PRINCIPAL INTERVIEW

100周年を迎えた安田学園が切り拓く 「学校完結型」学習とは
取材日 : 2025.12.19
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安田学園中学校・高等学校

校長:稲村 隆雄 先生

100周年を迎えた安田学園が切り拓く 「学校完結型」学習とは

2023年に創立100周年を迎えた安田学園中学校・高等学校。「自学創造」を教育目標に掲げ、生徒が主体的に学ぶ力を育成しています。近年では進学実績の向上や入学志願者数の増加など、大きな飛躍を遂げています。今回は稲村校長に、その背景にある安田学園ならではの取り組みについてお伺いしました。

貴校の教育理念・方針を教えてください。

(稲村校長)本校の創立者である安田善次郎が掲げた「社会に貢献できる人材の育成」という理念は、開校以来一貫して変わっておりません。時代に応じて商業や工業を教育の中心に据えていた時期もありましたが、創立90周年を機にその方向性を大きく転換しました。共学化を図るとともに、進学校としての教育を推進する方針へと転換したのです。

しかし、根底にある「社会に貢献できる人材の育成」という理念は揺るぎません。現在の教育の柱は主に3つあります。一つ目は「学校完結型」の学習環境の充実です。二つ目は探究活動であり、これにはSTEAM教育の要素を取り入れ、強化を図っています。そして3つ目がグローバル教育です。これら3つの柱を中心に、教育活動を展開しています。

「学校完結型」の学習環境について具体的に教えてください。

(稲村校長)「学校完結型」とは、生徒が学習塾や予備校に頼ることなく、学校内ですべての学習を完結させ、それぞれの進路目標を達成できる環境を指します。

まず、本校では、毎日の授業をやや高めのレベルで設定しています。そして、生徒一人ひとりが授業内容を確実に習得できているかを確認するためのチェック体制を構築しています。特に積み重ねが不可欠な英語と数学においては、週2回朝テストを実施し、理解度や定着度を確認しています。もし理解が不十分な場合は、補習などを行い迅速にフォローします。

この徹底したチェック体制や補習によるフォローアップは、中学から高校2年生の前半まで継続します。そして、高校2年生の後半からは、大学進学に向けて本格的な学習体制へとシフトします。放課後に行われる進学講座や大学別の対策講座も、すべて本校の教員が担当し、指導を行います。もちろん希望に応じて外部の塾や予備校を利用する生徒も2割程いますが、学校としては、最大限に学校の提供する環境を活用して欲しいと考えています。自習室は朝7時から夜8時まで開室しており、今年度からは日曜日の利用も可能にしました。

こうした指導の一環として、生徒一人ひとりの学習方法についても個別指導を行っています。例えば、生徒が「これだけ勉強しているのになぜ成績が上がらないのだろう」と悩む場合、スコラ手帳を活用しながら、教員が生徒一人ひとりの状況に合わせ、学習方法や時間の使い方について具体的にアドバイスしています。生徒の個性に応じた指導を通じて、より効果的で質の高い学習法を習得できるよう、学習内容の確認と併せて丁寧に指導を行っています。

このような「学校完結型」の取り組みの成果はいかがですか。

(稲村校長)この取り組みは功を奏し、近年、進学実績は向上しています。以前は中学3年生あたりで成績が停滞する生徒も見られましたが、このシステムを導入してからは、生徒の学力が継続的に伸びるようになりました。

生徒たちの意識にも変化が見られます。補習に残るとクラブ活動に出られないため、日頃から授業をしっかり理解し、小テストで合格点を取ろうと努力するようになりました。自ら学習に真剣に取り組むようになり、学力も着実に向上しています。

実際に、外部の塾に通うことなく、学校のシステムを最大限に活用して東京大学に合格した生徒もいます。その生徒は、朝テストや小テストで常に満点を目指す努力を続けた結果、担任の先生から「東大も目指せるのでは」と声をかけられ、見事合格を果たしました。まさに学校の仕組みにうまく乗ることができ、大きな成果を出した好例と言えるでしょう。

先ほどスコラ手帳を活用して学習方法のアドバイスを行うという話がありました。スコラ手帳はどのような経緯で導入したのでしょうか?

