PRINCIPAL INTERVIEW

生徒の自己認識力を高め、個々の哲学を持つ 
取材日 : 2023.11.17
  • 高等学校
茨城県立土浦第一高等学校 様

校長:プラニク ヨゲンドラ 先生

生徒の自己認識力を高め、個々の哲学を持つ 

2023年度より土浦第一高校の校長に就任し、文武両道を重視した教育を目指すプラニク ヨゲンドラ校長(以下、よぎ先生)。生徒自身へ自己理解を促し、メタ認知能力を高めるための教育の重要性について、お話を伺いました。

まず初めに、貴校における教育で大切にしていることを教えてください。

まず学校の中心にあるのは文武両道です。部活動、学校行事をやりながら学業の成績を保てるということは、この学校の特徴的な強みであり、部活動の成績も良く、これからももっと力を入れていきたいと思っています。
成績という結果だけにこだわるのではなく、部活動や学校行事を通して何を学んだか、何を習得できたかということを生徒に考えて欲しいと思っています。
一つ一つの物事には「哲学」があると考えます。生徒には「哲学」を見抜く力を身につけ、そしてその哲学を学びに繋げて欲しいです。例えば野球をすれば、どのようにすればホームランを打つことができるのかという問いから物理学に繋げられるかもしれません。プレイ時の精神状態がパフォーマンスにどう影響を与えたかなど、考えられることはたくさんあります。ただ結果だけを見るのではなく、結果に繋がる背景にある「なぜ」を考えることで、知識や世界の幅を広げていってほしいと思っています。

哲学を見抜く力とは、メタ認知の向上と言い換えることもできるかと思います。なぜそれを重視するのか、そのような考えに至った背景を教えてください。

本校で勤務する前にIT業界で約13年、銀行業界で約9年仕事をしていました。IT業界ではプログラムを作るうえで、不具合が出ることは自然なことと捉えていました。はじめから完璧なものを作るよりも、まずは動かしてみて、不具合が出たら修正するということを繰り返していく方がより良いプログラムになっていくと信じていました。ところがその後、自動車系の工場で仕事をしたのですが、そこではIT会社と違い、不具合が起こると人の命に関ることになります。そのため、不具合が起きたら改善するのではなく、不具合をそもそも起こさないようにするための仕組みがありました。
2年間工場で仕事をし、その後再度IT会社に戻り、両社の違いを考えた時に、IT業界にもそもそも不具合を起こさないという考えがあってもいいのではないか?と思うようになりました。不具合があっても命取りにはならないというIT業界の風潮がありますが、後に入社した銀行では不具合を起こしてはならないです。人の大事なお金を預かっている以上、事務ミスやコンプライアンス違反は許されない。もちろん、IT業界と自動車業界と銀行業界では、管理手法も違うし、業界としての歴史の長さも全然違います。しかし他業界であっても良いところや考え方は応用して活かしていくべきと思いました。多業種の民間企業で仕事をした経験が、メタ認知の重要性を考えるきっかけになったと思います。
学校の中で問題に直面した際に、その場面だけを考えて問題の解決策が見つからないとき、過去どこかで何かを見た記憶、何かを行った経験を頼りにしています。たくさんの経験から最適なものを引用して、問題の場面で使うということが一番良い答えに繋がると思います。

勉強で学んだこと、部活動で学んだことを接続して考えていくという、先ほどの「文武両道」の考えにも繋がっていると思いました。

はい、そのためにメタ認知を強化していくにはどうすれば良いかということを考えていきたいです。そもそもやっていることに対する理解、認識自体をどう上げられるのかがすごく大事です。なぜ今これをやっているのかということを授業の中でも常に考えてほしいです。 先生方には授業のまとめのときに、今日学んだことはどこに繋がるか、ワンポイントでいいので話してほしいと言っています。例えば、今日学んだ物理学は実は化学に、数学はスポーツに繋がるかもしれない。そのようなことを授業の最後に話して欲しいと言いました。こうした積み重ねがメタ認知向上に繋がると考えています。
また、ひとつ最近あった話です。行事を企画した委員の生徒に、その行事が無事終わって、「どんな学びになりましたか?」と質問したら答えが返ってきませんでした。企画はしたが、どのような学びがあったのか、その学びが今後どこに活用できるかが分からないようでした。そこで、「例えば、地域の高齢者向けの旅行を企画してくださいって言われたら、今回同様に企画出来ますか?」と質問をしました。するとその生徒は「はい、そうです」と答えました。「まさにそのことが、あなたができるようになったことです。その自覚を持ってほしい。」と話をしました。ただやってみただけで終わってしまうのではなく、そこに確かな学びを作ることで、その学びは社会に出てからも活かすことができます。そのために生徒には自分の身に着けた力や能力に自覚的になって欲しいと思います。

ありがとうございます。それではキャリア教育についてお伺いしたいと思います。将来を見据えた際、貴校の生徒にはどのような力を身に着けて欲しいと思いますか。

私の小学生のころ、インドで初めて宇宙飛行士が宇宙に行き、私も宇宙研究者になりたいと思うようになりました。中学校を出る頃になると、インドの路上では車が走るようになっていました。すると車が走るのはなぜなのか、どのようなパワーで走るのかが気になり、自動車や機械に携わるエンジニアになりたいと思うようになりました。そして高校の物理学の先生の影響を受けて大学で物理学を専攻したいと思うようになりました。周りの影響を受けて、夢や目標は変わっていきました。それで問題ないと思います。ただ、自分の中には本来、何かの力があると考えています。人それぞれ違う、自分の内にある力や強みです。それを意識的に理解することが重要です。例えば、スポーツ選手を見たときに、この人の特徴は何だろう、この人の力は何だろう、その同じ力は私にもあるのか、同じ道を行けるのか、そこまで考えている生徒は少ないと思います。結果を見て魅了されて、ああなりたい、こうなりたい、となっていくだけであって、その人の持っている力と自分の力を繋げて考えることができないのです。他者を見ることで自分の力や強みも顧みて、将来どうなりたいか考える力を養って欲しいと思います。
可能であれば、次年度は適性検査を何種類もやってみたいです。5種類ぐらいの適性検査をやってもいいかなと考えています。客観的に結果を見られるようにすれば、自分の強みを理解して、言語化することができるようになるかと思います。また、成功するためには良い習慣づくりが必要で、習慣形成のためのタイムマネジメントツール等も導入したいと考えています。

これからの生徒へ期待することを教えてください。

自己認識の力を伸ばしてほしいです。学問だけではなく、自分の中身を理解し、自分の力を信じて欲しいです。本校のポテンシャルはまだまだ出し切れていないと思っています。県内の公立校の中では、大学進学の成果は出ていると思います。しかし、ただ難関大学に合格するだけがゴールではない。結果的にそこからこの国を担えるようなリーダーをどれだけ作ったか、育てたかが重要だと考えています。生徒には、広い視野を持って、日本や茨城県を引っ張れるようなリーダーになって欲しいと考えています。例えば、本校の卒業生から日立製作所の社長や茨城県知事や名選手が生まれることを願います。そのためには、本校に入学して、難関大学に合格を目指すという考え方だけではなく、卒業してから何をしたいのかをしっかり考えさせたいです。

株式会社NOLTYプランナーズ