PRINCIPAL INTERVIEW

「まなびのOS」で自ら学び続ける力を養う
取材日 : 2023.10.17
  • 高等学校
藤沢翔陵高等学校 様

校長:金子 好幸 先生

「まなびのOS」で自ら学び続ける力を養う

藤沢翔陵高等学校は普通科と商業科を持つ男子校の高校です。2022年4月からは、普通科において新コース体制を編成し、「探究」を軸とした新カリキュラムを実施しています。「日本語教育」といった基礎的な学びを大事にしつつ、時代の変化に対応した力を身に着けるために取り組まれている同校の金子校長にお話を伺いました。

まずは藤沢翔陵高等学校の教育理念や大切にしていることについて教えてください。

「自ら学び続ける力」を身につけることを大事にしています。生徒たちがこれから生きていく時代は、終身雇用でもなく予測不可能な社会です。自ら学び、スキルアップすることを求められるでしょう。そのような時代の中で生きていくために、高校での学びを通して、自分なりの勉強方法を身に着けて欲しいと思います。
また、コミュニケーション能力を養うことも重要と考えています。学校教育において、日本語の「読む」「書く」の訓練は積み重ねてきますが、「聞(聴・訊)く」「話す」ということについてはまだまだ不足しているように思います。きちんと聞(聴・訊)き、それを頭で整理し、理解する。そのような力を養うために、国語とは別に独自の日本語教育というものを行っています。

日本語教育について詳しくお聞かせください。

日本語教育を本校では「まなびのOS」と呼んでいます。最近の生徒を見ていると、良いことも悪いことも全て「ヤバい」という一言で済ましてしまうことが多いように感じます。また生徒の大半は生まれたときから日本語を喋っているので、自分は日本語ができると思っています。ところが、自分の思っていることを日本語でも的確に言語化することは簡単なことではありません。豊富な語彙とそれを取捨選択し文章や言語にする思考力が求められます。また、グローバル化が進み、日本語話者でない人と対峙する機会が増えると、空気を読むなどの察する文化が通用しなくなります。自分の意志を論理的に人に伝えることができるようになるという目的で、日本語教育では日本語の仕組みなどから教えています。非日本語ネイティブの方に向けて日本語教室で教えた経験のある外部の講師にお願いすることもあります。

それでは2022年から新カリキュラムとなった「文理融合探究コース」「得意分野探究コース」での探究の取組みについて教えてください。

「文理融合探究コース」は文系、理系にとらわれず、幅広い知識の中で探究テーマを決めていくコースです。「得意分野探究コース」は部活や郊外活動も頑張りたいという生徒に対して、自分の得意や興味のあることを出発点にテーマを考え、拡げていこうというコースです。大学の研究とは違うので、探究の学習では自分なりのテーマを設定して、考え、人に論理的に伝えられるようになれればいいなと思っています。具体的には、1年生では哲学対話などを行いながら、考え発表するという力を身につけます。2年生からゼミ形式で探究活動を行い、3年生では最終的に論文にまとめて発表します。

哲学対話ではどのようなことをするのですか?

特定非営利活動 こども哲学・おとな哲学アーダコーダと一緒に行っています。円になって座り、自分たちでテーマを決めて対話をします。テーマも生徒自身が決めます。生きるとは何かというような問いから、様々なテーマについて対話します。人の意見を聞いて、考え、自分の意見を言うということを少しずつ実践しながら、探究における自分のテーマ設定に繋がっていくということを期待しています。

テーマを決め、そのテーマを拡げて考えていくというのは簡単なことではないと思います。哲学対話以外に生徒へのサポートなどはありますか。

やはり学校内の授業だけで興味関心を見つけたり、テーマを設定したりというのは難しいと思います。ですので、なるべく外部との接点を持つ機会を設けています。新カリキュラム以前から、生き方学習という名前でダンサーの甲田真理さんに講演をしていただいています。コロナ前はダンスワークショップなども行っていました。また芸術分野の科目が今まで書道だけだったので、新カリキュラムでは、工芸、美術、音楽も選択できるようにしました。また先ほど申し上げた通り、日本語教育を行っていますが、3年生では言語だけでなく、表現という科目を次年度より実施していきます。写真や映像、藍染めをやっている卒業生、DJ、落語家など、外部のプロの方と接して、様々な表現方法を学んでいくという内容を考えています。最終的には探究してきたことを人に伝えるときに表現の授業を活かしてもらいたいと思っています。
またテーマ設定について呼びかけていることとしては、最終的には人々が幸せになったり、豊かになったりするところに繋がって欲しいと伝えています。ただ何か調べて発表するというだけでなく、それが人々の生活にどんなふうに関わってくるのか、役に立つのか、自己完結せず、人間や社会といったことまで考えを深められるようなテーマを決めるように声掛けしています。

進路状況はいかがでしょうか

やはり総合型選抜が増えてきています。探究をしてきたことを受験や大学での学びに繋げてくれればいいなと思います。また昨年は250人中20名ほどが就職しました。多くの生徒は進学しますが、人生100年時代、就職してから大学に行っても良いし、スキルアップのために大学に入りなおす、専門学校から大学に行くなど進路の選択肢は増えています。そういった時代において、やはり自分で学び続ける力を養うということが重要だと考えています。

5年後10年後を見据えたときに何を行い、実現させたいか、ビジョンはありますでしょうか。

個別最適な学びというのが今後学校としての課題になると思っています。今までの授業は、同じ時間内で一斉一律に行われてきましたが、生徒によって理解度や進度が違います。個々に合わせてどのように授業をできるか、究極的に言うとクラス内で同じ時間に別の科目をするということもできるのかなと思います。もちろん学校としてやることや、体制は考えていかなければなりませんが、枠にとらわれないようなことができたらと思います。探究学習においては、3年生と2年生がチームになって、3年生がリードしながら、学びを深めていければいいなと思います。選択授業も2年生3年生混合授業を次年度から実施していきます。まだ改革が始まってようやく1年というところです。教員側もやりながら改善し、生徒と共に成長している状況です。試行錯誤しながら、これから最適化に向かって行ければいいなと思います。

最後に生徒さんには今後どのようになって欲しいなと思いますか。

本校では「脱・偏差値」ということも掲げています。枠にとらわれず、新しい発想でいろいろなことに挑戦して欲しいと思います。「〇〇らしくあれ」、「△△するべき」などを取り払って、自分の好きを見つけて欲しいと思います。卒業生の中には様々な分野を融合させ、独自の肩書を持って活躍している人がいます。既存の枠に捉われずに、自分の世界を作っていってほしいなと思います。

株式会社NOLTYプランナーズ