PRINCIPAL INTERVIEW

【多様性】を創造する学校づくりを目指して
取材日 : 2024.01.12
  • 中学校
  • 高等学校
聖徳学園中学・高等学校 様

校長:伊藤 正徳 先生

【多様性】を創造する学校づくりを目指して

ICT機器を積極的に導入し、生徒が情報を集めて主体的に判断する力やアウトプットする力をつけることを重視している、聖徳学園中学・高等学校。STEAM教育や国際交流などを通じて、生徒が社会の問題に向き合い、実際に行動を起こすことを目指しています。そんな聖徳学園中学・高等学校の取り組みについて、伊藤 正徳校長先生にお話をお伺いしました。

まず初めに聖徳学園の教育として大切にしていること、取り組んでいることを教えてください。

今までの日本の教育は、先生が授業で知識を詰め込んで、生徒はそれをきちんと覚えて入試でアウトプットするという形式でした。効率的な学びの提供のため、先生があらかじめ情報を整理し生徒に与えるのです。しかし、これからは最低限自分で必要な情報を集め、自ら整理する力が必要であると考えています。本校では、9年前にICT端末を導入し、活用を開始しました。まだ探究という言葉もない時代から、ICT端末を活用し、発展途上国への支援など、具体的に社会に役立つことを生徒自ら考え、研究し、行動して成果を出していくことを主軸に取り組みを進めてきました。
この取り組みを進めるにあたって、生徒のアウトプット能力の育成にも力を入れました。日本の生徒は、情報のインプットには優れていますが、アウトプット能力は弱い傾向にあります。せっかく素晴らしい研究をしていても、学内でのレポートや発表で終わってしまう場合が多いです。学内ではある程度価値観が似ている人が多くなりますし、学校の先生相手に行うと馴れ合いで緊張感の薄いものになりがちです。ですから、本校では学外へのアウトプットが重要と考えています。学外の有識者(JICA、大学の先生、スタートアップ起業家)に対して発表する機会を設けることで、緊張感のある場になり、また専門的なフィードバックも得られます。より充実した、生徒が成長できるアウトプットの場をつくっています。

具体的にどういった形でその構想を実現していますか?

STEAMを導入しています。ご存知の通り、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学・ものづくり)、Arts(芸術・リベラルアーツ)、Mathematics(数学)を融合した教育です。今までの勉強の原動力は、いい大学に入っていい会社に入っていい人生を送ることなど自分の幸せの実現であったと思います。現在では「Well-being」という言葉に代表されるよう、良い社会を実現していくことに移り変わりつつあります。そのためには様々なことを融合して考える能力を身につけることが必要であり、教科横断型の教育が重要だと考えています。
実際の具体的な取り組みのひとつとして、中学校1年生時に教科を横断しながらSDGsをテーマに映画の制作に取り組んでいます。シナリオ(国語科)、粘土工作(美術科)、BGM(音楽科)、環境問題(理科)のように、各教科を活用しながら、クレイアニメによる映画を制作しています。ここでも、ICT端末を活用し、撮影や編集に取り組んでいます。

カリキュラムの中にグローバル教育があると思います。その中でも基礎として日本のことについて学ぶ段階が重要視されていると思います。これらグローバル教育について、学びの段階を設けている御校独自のカリキュラムを教えてください。

中学校1年生では、自分の心を開いてもらうというところから始めます。本校では、担任2名制を採用しています。生徒と多様な角度から向き合い、可能性を見出すために、2名の担任を設けることで充実した環境づくりを実現しています。最近の生徒は、周りの反応を気にして自分の考えや意見を言わない生徒が多いです。充実したコミュニケーションを取るためには、まずは失敗しても怖くない安心した環境をつくることが大切です。本校で重要視しているアウトプットを充実したものにする上で、失敗を笑ったり、責めたりするような環境ではいけません。れらの取り組みにより、まずは心を開いてもらい、自分の意見を伝える、相手の意見を聴く力を育てる過程を持っています。
グローバル教育に関しては、まずは日本のことを知らないといけないと考えています。生成AIなどが進歩し、情報をまとめる技術は進歩していますが、最終的に判断するのは人間です。日本は、経済的には遅れていると言われるようになってきましたが、文化的な素養は目を見張るものがあります。実際に海外の方が学校の視察に訪れた際も、生徒自身が掃除をしているところを見たり、規律を守りながら学校生活を過ごしている様子を見られると驚かれる方が多いです。そこで、グローバル教育の初めの段階として、まずは日本人としての判断軸を持つ必要があると考えています。その中で、中学1年生では新潟県で宿泊学習を行います。農家の方にホームステイさせていただき、日本の生活の礎である農業を体験します。中学2年生では、本校の源でもある聖徳太子について理解を深め、日本文化の本質を体感するために関西研修を行います。これらの日本を知る過程を経て、中学3年生では、カナダ・ニュージーランドで研修を行います。
高校生になると、途上国への理解を深めていきます。主要な先進国について理解を深める機会は普段の生活でもあると思いますが、それ以外の多様な国に意識を向ける機会は多くありません。これからの時代は途上国とビジネスをしていく機会もより増えていくでしょう。そのために高校生の時から意識的に様々な国の価値観に触れ、課題について考える機会をつくっています。

貴校で重要視している探究学習のあり方についてお考えをお聞かせください。

探究学習の目的を純粋な好奇心のエネルギーを費やせる場所」にしたいと考えています。総合型選抜など、探究学習での経験を生かした入試方式が充実してきていますが、理想を言うと受験など関係なく、純粋に好奇心をとことん追求できる環境をつくり、とことん探究できることが重要であると考えています。その中でも、ICT機器を活用し、外部と繋がり、学びを深めていって欲しいです。
未来を考えると暗いことが多いのですが、未来に向かって明るい希望を抱きながら学びを進める意識が日本には必要ではないかと考えています。また、学びの過程で先生が介入しすぎるたり、成果を求めすぎたりすると、予定調和的な無難なものになったり、周囲の意向を忖度することになりかねません。ですから探究学習では、生徒が失敗できる、自由に学びを追い求める環境をつくることが必要だと考えています。

今後の貴校の取り組みとその展望についてお聞かせください。

来年度より、高校課程でデータサイエンスコースを設置します。文理融合かつ探究型の学びで科学的視点を養い、解決力と人間力を磨くことを主軸に置いています。ICT機器を用いて自ら適切なデータを見つけ、データで判断していく能力を養えるコースになっています。
特に、リベラルアーツ教育を重視していて、先程説明した通り、教科横断で授業を行います。優秀なデータは特に英語のものが多いので、英語を不自由なく理解できる力も必要です。そのために、9科目をオールイングリッシュで開講できるように準備を進めています。
日本の学びの足りないところにフォーカスしたカリキュラムづくり、型にとらわれない学びを得られる環境づくりを行っていきたいと考えています。

株式会社NOLTYプランナーズ