PRINCIPAL INTERVIEW

50年先を見据えた学校改革に取り組む 桐蔭学園での学び
取材日 : 2023.09.20
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桐蔭学園高等学校 様

校長:岡田 直哉 先生

50年先を見据えた学校改革に取り組む 桐蔭学園での学び

桐蔭学園は1964年に創立した私立学校で、2015年から学校改革を進めています。改革の理念は「自ら考え判断し、行動できる」生徒の育成。その理念を軸にアクティブラーニング型授業、探究、キャリア教育の3本柱で新しい学びを展開しています。そんな取り組みを進める、桐蔭学園高等学校の岡田校長先生にお話を伺いました。

まず初めに、桐蔭学園としての教育理念や大切にしていることを教えてください。

 桐蔭学園は1964年に創立、来年で60周年を迎え、伝統校の域に入りつつあります。設立当時の建学の精神もありますが、60年前にできたものですから、それを現代に当てはめようとしてもそのままでは難しいところもあります。ですので、その建学の精神をベースに、次の時代を見据えて、今の生徒たちにどういう理念を提示するのが良いかを考えて、新しく策定しました。それが「自ら考え判断し、行動できる子供たちを育成する」です。
実はこの理念を考えるのに、ものすごく時間をかけました。学園が行っている学校改革があり、それをスタートしたのが2015年でした。その1年前の2014年が、創立50周年という節目の年でもあり、次の50年を見据えた桐蔭学園を作っていこうという改革プロジェクトチームができました。そのチームでの議論の中で、今後の桐蔭の学びをどうするのかを考えたときに、新しい桐蔭学園の理念を作って進んでいこうということになりました。これは、改革を進める上で迷った時に立ち返ることのできるものでもあります。
 次の50年は、一言で言えば、今まで我々が経験したことのないような、何が起きるかわからない予測不可能な時代に入っていくだろうと考えました。その中でどのように地に足をつけて進んでいけるかを考えたときに、どんな状況でも自分の考えを持ち、その状況に合わせて判断する。それがやはり一番強く生きていける人物だろうと思い、この理念を決めました。新しい時代を生きる強さとしなやかさを身につけることを目指しています。

岡田校長先生から見たら、しなやかさを持った人とは具体的にどのような人だと思いますか。

 その場その場でしっかりと判断することができる人だと思います。それをするためには、常に多角的に考えていることが必要で、そうすると瞬時に判断できようになるのかなと思います。常に物事を考えている、考えがブラッシュアップできるというところにあると思います。
常に自分の考え方を更新できる。そういう謙虚な心が必要だと思います。特に人の話を聞く姿勢というのは、しなやかさと繋がる部分かなと思っているので、本校でも大事にしています。

そのような個性を育てていくために、具体的にどういった取り組みをやられていますか。

 今、上位概念についてお話ししましたけども、それを実現するために桐蔭学園では三つの柱を確立しています。
一つ目がアクティブラーニング型授業です。全ての授業や全ての活動で基本的にはアクティブラーニングを行っていて、全ての学びのベースとなっています。
二つ目が、探究授業です。この探究授業を桐蔭学園では「未来への扉」と呼んでいます。
三つ目がキャリア教育です。
 この三つをしっかりと行うことで、先程言ったような理念に基づいた学びを展開しようと考えています。アクティブラーニング型授業に関しては、人との接点があること、傾聴と承認を行うなど、人の意見を聞いて自分で取り入れ、自分の考えをブラッシュアップしています。常に自分を更新するというところに繋がると思いますし、ひいては人とのコミュニケーションというものが自分自身の非認知能力の育成に繋がると考えています。

高校と中等教育学校の違いはどのようなものがありますか。

 基本的には一緒です。もちろん中等教育学校は6年間ありますので、コンテンツの多さという点で差が出てきます。
 例えば探究授業で言うと、高校の場合は1、2年の2年間で探究プログラムを進めます。1年の1学期に探究の基礎スキルを学び、自分たちの好きなテーマを選んでその後ゼミに入ります。ゼミでの探究の成果を1人1人が全員の前で発表して、最後に論文を書いて終わります。
 中等教育学校の場合は、1、2年では、調べ学習をやったりテーマ学習をやったりします。3年の段階で、1年間かけて模擬国連に取り組みます。これがグローバルチャレンジという探究プログラムです。そして高校1年相当の中等4年になって、最初の1学期は、サイエンスチャレンジという、データサイエンスに取り組みます。グローバルとデータサイエンスを行い、その後は基本的に高校と同じプログラムです。

最近の生徒さんの探究で特に面白かった事例などを具体的に教えてください。

 優秀な生徒を挙げたらきりないのですが、私が今まで見た探究の中で一番印象に残っているのは、アニメの中の世界について興味を持った生徒です。アニメの中で風が出てくるんですよ。その風の速度を求めた事例があります。
絵の震え方など、そこを全部分析して、速度を割り出していました。本当にこれは大学レベルの研究としては研究対象にすらならないものですが、それでいいと思うのですよ。高校時代は探究って別にその結果は二の次で、自分が関心持ったことでテーマを立ててそれを一定のスキルに基づいて結論を出してみる、という経験が大事であって、本格的なものは大学でやればいいと思います。高校の段階ではその「目」を大事にしたいと思っています。
当然どの事例も参考文献があるのですが、この生徒は、調べても情報がないと話していました。これだけ情報が溢れている中で、自分が興味関心を持ってこれについて探究しようと思っても、ネットで調べたらすでに大体答えが出ているものですよね。でも、この生徒の場合は、どうネットで調べても、風の速度はどこにも出てなかったそうです。だからこその探究だったかもしれないですね。
本校の探究は、必ずしも優れた成果を求めているわけではありません。もっと探究したい生徒はいろいろとコンテストに応募しているし、賞も取っています。それはそれでいいのですが、私達がどういう探究活動を目指しているかというと、まずは全生徒が探究のスキルを身に付けて、探究の種を見つけて欲しいということです。
一定数の生徒はいろいろなコンテストに応募します。ただ、さきほどのアニメの中の風の速度を測るみたいに、自分の興味関心のあるものに対して全員が探究をやることこそを重視しています。

今後50年のビジョンを立てていくとおっしゃっていましたが、この先の10年20年、50年を考えたときに、具体的に何をやっていきたいか、どのようなところに力を入れていきたいと考えていますか。

 やはり、卒業生を見ていきたいです。来年で改革10年目、ひとまず完成年度(全学年男女共学化後入学の生徒になる)を迎えますので、今後その成果がどのような形で現れてくるか。 大学進学実績は一つの指標ではありますが、決して着地点ではないので、大学入学後、そしてその後の社会に出た生徒たちがどのように活躍していくかというところに、注目したいと考えています。そのエビデンスをベースにして、今の現役生たちにどのような学びの環境を提供したらいいかを考え、次の一手を打ちたいと考えています。

株式会社NOLTYプランナーズ