(稲村校長)私がまだ一貫部の教頭を務めていた頃に、生徒の家庭学習の習慣化や自己管理力の向上、そして教員とのコミュニケーション促進を目的としてスコラ手帳の導入を提案しました。そして、私が校長に就任してからは、学校全体で取り組むべき活動として、全生徒・全教員に導入することを決定しました。

現在の運用としては、週に一度は教員が生徒のスコラ手帳を確認します。教員によって、10人ずつ見る、5人ずつ見るなど、確認方法は様々ですが、いずれも生徒との交流を深めたり、学習時間の管理状況についてアドバイスしたりする貴重な機会として活用しています。

教員のモチベーションアップやスキルアップのために行っていることはありますか?

(稲村校長)かつては進路指導部がありましたが、現在は廃止しています。これは、「進路指導は特定の部署に任せればよい」という考え方を改め、全教員が受験への意識を高め、生徒の進路指導に主体的に関わることを促すためです。

そのような中で、今年からは医学部進学希望者の増加に対応するため、医学部研究チームを発足させました。医学部入試、特に推薦入試や小論文対策は専門性が高いため、本校教員だけでなく、専門予備校の講師とも連携し、研究を深めています。

以前は生徒が大学に合格した際、「果たして自分の指導が合格にどれだけ貢献したのだろうか」と、教員の指導の直接的な影響について疑問を感じることもあったかもしれません。しかし、今は教員全員で生徒の指導にあたっているため、「自分たちがこの生徒を合格させたんだ」という強い実感や達成感を得られるようになりました。

教員のモチベーション向上は、結果として大学合格実績の向上にも繋がり、さらに優秀な生徒が入学してくるという、まさに好循環が生まれていると実感しています。

その他、独自の取り組みがあれば教えてください。

(稲村校長)中高6年間を2年間ずつの3つのステージに区切り、それに合わせて学校の組織体制も変更しました。各ステージにはそれぞれ「主幹」と「主任」の先生が二人体制で配置されています。

これまでの学校では、学年主任が中心となる縦割り組織だったため、どうしても学年によって指導の質や内容に差が生じることがありました。しかし、このステージ制では、主幹と主任の先生が互いに指導内容や方針をチェックし合うことで、学年間の指導に差が出ないよう、平準化を図っています。指導レベルのばらつきをなくし、均一で質の高い教育を提供することを目指しており、このステージ制は非常に効果的なものだと感じています。

特に、大学入試を控える最終学年の「ステージ3」では、主任を二人体制とすることで、より手厚い指導やきめ細やかなサポートが行えるようにしています。

それでは、普段生徒の様子を見ることも多い、経理課長の田島さんにお聞きします。貴校の生徒はどのような生徒が多いですか?

経理課長 田島 瑠里恵 氏

(田島さん)メリハリをしっかりつけて行動できる生徒が多いと感じています。行事には全力で取り組み、楽しむ。そして、勉強するべき時には真剣に集中する。その切り替えが見事ですね。

例えば、以前は補習の時間に友達と話す生徒もいましたが、今では皆が黙々と学習に取り組んでいます。その集中力には、私も感心させられます。かといって、堅苦しいわけではありません。行事の運営を任せれば、今の時代に合った楽しみ方で生徒たちが企画・実行し、成功させてくれます。

生徒達はそうしたバランス感覚をきちんと持っています。体育祭も基本的に生徒運営で行いますが、現代の高校生らしい、生き生きとした装飾や工夫が見られ、素晴らしいと感じます。予想外の盛り上がりや、試行錯誤しながら楽しむ姿は、彼らの主体性の証です。きっと、こうした経験で培った精神力や工夫する力が、受験という大きな壁を乗り越える上での強みになっているのでしょう。

