
目次
高校生のキャリア・パスポートに関する基礎知識
キャリア・パスポートとは?
キャリア・パスポートとは、キャリア教育におけるポートフォリオのことを指します。キャリア・パスポートは生徒が自分自身で記述を行うもので、振り返りと見通しを繰り返すことが重要です。それによって自身の成長に気付き、得意分野や個性の発見につながることや、振り返りを習慣づけることで将来を見通す力を養うこともできます。定期的に自分を振り返ることで、将来の自分(自己実現)や理想的な働き方などを見つける機会になります。キャリア・パスポートの取り組みは小学校から始まり、進学先にも生徒が提出して引き継ぎます。高校3年生はキャリア・パスポートに記入した内容を振り返ることで、進学に向けた志望理由書や面接、小論文にも活かすことができるでしょう。
また先生方にとっては、キャリア・パスポートをもとに面談など行うことで、進学、就職に向けた進路指導・キャリア支援を行いやすくなることもメリットといえます。
キャリア・パスポートのフォーマットは各学校の実情や特色を生かして作成するものとなっていますが、文部科学省で見本を作成しています。実施される先生方は、まずは例示資料をもとに作成いただくことをお勧めします。
「キャリア・パスポート」例示資料等について
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/career/detail/1419917.htm
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高校生のキャリア・パスポートで重視される4つの能力
高校のキャリア・パスポートにおいて重視される能力は、文部科学省の「キャリア・パスポート(例示資料案等)高等学校」に提示されており、大きく4つに分けられています。
・人間関係形成、社会形成能力
自身の役割を果たしつつ、他者と協力・協働して積極的に社会に参画する力を指します。コミュニケーションスキル、チームワーク、リーダーシップとも言い換えることができます。他者と協調し、他者の考えや立場を理解して意見を聴いたうえで自身の意見も正確に伝えることが重要です。
・自己理解、自己管理能力
自分自身に対する理解を深め、セルフマネジメントを行う能力です。ストレスマネジメントや主体的な行動力ともつながる能力です。
・課題対応能力
自ら課題を発見し、それに対応するための力です。情報の理解・選択・処理能力や、計画立案、実行力が含まれています。
・キャリアプランニング能力
「働くこと」の意義を理解し、様々な情報を取捨選択・活用しながら自ら主体的にキャリア形成を行うための力です。
【出典】文部科学省「キャリア・パスポート(例示資料案等)高等学校」
https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2011/11/04/1312817_12.pdf
高校のキャリア・パスポートの書き方
高校のキャリア・パスポートの特徴と書き方のポイント
高校では、小・中学校で記入するキャリア・パスポートよりも記述式の設問が増えており、自分で考える項目も多くなっています。小学校から高校までを振り返る項目もあるほか、「何を取り組むか」だけでなく、さらに「どう取り組むか」まで自分の言葉で記述する必要があります。
高校のキャリア・パスポートの質問・記入例
高校のキャリア・パスポートでは、振り返りや今後の目標といった項目があります。生徒には自分自身を振り返り、自分の言葉で記述するように促すことが大切です。
・「今学期を振り返って 学習面で取り組んできたことやよかったこと」
⇒苦手科目の英語を克服するために、毎週の単語テストで80点以上を取れるように取り組みました。単語を覚えたことで少しずつ長文も読めるようになり、苦手意識が減りました。
・「来学期 学習面で特に取り組みたいこと」
⇒引き続き英単語に取り組んでいきたいです。英文法も今まで習った範囲を完璧にできるよう復習しつつ、長文読解に慣れていきたいです。
・「1年後にどんな風になっていたいか、そのために今から何をするか」
⇒1年後には志望校合格に向けて勉強に集中していたいです。今はまだ志望校に迷っているので、オープンキャンパスに行ったり、先輩に話を聞いたりして情報収集を行い、早く志望校を決められるようにしたいです。
出典:「キャリア・パスポート」例示資料等について
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/career/detail/1419917.htm
【高校の学科別】主なキャリアの課題
普通科のキャリアの課題
普通科では、学生が「将来の生き方や働き方の先送り」をしてしまう傾向が強いと言われています。卒業生の約8割が大学や専門学校に進学していますが、進路意識や目的意識が薄い場合も多く、高校生のうちに社会に触れてキャリア観を育む必要があります。高校卒業後に就職する際も、普通科生徒の就職活動は専門学科や総合学科よりも厳しく、正社員の比率も少ないのが現状です。高校生の時点で将来を展望し、高校生活の中で必要な能力・態度を身に付けていく必要があると言えます。
専門学科のキャリアの課題
専門学科でも、以前と比べ専門学科で得られる知識や技能を活かした進路を選択する人が減っています。専門学科を卒業して就職する人は4割程度に減少しているほか、専門分野とは異なる大学の学部・学科への進学も見られます。知識・技術の高度化に対応した職業教育の充実や、高等教育との連携も意識した将来設計が求められています。
総合学科のキャリアの課題
総合学科は生徒自身に科目選択の機会がある特性上、職業選択や将来の働き方を意識させる学習機会が多くあります。しかし、生徒の自覚が薄い場合は単位の取りやすい科目を選んでしまう、本来の目的を果たせないケースがあることに注意が必要です。キャリアプランニング能力、卒業後の進路選択を視野に入れた科目選択能力の育成が必要と言われています。
【出典】文部科学省「高等教育におけるキャリア教育の推進のために」
https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2011/11/04/1312817_12.pdf
【まとめ】高校のキャリア・パスポートの特徴|書き方のポイントと主な教育課題
キャリア・パスポートとは、振り返り・将来に向けた見通しを繰り返すことで、生徒が自己理解を深め、キャリア教育につなげるためのツールです。
キャリア・パスポートを使った学びを充実したものにするためには、学期に一度の振り返りだけではなく、日々の記録を蓄積しておくことも大切です。手帳などを使って日々の記録を付けておくと、学期の振り返りも充実したものになります。また、キャリア・パスポートで立てた目標についても手帳に落とし込むことで実現できるようになるでしょう。
書くことが自己理解に繋がる!