうとする「学びに向かう力、人間性等」の涵養、実際の社会や生活で生きて働く「知識及び技能」の習得、未知の状況にも対応できる「思考力、判断力、表現力等」の育成という3つの柱が挙げられています。

【出典】文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 総合的な探究の時間編」
https://www.mext.go.jp/content/1407196_21_1_1_2.pdf

総合的な探究の時間の詳細

では新たに必修科目となる「総合的な探究の時間」とはどういった科目なのでしょうか。

総合的な探究の時間とは?

高等学校で行われる、教科や科目の枠を越えた横断的・総合的な学びの時間のことです。特定の教科の枠にとらわれず、生徒たち自身が主体的に課題を設定し、成果や研究結果を発表することを狙いとしています。探究活動は情報収集⇒整理分析⇒まとめ表現の流れで行います。従来の「総合的な学習の時間」から名称、授業内容ともに変更されました。従来の総合的な学習の時間は、「総合的な学習を通して課題解決能力や主体的な学びを育む」ことを目的とした授業でした。つまり課題を設定・解決することで、自己の生き方を考えることを狙いとしていました。 対して2022年度から高校において新たにスタートする総合的な探究の時間は、生きる力、社会で求められる力の育成を強く求める授業になります。自己の在り方・生き方と切り離せない課題を、高校生たちが自ら発見・課題解決していくことを目標としています。

総合的な探究の時間のメリット

①生徒の学習意欲が高まる
総合的な探究の時間は、生徒が自分の興味のあるテーマを設定し、主体性を持って取り組む授業です。生徒が自分なりに問いを立てて取り組むことが、学習意欲や自己肯定感、知的好奇心の高まりにつながります。学習姿勢・意欲に大きな貢献が期待できます。

②生徒の学力向上につながる
興味のある分野を突き詰めていくうちに、普段学習している教科と実社会との関わりが見えてくることがあります。今、学んでいることがどう社会に役立っているのかを知ることで学ぶことが楽しくなり、結果として学力の向上にもつながります。

③将来の目標が明確になる
興味のあるテーマを掘り下げたり、取り上げた社会課題に対して自らがどう貢献すべきかを考えたりさせることによって、生徒自身が将来を考えるきっかけになります。また、それをどう実現するか、興味のあるテーマを学ぶにはどんな進学先を選ぶべきかを考えさせることで、探究活動は進路指導にもつながります。

総合的な探究の時間における学習の進め方

総合的な探究の時間での学習活動について、どのように進めていくべきか悩まれている先生方も多いのではないでしょうか。ここでは学習指導要領をもとに、基本的な探究学習の過程をご紹介します。

STEP1:課題の設定

探究学習においては、生徒が自分自身で課題を設定することが大切になります。しかし、何を課題としていいのかわからない生徒が多いという先生からの声もよく聞かれます。そういった生徒には、まず身の回りの物事に興味関心を持たせることが必要です。NOLTYスコラ 探究プログラムでは課題設定の準備段階として、興味関心のステップをオリジナルで用意しています。
また、最初はテーマを与えて、探究型学習の練習をすることも一つの方法です。その場合は地域、文化祭、修学旅行、通学路など生徒がイメージしやすいテーマを与えると取り組みやすくなります。

STEP2:情報の収集

自ら立てた問いに対しての答えに近づくための情報を収集します。先生方は答えを示すのではなく、調べ方のアドバイスをすることが大切です。書籍やインターネットでの調べ学習に加え、インタビューやアンケートといった選択肢もあります。先生方からは生徒に「こういう本を読むといいよ」「こういう調べ方もあるよ」などといった声かけをするとよいでしょう。

STEP3:整理・分析

分類・比較・構造化を意識して整理・分析を行います。得た情報を整理・分析することで物事を新たな視点で見ることができます。偏った情報だけに注目しないこと、自分と異なる意見を持つ人の視点に立つことなど物事を多面的にみることが重要です。

STEP4:まとめ・表現

整理・分析した情報をPowerPointやポスターなどでまとめ、発表を行います。クラス・学年内で発表する学校、他学年も交えて体育館でポスターセッションを実施する学校など発表形式は様々です。特に調べて整理した情報を分析して、正解かどうかに関わらず『自分なりの解』として表現することが重要なポイントとなります。

NOLTYスコラ 探究プログラムではまとめ・発表の終了後に独自で振り返りのステップを設けています。興味を持った社会課題やその課題に生徒自身がどう貢献していきたいかを考えさせ、探究学習を進路指導、キャリア教育につなげることを狙いとしています。

選択科目としての探究科目の詳細

ここまで「総合的な探究の時間」について見てきました。2022年のカリキュラムからは、「総合的な探究の時間」に加えて選択科目の「古典探究」、「日本史探究」、「世界史探究」、「地理探究」、「理数探究基礎」、「理数探究」も新設されます。では、選択科目としての探究科目はどういった内容になるのでしょうか。学習指導要領の内容に沿って解説します。

古典探究

古典探究は国語科で新設される選択科目です。従来の「古典B」をベースに探究学習を盛り込んでいます。「古典B」と比べ、必要に応じて、古典の変遷を扱うことが追加されており、論理的思考力を伸ばせるよう、古典における論理的な文章を取り上げることも求められています。

日本史探究

必履修科目の「歴史総合」を踏まえて、従前の「日本史A」、「日本史B」のねらいを発展的に継承する科目として新設されました。資料を活用し多面的・多角的に考察する力を身に付け、現代の日本の諸課題を見いだして、その解決に向けて生涯にわたって考察、構想することができる資質・能力を育成することを狙いとしています。

世界史探究

日本史探究と同様に、「歴史総合」の学習を踏まえ,従前の「世界史A」,「世界史B」のねらいを発展的に継承した科目です。諸地域の歴史的特質の形成,諸地域の交流・再編,諸地域の結合・変容という構成に沿って,世界の歴史の大きな枠組みと展開について理解を深め,地球世界の課題とその展望を探究する力を養うことをねらいとして設置されました。

地理探究

「地理総合」の学習をベースとして新設された科目です。社会的事象の地理的な見方・考え方を働かせ、課題を追究したり解決したりする活動を通して、広い視野に立ち、グローバル化する国際社会に主体的に生きる平和で民主的な国家及び社会の有為な形成者に必要な公民としての資質・能力を育成することを狙いとしています。

理数探究基礎

観察,実験,調査等の手法や統計処理の方法などを含んだ、探究を遂行する上で必要な知識及び技能を身に付ける授業です。また、実際に探究を遂行することなどを通して、各教科等で学習した知識及び技能を再確認したり新たな意味を見いだしたり、他者と共に探究の方針を考えたり議論したりして、粘り強く探究に取り組む態度を身に付けることを狙いとした科目です。

理数探究

個人又はグループで数学や理科に関する課題を設定して主体的に探究を行い、その成果などをまとめて発表する授業です。また、中間発表を行うなど途中段階での進捗を確認しながら粘り強く取り組ませることが重要です。さらに、探究した成果やその過程を報告書等にまとめさせることも求められます。

(まとめ)高校で始まる探究科目とは?

2022年度より新たに必修科目となる「総合的な探究の時間」を中心に、既存の科目に探究的な学びを絡める7つの選択科目についても見てきました。「総合的な探究の時間」だけでなく、選択科目である7科目でも課題を設定したうえで答えを追い求めること、教科の枠にとらわれない学びを重視することにおいて共通していました。各科目において探究的な学びを実現させるためには、基本的な探究のプロセスを総合的な探究の時間において定着させることが重要になります。

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