PRINCIPAL INTERVIEW

学校の在り方を変え、世界で活躍できる人を育てる
取材日 : 2024.07.23
  • 中学校
  • 高等学校
リンデンホールスクール中高学部 様

校長:都築 明寿香 先生

学校の在り方を変え、世界で活躍できる人を育てる

都築学園グループの一つとして、2004年にリンデンホール小学部・中高学部を設立し、今年創立20周年を迎えるリンデンホールスクール。国際バカロレア認定校でもあり、英語教育に力を入れる一方、生徒の自国のアイデンティティの育成にも取り組んでいます。国際舞台で活躍できる人の育成を目指すリンデンホールスクールの都築校長にグローバル教育の狙いと今後の展望についてお聞きしました。

貴校の理念、教育方針について教えてください

(都築校長)リンデンホールスクールは、グローバル社会の中で国際性を身に付け、 英語をツールとして使いこなせる「国際日本人」を育てていきたいという想いから2004年に創立された小学部・中高学部の一貫教育校です。本校は、「個性の伸展による人生練磨」という建学の精神のもと、「和魂英才」という教育方針を定めています。国際舞台で活躍するためには、英語力をつけるだけでは十分でなく、日本人としてのアイデンティティの確立や自国のことを理解した上で教養を身に付ける必要があります。「和魂英才」というのは、まさに和の心を持って、英語のスキルを身に付けた人を育成し、国際舞台に送り出すということを意味しています。グローバル化が進めば進むほど、日本人が世界に出ていくことも多くなりますし、海外から多様な方が日本に移り住んできます。そのような社会の変化に伴い、私たちも英語を使いながら、多文化理解、異文化理解をしていくことが非常に重要です。これらを実現するために、本校の教育では英語イマージョン教育と国際バカロレア(以下 IB)の2つが軸になっています。 また環境への取組みにも力を入れており、環境特例校の認定を文科省 から頂いています。小学部の頃から環境の授業がカリキュラムに組み込まれており、中高部に進学すると、さらにアカデミックなリサーチへと進み、探究学習の中での研究やフィ ールドワークを行います。また国際学会などで研究の成果を発表するなど、学校外でも多くの活動を行っています。

「和魂英才」の教育を行うために具体的に取り組まれていることについて教えてください

(都築校長)小学部においては道徳の時間で古事記を読みます。日本人としての教養を身につけるという意味で、小学校1年生から古事記を読んで、学んでいます。また武道や剣道、弓道、さらに茶道、華道といった「道」がつく活動を行っています。自分の中でフィロソフィーを培い、体を動かしながら習得していく「道」 を小学生の頃から涵養し、中学生になると学問的、学術的に理解するというフェーズに移行します。 また今年は創立20周年の節目にあたるということで、集大成として「英語歌舞伎」の上演に中高学部の生徒全員で挑戦しました。今まで培ってきた「和の心」や「日本文化」を英語で 表現するというのは、まさに我々の目指すことであり、「和魂」と「英才」を組み合わせ、まさに体現してくれた取り組みだったと思っています。

生徒の反応はいかがでしたか?

(都築校長)言葉の古典的な言い回しなど、今まで知らなかったことや、やったことがないことを知り、やってみる機会になり、面白いと思ってくれたみたいです。特に一流の歌舞伎俳優さんやお囃子さんからも指導を受けて、本物に触れるという意味でもワクワク感を持って取り組んでいたと思います。 また本校は留学を推奨しているため、多くの生徒が海外留学を経験しています。海外に行って、自国のことを意外と知らない、うまく説明できないという状況に置かれ、初めてアイデンティティを意識した生徒も多いようです。自国の伝統文化を咀嚼しながら、自分の言葉で表現するということを「英語歌舞伎」を通して、 生徒の自信にも繋げることができた思います。