制服をリニューアルしたと伺いましたが、その背景や意図について教えてください。

(田島さん)本校創立100周年を記念して、制服をリニューアルしました。その背景には、「生徒たちが学校に行くのが楽しみになるような、少しでもポジティブな要素を届けたい」という思いがありました。

例えば、「今日はテストがある嫌な日だけど、お気に入りの制服を着ていくから頑張ろう」といったように、制服が学校生活におけるモチベーションの一つになることを期待しました。

女子生徒には、着こなしの選択肢を増やし、楽しんでもらえるよう工夫し、男子生徒には、ワイシャツやネクタイを複数の中から自分で選べるようにしました。これは、将来社会に出た際に、TPOに合わせて自分で服装を選ぶ練習にもなるという教育的な意図も含んでいます。特に男子のネクタイで複数種類がある学校は珍しいかもしれませんが、中学生は赤、高校生は青と色分けされており、生徒たちは好んで着用しています。自分の好みに合わせて様々なアイテムを工夫して身につけており、それぞれが制服を通して個性を表現し、自信を持って学校生活を送る姿が見られます。

昔は男子校のイメージも強かった貴校ですが、最近の変化に対し周囲からの反応はいかがですか?

(稲村校長)周囲からの反応は非常にポジティブだと感じています。保護者の方からは面倒見の良さを評価していただいています。

特にありがたいのは、地元の子どもたちが中学校から多く入学してくれていることです。生徒たちが制服を着て地域を歩く姿は、住民の方々の目に自然と触れるため、学校のイメージ形成において非常に重要だと考えています。地元小学校からの中学受験も多く、地域に根差した存在として受け入れていただいていることを実感しています。

特に昔からこの地域を知る方々からは、「学校の雰囲気がずいぶん変わって、良くなったね」といったお声をよくいただきます。昔は「やんちゃな生徒が多い」という印象を持たれていた時期もありましたが、イメージが変わるまでには10年ほどの歳月を要しました。しかし、今ではかつてのような「やんちゃな」という評価を耳にすることはほとんどありません。地域に開かれた学校として、ポジティブな目で見ていただいていることを実感しています。

改革を進めるにあたり、学校に関わる方々のマインドセットを変えるのは大変だったのではないでしょうか。

(稲村校長)改革を推し進めた時期は、生徒数が最も減少していた頃でした。当時の教員全員に「このままではいけない」という強い危機感があり、それがマインドセットの切り替えにつながったのだと思います。現在では生徒数が2000人を超えましたが、当時はもう少しで1000人を切ってしまうのではないかという状況でした。学校全体が「生き残るために改革を進めていこう」という機運に満ちていました。特に、実業科を廃止し、共学化を進め、高校をすべて普通科に統一し、さらに中学校を併設するという一連の改革を行った3年間は、学校にとって最も厳しい時期でした。

教員にとって、現在の生徒数の増加や、学習に対する意識の向上は、大きな変化です。教員の努力が、大学合格実績の向上という明確な結果に結びついています。この「自分たちの頑張りが、生徒数の増加や進学実績の向上に直結している」という実感こそが、教員にとって最も大きなやりがいだと感じています。

それでは最後に、これからの学校の在り方についてはどのようにお考えですか

(稲村校長)本校はこれまで着実に実績を積み重ねてきました。しかし、今後の日本の少子化を考えると、東京でも約5年後には子どもたちの数が確実に減少していきます。その中で、本校が本当に「選ばれる学校」であり続けるためには、これまでの実績を着実に積み上げながら、時代の変化に柔軟に対応し、教育内容や制度を常に進化させていく必要があります。

まず一つは「探究活動」と「STEAM教育」をさらに充実強化していくことです。今年も積極的に取り組んでまいりましたが、来年度は内容を一層充実させていく予定です。

このように堅実に一歩一歩上がっていく努力を続けることで、その時代に本当に求められる人材を育成し、結果として学校も社会から必要とされる存在であり続けることができると考えています。

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