PRINCIPAL INTERVIEW

変化を楽しみながら改革に挑み続ける かえつ有明中学校・高等学校の取り組み
取材日 : 2023.09.08
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かえつ有明中学校・高等学校 様

副校長:佐野 和之 先生

変化を楽しみながら改革に挑み続ける かえつ有明中学校・高等学校の取り組み

アクティブラーニングや探究学習をいちはやく取り入れ、力を入れていることで知られる、かえつ有明中学校・高等学校。高校の新クラスの立ち上げや様々な改革を牽引してきた同校の佐野副校長より、各クラスの特色や学校での取り組みについてお話を伺いました。

まずは、かえつ有明中学校・高等学校の教育理念や大切にしていることについてお聞かせください。

かえつ有明中学校・高等学校(以下、本校)では「学び方を学ぶ」「自分軸を確立する」「共に生きる」という3つの軸を掲げています。前々校長の時代に、「生徒一人ひとりが持つ個性と才能を生かして、より良い世界を創りだすために主体的に行動できる人間へと成長できる基盤の育成」という長い文章の教育理念がつくられましたが、その後、有志の教員に集まってもらい、話し合いながらその教育理念を落とし込んで、新たに3つの軸を作りました。

この3つの軸を基本に、学校では具体的にどのような取り組みを行っていますでしょうか。

この軸に沿って授業カリキュラムの策定や学校行事、日々の活動をデザインしています。またこの3つの軸を生徒の成績評価にも応用しています。各軸に対応する評価基準を定め、各学年や各クラスの伸ばしたい力に合わせて、その評価割合を変えています。

ありがとうございます。それでは各クラスの特色について教えてください。

まず中学校は1学年6クラスあります。帰国生も一学年に対して約25~30%在籍しており、4人に1人は外国にルーツやバックグラウンドのある生徒です。入試形態も様々で、一般的な学力を問う2科4科入試、外国語で思考力を問う帰国生入試、問いを立てる力や深く考える力を問う思考力入試、周囲の人と関係性を構築する力や対話を通じて自分と周囲の人のやる気や興味を引き出す力を問うアクティブラーニング入試の4種類があります。そのような入試を経て入学してきた多種多様な生徒たちが混在しています。
高校では、知識習得や本質的理解を重視し、個の学びを深めていくトラディショナルクラス、それぞれの興味関心から学びを深め授業を自分たちで創っていく新クラス、対話や協働を通じて知識や学びを深めていくオーセンティッククラスの3タイプのクラスがあります。今までは成績順でクラス分けをしていましたが、2020年から授業カリキュラムや授業進度を提示したうえで、生徒が選択できるように変更しました。生徒とクラスのレベルが合致していない場合は面談を重ねて最終的に決定しますが、個人の意志や進路の希望に合わせてクラスを選べるようにしています。

ありがとうございます。貴校の特色でもある探究学習について、中学、高校ではどのような取り組みをしているのか教えてください。

中学では探究学習はサイエンス科という名前で週に3時間行っています。はじめは授業担当教員が中心になって、生徒が取り組みたくなるようなプロジェクトを準備し、外部企業と連携して成果物をつくっていきます。3年生になると、チーム、個人かからわらず、それぞれの生徒がやりたいことを学校の外の企業や団体、個人の力も借りながら、プロジェクトを行うなどして進めていきます。最終的には3月に行われる発表会でプロジェクトの成果を発表します。教員のサポートはもちろんありますが、学年が上がるにつれ、生徒の決定権が広がっていくようになっています。またプロジェクトを進めていくプロセスの中で、学校内外でさまざまな人と出会い、自分の感情や周囲の人の感情がどのような状態にあるのかを認識して、コントロールできるようにしていくSEL(Social Emotional Learning)の要素も取り入れています。内的な成長と外に働きかける力の双方を育むことを意図しています。
最近では、高校1年生主導で、学校の近隣にあるデザイン会社の株式会社博展とショッピングモールの有明ガーデン(住友不動産系列)とコラボして、お祭りを企画しました。博天とは地域の特色が表れるようなお神輿を共同製作し、それを有明ガーデンでお披露目しました。(下写真参照)夏休みの一日を使って、お祭りを開催し、小学生向けワークショップも企画して実施し、近隣の方にたくさんご来場いただきました。
また学校内の取り組みだけではなく、自ら行動してワークショップを開いたり、他の地域の学校に行って授業をしたり、生徒が自主的に活動している姿も多く見かけます。

株式会社博展と共同制作し、有明ガーデンのお祭りで担がれたお神輿。学校の位置するエリアは開発地域で工事現場が多いことから、クレーンを模したお神輿を制作。
https://toyosu.tokyo/event/ariake-mikoshi-festival-2023/

行動力や巻き込み力のある生徒さんがとても多いですね。もともとそういった力を持っている生徒が多いのか、授業や学校生活を通して伸びていったのでしょうか。

高校の新クラスへ入学する生徒は、カリキュラム内容などを理解しているので、探究的な学びに対する積極的な意識や姿勢がありますが、プレゼンが得意とか、聞く力を持っているかというと、始めからそうではない生徒もいます。また変わりたいと思って入学する生徒も多いです。1年生の前半では、聞く力や自分・他者の感情に自覚的になるワークなどのトレーニングを行います。そのようなトレーニングを積み重ねていくことで、対話のレベルが上がり、自分の言葉で語れる、相手のはなしを聞けるようになっていきます。もちろん指導する側の教員にもそのような力が必要です。我々自身も多様な学びの場を持つようにしています。

2015年からクラス編成の改革や探究学習の取り組みをはじめた理由・背景を教えてください。2015年というと、アクティブラーニングなどのキーワードが言われ始めたころのように思います。

10年前に新クラスをつくるために学校内でチームを作りました。それが現在の体制の核になっています。トレンドを意識したわけではなく、本校の教育として、どのようなことを大事にしていきたいかを考え、少しずつ導入していきました。はじめは新クラスのコンセプトとなる「学び」を中心に据えた授業という趣旨を理解してくれる人は少なかったですが、近年では、保護者からも理解を得られるようになりました。それは生徒たち自身が証明してくれたからだと思います。体験や成長のプロセスを我々教員が説明するのと、彼らが彼らの言葉で語ってくれるのでは説得力がまったく違います。流行りの教育ワードや他の学校の取り組みを気にしすぎず、学校として大事にしていきたいことを考え、試行錯誤しながらやり続けてきた結果だと思います。

進学状況はいかがでしょうか。

新クラスの生徒は一般入試に挑戦する生徒もいますが、総合型選抜で進学する生徒が多いです。また海外の大学に進学する生徒もいます。探究学習外での個人活動などもアピールしながら多様な進路を選択しています。

ありがとうございます。最後に、貴校として今後どのようなことに力を入れていきたいとお考えでしょうか。

今後も生徒個人が望んでいる進路を支援していきたいと思っています。生徒には偏差値の軸だけではなく、何のために、どうして学びたいのか、その学びを活かして何をしたいのかを考え続けて進路選択をして欲しいと思っています。今後は学校側としても多岐にわたる進路選択をサポートできるような体制にしていきたいです。 また進路選択だけではなく、生徒ひとりひとりの想いにどこまで寄り添えるかが一番のチャレンジだと思っています。教員と生徒はもちろん果たすべき責任や役割は違いますが、人間同士としては対等で、お互いを尊重し合う関係だと思います。そのような関係性を体現できる環境づくりをしていきたいと考えています。

株式会社NOLTYプランナーズ