それではもう一つの教育の柱としているIBの教育について担当教員であるカレン先生にお聞きします。IBの教育課程について教えてください

IBコーディネーター カレン・ハンター先生

(カレン先生)IB の理念は、伝統的な先生から生徒に教える、上から下にではなく、 生徒が学びたいもの、研究したいものを自ら実践的に学んでいくというものです。IBは1つの国を拠点とした教育ではなく、他国の知識や学びをすべて集めた教育です。 ミッションステートメントの1つに書いてあることは、たとえ違う文化でも、違う国でも、どんな人の意見でも、それは正しい、間違っていないということです。それを総括した考えが、平和な社会を築く、争いのない社会を築くということです。 IBの教育課程では、生徒は6つの科目を履修しなければなりません。それに加えてIBのコアである、知の理論(TOK)という科目があります。わたしたちが知っていることをなぜ知っていると言えるのか、という問いがメインにあり、自分の知識が正しいのか常に自分自身に問うことを求められます。現代社会は情報が溢れていて、何が正しく、何が本当の情報か、見極めなければなりません。その訓練として、知識がなぜ正しいのかを学んでいきます。このように伝統的な学び方とは違って、先生から教わるだけではなく、自分で確認をして、自分で学ぶということを大切にしている勉強法です。 またIB課程の中にはCASというものがあります。CASとは、Creativity(創造性)、Activity(活 動)、Service(奉仕)の頭文字をとった言葉です。自分のやったことのないことにチャレンジすること、居心地の良い場所にいるのではなく、そこから抜け出して何か新しいことにチャレンジするということがCASです。このようにIBというのは知識だけでなくて心の成長、体の健康、人として必要なすべてのものを育む教育です。ただ知識を記憶すれば良いというものではなく、社会に出ていく上で必 要となるスキルを IB の教育を通して自分のものにしていきます。またIBというのは 高校で終わる教育ではありません。高校で得たスキルは生涯ずっと使っていくものです。どんなシチュエーションや環境に置かれた時でも冷静に対処できるという一生の スキルを身に付けることができると思っています。

それでは、貴校で IB 課程を卒業した都築マリ彩さんにお聞きします。自分の探究の出発点となる問いはどのような過程の中から見つけていきましたか

都築マリ彩さん
小学校からリンデンホールスクールへ通い、2023年3月リンデンホールスクール中高学部を卒業。
獣医師を目指し、現在はカリフォルニア大学デービス校(動物科学専攻)で学んでいる。

(マリ彩さん)IB の教育では、例えば歴史の授業で、戦争の原因は何だったかという議題があったとき、様々なアプローチから問いを検討します。経済、政治、地域の人 間関係など、多角的に物事を見てその原因について学びます。ただ歴史と言っても、 知識として暗記するのではなく、現代社会にも通ずる課題を見つけるために様々な方向から問いを検討していきます。自分たちの既に持っている知識と、今の社会問題を照らし合わせるとこによって、そこから自分たちは何ができるかということを考えさせ られる教育なので、自然に問いの種というのは見えてきたような気がします。

活動のリフレクション(振り返り)はどのように行っていますか

(マリ彩さん)課外活動などでは担当の先生と相談しながら進めていきます。この経験を得て自分がどう成長したのかについても会話するため、常に振り返ることができていると思います。また学校とは生徒が集う場であり、(自宅で予習してきた内容をもとに授業が行われるため)教室は予習を前提にディスカッションをするもの、という認識があります。授業の半分以上はディスカッションで進めていくため、他人の意見から自分の意見を客観的に見て、気づきを得ることができる機会となります。

それでは都築校長に進路状況についてお聞きします

(都築校長)現在は生徒の内、約3分の1が海外大学、3分の2が国内大学に進学しています。コロナの影響でここ数年は海外進学の生徒が減っていましたが、今後 は海外に行く生徒もさらに増えると思っています。本校の基本的な考え方としては、生徒ひとり一人の希望する進路を尊重し、指導するということです。進路指導も、国内担当と海外担当に分かれており、ニーズに合った進路指導をできるようにしています。特に海外への進学を目指す場合、願書の出し方、エッセイの書き方等、国や大学によって全く異なるため、専門の先生にお願いして指導してもらっています。 今後の方針としては、やはり海外進学を推進していきたいと思っています。その理由は、アメリカのIvy Leagueの大学や、イギリスのOxfordやCambridge大学等、海外のトップスクールに進学できる実力を兼ね備えている生徒が、言語の壁で日本国内に留まってしまっているという現状を打開していきたいからです。これまでのリンデンでの経験と実績を通じて、英語を身につければ、世界中のト ップスクールに進学し、更なる高みの環境で自分を磨き、世界で活躍することができる、という実感が私たちにはあります。ですので、その実現のためにも、各種団体からの奨学金を案内したり、奨学金制度が充実した大学の情報を集めたり、 様々な方法で体制を整え、経済面などの課題をバックアップできるよう注力しています。

今後はどのようなことに注力していきたいと考えていますか

探究学習をさらに深めていきたいと思っています。現在も様々な活動を学校内外でし ていますが、もっと海外にも出て行って探究活動の幅を広めてほしいです。気候変動などのグローバルイシューは国内だけで留まるような話ではないですから、感性の豊かな中高生のうちに海外に行って、自分の目で見て、 体験して、そこで感じたことを学校に持って帰ってきて欲しいです。そしてそれらの課題や問題を解決するために、学校では何を、どのように勉強しようかというように逆算して計画を立ててもらいたいです。中等教育以上では、暗記や反復練習を中心とした学習は予習・復習で終わらせて、学校では予習した事や、それぞれが考えたことや経験したことを持ち寄って、ディスカッションし、思考や感度をさらに磨き上げていくことに専心する場所であることが、本来のあるべきだ姿だと思います。学校の在り方を考えていくと共に、自分の探究心を突き詰めていけるようにしていきたいと思い ます。

株式会社NOLTYプランナーズ