PRINCIPAL INTERVIEW

生活を支えるスペシャリストの育成
取材日 : 2024.08.09
  • 高等学校
東京都立赤羽北桜高等学校 

校長:金澤 正美 先生

生活を支えるスペシャリストの育成

令和3年4月に専門学校として開校した赤羽北桜高等学校。「スペシャリストの育成」、「探究活動の充実」、「地域との連携」という3つのコンセプトに基づき様々な教育活動を行っています。本校の金澤校長に各コンセプトにおける学校の取組みについてお聞きしました。

まずはコンセプトの1つ目にある「スペシャリストの育成」について詳しく聞かせてください。

本校には、保育・栄養科、調理科と介護福祉科の3つの専門科があります。調理科と介護福祉科の生徒は、調理師免許、介護福祉士の国家試験受験資格を取得することができます。保育・栄養科では上級学校への進学を目指し、保育士、幼稚園教諭、栄養士といった資格取得に向けたステップアップの期間を3年間積むことができます。
高校生から専門的な教科・科目を学ぶことによって、早くその道の現場に入ることができ、経験をより多く積むことができます。柔軟性のある10代のうちに専門家等の指導を受ける機会を得ることによって、知識・技術の吸収も速く、対応力も身に付きやすく、自分の将来のキャリアを描きやすくもなります。しかし、若い分、諦めが早いこともあるかもしれません。挑戦してみたけれどもこの道ではなかったと、違う道を目指す生徒もいたりします。本校には3つの科があり、同じ学年でも違う学びをしている生徒がいるため、自分の選択した科だけではなく、興味の幅を広げて進路を選択する生徒もいます。早い段階で知識や技術を身に付けることによって、自分がその道に適しているのかどうかを知る機会にもなります。軌道修正をするにしても、チャレンジが早くなれば、それだけのキャリアを積むことができます。

進路指導はどのように進められていますか。

本校では進路指導部ではなく「進路相談部」を設置しています。指導ではなく「相談」ということを重視しています。普通科高校とカリキュラムが異なる専門高校のため、やり直しが難しいという面があります。だからこそ、1年生の時から進路相談部をはじめ、個々の教員がさまざまな進路行事を重ねていく中で、何かあったらすぐ相談をするように声を掛けています。相談ごとが早ければ早いほどサポートできることも多くなります。

生徒自身はどのように選択科目を決めるのでしょうか。

例えば保育・栄養科は、家庭科の専門科目の基礎学習をした上で、2年生から専門科目において、幼児教育・保育系、栄養健康系に分かれます。1年生の秋には、どの専門科目を選択するか決めなければなりません。保護者会(6月)、選択科目説明会(7月)を行い、生徒は9月に希望調査票を提出します。

それでは、コンセプト2つ目「探究活動の充実」についてはいかがでしょうか

課題研究という科目を設置しています。自分で研究テーマを設定して研究をしていくことで、自分のこれからの仕事を考えるキャリア教育としても重要な取り組みとなります。自分の興味・関心があることについて、どんな人たちがどんな研究をしているのか、上級学校の先生、企業の方からアドバイスをもらったりしながら進めています。生徒の最大限の力を発揮させるためには、ある程度仕掛けを用意する必要があると感じています。外部関係機関と連携しながら取り組んでいます。まだ開校4年目なので、試行錯誤している中ではあります。

専門科目と一般科目との間で教科を横断した共同での取り組みは行われていますか

例えば、理科の教員と調理科の教員がそれぞれの授業で学んだことを活かして、授業をしたりしています。1つの学びが点ではなく、結果的に線でつながっていくということができたら生徒の理解もより深まっていくと思います。教員同士の教材準備等のコミュニケーションがもっと取れればよいと思いますが、実習があったり、外部との連携があったりすると忙しくなってしまうというのが実情でもあります。教員のゆとりというのは今後も課題ではあります。

3つ目の「地域との連携」についてはいかがでしょうか

本校が在る東京都北区では、本校の介護実習室等を利用して、区民の方の介護研修の場として活用いただいたり、調理科は地元企業の方と一緒にレシピ開発等をしたりと交流が深まっています。これからは学校が地域の方にとって、休息的な役割になっていければいいなと思います。保育・栄養科、調理科、介護福祉科という人の一生につながる勉強をしている生徒たちなので、困りごとがあったとき、学校が頼りにされる場として機能するのが理想です。防災的にも地元の方々と交流を深め、力になれればと思っています。

貴校での3年間の学びを通して、どのような資質・能力を身につけてほしいですか

自分で考え、判断できる人になってほしいと思っています。本校には、生徒心得というものがあり、それを基にいつも生徒たちに話をしたりします。特に「自分と他者の身体・心(感情・知性)を尊重し、適切な判断を行う」ということは重視しています。高校生なので、当然保護者の支援はありますが、自分で将来の選択をしていかなければなりません。生徒には、他者を理解、尊重し、思いやりをもって、自分の行動を適切に判断できる人間になってほしいです。
また、保育・栄養科で学んだから栄養士、調理科で学んだから調理師というわけでは必ずしもありません。実際に私も高校は家庭学科で学び、大学に進学して栄養士と教員免許を取得し、家庭科の教員になりました。就職・進学した先で何か見つかることもあると思います。自分のキャリアアップをどう考えていくか、その点も含め、考えて判断できる人になってほしいと思います。

株式会社NOLTYプランナーズ