PRINCIPAL INTERVIEW

たくましい女性を育てる女子校での取り組み
取材日 : 2023.09.01
  • 中学校
  • 高等学校
昭和女子大学附属中学校・高等学校 様

校長:真下 峯子 先生

たくましい女性を育てる女子校での取り組み

教育理念として、建学の精神である、「世の光となろう」(Be a Light to the World)、そして、校訓三則である「清き気品」「篤き至誠」「高き識見」を掲げる昭和女子大学附属中学校・高等学校。2023年で、前身となる日本女子高等学院開校から103周年を迎える同校の学校経営方針や近年力を入れている新たな施策などについて、真下校長よりお話を伺いました。

まずは、新しいカリキュラム「SHOWA NEXT」が生まれた経緯についてお聞かせください。

かつての昭和女子大学附属中学校・高等学校(以下、本校)は、附属校である昭和女子大学へ進学させるための学校であった、といっても過言ではありませんでした。
しかし、2016年度より開始した「SHOWA NEXT」では、①他大学への進学者を増やすこと、そして、②進学指導体制の整備により、他の大学への進学に主眼を置くこととなります。
そこで、「SHOWA NEXT」では以前から力を入れていたグローバル教育をさらに進化させ、1年間の海外留学を必修にした「グローバル留学コース」を開設しました。続く、2018年度からは、理数系に進みたい生徒のために「スーパーサイエンスコース」を開設することとなりました。

どのような背景から、新たなカリキュラムの実施に至ったのでしょうか。

本校の校訓三則である、「清き気品」「篤き至誠」「高き識見」にもあるように、元来、本校には「レベルが高く、教養があり、なおかつ、力のある人になりましょう」という建学の精神が根底にあります。開校当時から、ある意味においては、「良妻賢母」というよりは、「たくましい女性」を育てるために作られた学校であったともいえるでしょう。
そうした、原点に立ち返りつつも、時代の要請に合わせて生徒たちを教育していくことこそが、本校の使命です。
ジェンダーギャップやアンコンシャスバイアスから解放され、女性が能力を発揮して生きられる世の中とならなければ、これからの社会はうまく回っていきません。また、Society 5.0 の世界で新しく誕生する、労働市場への参画意欲や女性特有の貢献意欲といった観点からも、女子中高生の存在意義は、今後も高まっていくと考えられます。

「時代の要請」としては、具体的にはどのようなことを意識されているのでしょうか。

昨今、少子化や労働人口減少などにより、女子生徒にとっては追い風が吹いている状況にあります。女性が能力を発揮して生きられる社会。さらに、前述した、労働人口の減少による経済活動の後退を女性の労働が支え、理系分野においても、女性の労働市場への切込みなどが想定されます。
彼女たちが活躍できるステージは用意されつつある中においても、当人である女子生徒たちが、自分自身に“リミッター”をかけているのではないかと感じる場面も多くあります。
すでに、多くの女子学生の活躍の場が広がっているにも関わらず、「私なんて、あそこに登る人じゃない……」といったように、女子生徒自身が無意識に思い込んでしまっているところを、「自ら、意思決定の場に立っていいのだ」と実感すべきなのです。だからこそ、私は、「忖度して、本当に大切なところを諦めてしまわないように」、といった話は、始業式や終業式などで生徒たちに発信しています。
そして、何かを良くするためにも、自分の考えや経験からアイディアを提起して、いろいろなことに挑戦してもらいたいですね。本校の制服のスカーフの色である「アンビシャスブルー」が、そうした「正しく力強き女性が研きあう」という意思を象徴しています。
「文系自任」と「理系自任」についても申し上げておきたいことがあります。あまり早い段階から、生徒自身に進路として、文系と理系の2択を迫るのは、ある意味で酷なことではないでしょうか。文系自任の生徒が、理系を学習してはいけないわけではありませんし、その逆もしかりです。文系と理系、両方の力を育むことで、これからの生徒個々人の可能性や社会での役割が大きく広がると考えています。

ありがとうございました。ここからは、貴校での直近の活動についてお聞かせください。

そうですね。生徒発案の面白い活動ですと、文化祭のクラス企画で実施した自作のジェットコースターが挙げられます。自作に際しては、「危ないからダメ!」という教師たちに対し、生徒たちが説得するところから始まります。
ダメだと言われたからやめるのではなく、「なぜ、ジェットコースターを作る必要があるのか」「危険性をいかに回避するか」など、説得を通して状況を打破することにより、生徒自身のやりたいことを実現させるための論理性やコミュニケーション能力が培われていきます。
説得の次は、世田谷学園中学校・高等学校から指導を受けて、模型の作成、ジェットコースターの強度設計、レールのコーナリングなど、さまざまなノウハウを学び、実際にジェットコースターを自作しました。文化祭でも大盛況でした。
ジェットコースター以外にも、生成AIは使いこなさなければならない時代を見越して、NPO法人の協力のもと、プロンプトエンジニアリングの体験授業なども行っています。

ありがとうございます。ちなみに、「SHOWA NEXT」導入後の進路実績についてはどのような状況でしょうか。

国公立大学難関他大学への進学希望者への意欲の持続、学力の伸長ができる体制が整ってきました。進路実績については下記のとおりです(図)。

【図】2023年3月25日時点の合格実績
出典:昭和女子大学附属女子中学校・高等学校

学力伸長のため、いくつかの施策を実施しています。昭和女子大学との連携強化としては、「五修制度」により、中高6年次に大学の授業が受けられることや、科目履修として、中高授業終了後の放課後に、大学が認める講座を受講・単位認定が受けられる制度があります。
また、本校と隣接するブリティッシュ・スクール・イン・東京とのコラボレーションの拡大(校内選抜による留学制度など)のほか、テンプル大学の日本分校や他大学との連携も積極的に強化し、「昭和女子大学以外の大学へチャレンジしたい」と考えている生徒の希望を実現していくことに注力しています。現在、内部進学が35%、他大学へ進学する生徒は65%です。
生徒には多様な進路希望があるので、本校が対応していくためには総合選抜型から一般入試、さらには海外の大学までを視野に入れた全方位的な対応に加え、生徒たちに寄り添い、学習相談、進路相談、指導ができる、優秀な進学アドバイザーを充実させる必要があります。

ありがとうございました。最後に、これまで共学や別学で教鞭をとられてきた真下先生のご経験を踏まえて、読者へメッセージをお願いします。

共学の学校の良いところもたくさんありますが、これまでの経験から、女子生徒たちを元気にするには、どちらかといえば、別学が向いているのではないかと、個人的には考えています。
やはり、「女の子だからできない」という社会から植え付けられた偏見を開放し、何でも挑戦してみようと生徒たちに思ってもらうことが一番ですから。
冒頭でも少しお話しましたが、女子教育では、言われたことだけではなく、自分がやりたいことを実現できる力を持った「たくましい女性」を育てることが大事だと思います。
本校では引き続き、創設者が目指し、その理念が現代でも生きている女子中学校・高等学校での教育を通して、これからの社会を生き抜く「たくましい女性」を育てていくことを目指していく所存です。

株式会社NOLTYプランナーズ