PRINCIPAL INTERVIEW

「真のリーダー」の育成を目指す、横浜翠嵐高校の生徒の心に火をつける授業とは
取材日 : 2024.03.07
  • 高等学校
神奈川県立横浜翠嵐高等学校 様

校長:加藤 俊志 先生

「真のリーダー」の育成を目指す、横浜翠嵐高校の生徒の心に火をつける授業とは

難関大学への高い進学実績を誇り、神奈川県の学力向上点進学重点校にも指定されている横浜翠嵐高等学校。心優しきグローバルリーダーの育成を掲げ、生徒の心に火をつけ自走できる授業づくりに力をいれる加藤 俊志 校長にお話を伺いました。

まずは、横浜翠嵐高校の教育として大切にしていることについて教えてください

「国内外を問わず広く社会に貢献する真のトップリーダーの育成」が本校のミッションです。横浜翠嵐高校というと進学校のイメージで、勉強ばかりしているのではないかと思われがちですが、勉強だけできれば良いというわけではありません。学校行事や部活動にも真面目に取り組み、人間性を養い、他者の痛みが分かる心の優しい「真のリーダー」になって欲しいと思っています。

貴校のグランドデザインには「生徒の心に火をつける授業」とあります。具体的にどういうことでしょうか

「生徒の心に火をつける授業」は本校のモットーでもあり、まさに進学実績が伸びている理由だと思います。生徒の心に火さえつけてしまえば、あとは自分で走り始めます。火をつけるまでが教員の仕事だと考えています。そのために、教員には生徒の心に火をつける授業をして欲しいと言っています。本校では一斉授業ではなく、生徒相互の学び合いの授業が多いです。教員は途中途中で解説や問いかけを入れるなど、ペアワークやグループワークを通して生徒同士で考え合いながら授業をしています。学校では、学校でしかできないことをしたいと思っています。皆で話し合っているうちに新たな気づきや疑問が生まれ、生徒の興味関心が引き出され、心に火がついているように思えます。
また、生徒の心に火をつける授業を行うために、私は校長の立場として「先生方の心に火をつける学校経営」を心掛けています。先生方が仕事しやすいようにどうしたらよいかを常に考えています。

物理基礎の授業の様子

高い合格実績をあげる貴校ですが、どのような進路指導を行っていますか

去年の進路実績は、難関国立大学、国立大学医学部医学科の合計の合格者数は創立以来過去最高の結果となり、東大の現役合格者数は公立校で日本一になりました。合格者数が伸びたことは喜ばしいことですが、本校は東大に多くの合格者を出すことを目標にはしていません。それぞれの大学によって教育方針は全く異なります。生徒が将来何になりたいのか、何を学びたいのかから逆算して考え、それが実現できる進路に向かうことを支援しています。

具体的な進路指導では、「進路は高校1年生で7割は決まる」と宣言しています。1年生の時に大学受験へと向かうように生徒の心に火をつけてしまえば、2年生以降は自走します。1年生の初動が一番大切です。東大ガイダンスや医学部ガイダンスといった卒業生からの講演も行っています。先輩からの話を聞いて、進路に対する理解を深めていきます。

医学部ガイダンスの様子

また高校2年生の12月には「第一志望宣言」を行います。なぜ自分がこの大学に行きたいのかを言葉にし、保護者にもコメントを入れてもらいます。校長として全員の第一志望宣言を確認していますが、とても想いが詰まった内容です。自分の目標を宣言したら、そこから志望を下げさせない指導をします。教員全員で生徒の進路志望を把握し、最後まであきらめずに頑張れるようサポートをしていきます。

特徴的なカリキュラムや生徒の自主学習などの支援は行っていますか

特徴的なところで言うと、「翠嵐スタンダード」というプログラムを作っています。公立校なので、中高一貫校と比べると、どうしても授業の進度で遅れをとってしまいます。高校三年間でどこまでに何を学ぶのかという独自のカリキュラムを教科ごとに作って、スピード感をもって授業を行っています。 また、「翠嵐ベーシック」という翠嵐生の学習の心構えを定めています。学習時間の確保のため、平日は学年+2時間、休日は学年+4時間の自主学習をするよう促しています。これを達成できているかいないかを「知層」と呼ばれる独自プリントに記入させ管理し、学習量の見える化を行っています。
普段の授業とは別に土曜授業も任意参加で開催しています。そこでは過去問を解くなどの演習を行い、学力向上を図っています。

生徒はモチベーション高く取り組まないととても忙しいかと思います。翠嵐生はどのような生徒が多いですか。また生徒のメンタルケアなどで実施していることはありますか

本校には多種多様なおもしろい生徒が集まっていると思います。行動力があり、自分の興味のあることをとことん突き詰める探究心がある生徒が多いです。勉強だけでなく学校行事に向かう力もとても強く、生徒のモチベーションは大変高いと思います。
もちろん勉強についていけないと悩む生徒もいます。そのような生徒へのケアはスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーなどもフルに活用しながら、絶えずどの子が何に悩んでいるのかということを分析してケアに当たっています。

探究学習ではどのような取り組みをしていますか

探究学習は主に個人で進めます。年間で2回のテーマ設定、発表をし、3年間でこのサイクルを5回繰り返します。テーマを変えずに突き詰めても良いし、毎回テーマを変えても問題ありません。テーマを毎回考えることで、自分はどういうことに興味があるのか、どこを掘り下げたいのかということを、探究学習を通して考えているうちに進路が決まってくるのだと思います。
3年生になると任意の生徒で企画ゼミを行います。生徒主体となって、研究したいテーマを決めて、ゼミのようにチームを作って発表することもできます。
自分の興味関心を掘り下げ、進路での学びに繋げるという点で探究学習にも力を入れています。受験勉強は詰め込んでも限度があります。探究学習は生徒の心に火をつける起点でもあると思っています。

今後の展望を教えてください

日本一の公立高校をめざしたいと思っています。一番というのは進路実績だけではなく、人の痛みの分かる心優しきリーダーを育成するという意味でトップ校になることができたらと思っています。勉強面だけでなく、挨拶など社会に出てから必要とされる基本的な力を伸ばすという点でも注力していきたいと思っています。
また学校経営においては、今は想いの強い先生に頑張ってもらっている部分も多くあるため、働き方の工夫もしていきたいです。学校全体で向かうべきベクトルを明確にし、思いを一つに取り組んでいきたいと思っています。

株式会社NOLTYプランナーズ