The Teacher's Learning

筒井賢司先生(さいたま市立浦和南高等学校 教頭)が語る、ICT改革のリアル─「怒らない改革」と教育の未来図
取材日 : 2025.07.28
さいたま市立浦和南高等学校 教頭

筒井賢司 先生

筒井賢司先生(さいたま市立浦和南高等学校 教頭)が語る、ICT改革のリアル─「怒らない改革」と教育の未来図

記事の読みどころ
筒井先生は、埼玉県およびさいたま市の教育現場を38年にわたって支えてきたベテラン教員。大宮北高校でのICTモデル構築をはじめ、市立高校におけるICT化の牽引役として活躍されてきました。この記事では、Society5.0を見据えた教育観、ICT導入における世代間の橋渡し、そして「怒らない改革」を貫いたリーダーとしての信念に迫ります。

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みなさん、こんにちは!

現場の先生方の実践を紹介する連載「プロジェクトE」。
第8回は、さいたま市立浦和南高等学校 教頭の筒井賢司先生にお話を伺いました。

筒井賢司先生のプロフィール

さいたま市立浦和南高等学校 教頭。国語科教員として埼玉県立高校・市立高校を経て教員歴38年。大宮西高校時代にICT化の先進モデルである市立4高校ネットワークを構築。その後大宮北高校に転勤、当時の校長(細田眞由美氏、後さいたま市教育長)とともに、全国トップクラスのICT化先進モデルを、さいたま市立4高校で展開し、現在は浦和南高校で管理職として校務・授業改善に従事。

危機感が原点──ICT改革に踏み出した理由

「このままでは、日本の教育は世界から取り残されてしまう」

筒井先生がICT導入に本格的に取り組むきっかけは、強い危機感からでした。ICT教育を受けてこなかった世代として、従来型教育に固執する風土に違和感を抱き、「不易」と「流行」のバランスの悪さに問題意識を持ち続けていたといいます。

大宮西高校では、教員主体の校務支援システムを単独で構築。学習系と校務系を統合し、授業と業務のシームレスな連携を実現しました。その後、さいたま市立4高校全てと連携したネットワークシステムに拡大、異動した大宮北高校では理数科を対象としたシステムを追加。さいたま市教育委員会と連携し、生徒用端末を含めたさいたま市立4高校(うち1校は現在中等教育学校)全体を対象とした、先進的なICTネットワークを広げていきました。

BYAD導入の工夫──誰一人取り残さないために

「ICTは特別なことではない。誰もが同じスタートラインに立てるように整備するのが管理職の仕事」

筒井先生が導入したのはBYAD(Bring Your Assigned Device)。LTE対応の端末を全生徒に割り当て、Wi-Fi環境がない家庭にも配慮した構成です。KDDIや内田洋行と協力し、予備端末も各校に常備。ビジネスモデルも含めて“制度としてのICT”を設計しました。

先生は、「ICTを導入することが“怒られる理由”になってはいけない」と語り、年配教員への配慮を特に重視。「怒らない・否定しない・プライドを守る」姿勢を徹底し、共創の場をつくっていきました。

参考:■ BYADとは

BYAD(Bring Your Assigned Device)は、生徒が学校から割り当てられた端末を日常的に活用し、学習に取り組む教育環境を指します。端末は学校側が用意・管理するため、誰もが同一条件でICTを活用できるのが特徴

授業と校務の進化──ICTでつながる社会と学校

コロナ禍では、さいたま市立の高校の授業が止まらなかったことが全国で話題になりました。これは、ICTを校務改善の延長として無理なく導入していた成果だといいます。

「昔の授業とは明らかに変わった。生徒たちは、社会とつながる学びを体験している」

クラウドとの連携により、学習ログの可視化や柔軟な授業設計が可能に。生徒一人ひとりの個性を生かす学びに近づいています。

怒らない改革──共感と伴走のリーダーシップ

「先生たちは命令されることに慣れていない。だから怒っても意味がない」

ICT導入で避けて通れない世代間ギャップ。そこで筒井先生が実践したのは、徹底した“共感型リーダーシップ”でした。

年配教員のプライドを大切にし、「まずはアナログの置き換えでいい」とハードルを下げて伴走。若手とベテランが世代を超えて共に学ぶ文化を醸成しました。

これからの挑戦──AI時代の教育をどうつくるか

現在、校務効率化とともにAIの活用にも取り組み始めています。

「AIは便利。でも、学校教育の根幹に関わるからこそ、ぶれない軸が必要」

教育現場にAIを導入するうえで必要なのは、「使いこなす側」の哲学。筒井先生は「便利だから使うのではなく、何を育てたいかを問い直すことが大事」と語ります。

他校の先生へ──変化を恐れず、挑戦を面白がってほしい

「学校は“不易”に寄りがち。でも、“流行”を恐れず、まずはやってみてほしい」

長年、変化に臆病な教育現場と向き合ってきたからこそ、先生の言葉には重みがあります。「やってみてうまくいかなくてもいい。変化を面白がる気持ちが、教育の未来をひらく」と語ります。前任の大宮北高校ではICTにとどまらず、制服の在り方にもメスを入れました。令和4年度から、ユニクロのアイテムを活用した制服を導入。

「制服」という、社会において固定化された価値観を問い直し、生徒本位の視点で再構築した結果です。当然、多くの障害が次々と現れましたが、それでも「生徒や保護者のためになるはず」という姿勢を貫いたといいます。

男女問わず、指定アイテムの中から自由に組み合わせられる設計とし、結果的に制服購入費用も従来の1/3〜1/4に抑えられました〔※1〕。

※1:ユニクロ制服導入で「購入費上がった!?」その理由 さいたま市立大宮北高校の新たな取り組み | AERA DIGITAL | 東洋経済オンライン

https://toyokeizai.net/articles/-/621801

取材あとがき

「怒らないリーダー」「ICT改革の旗手」──それらの表現を超えて、筒井先生には「ぶれない信念」と「しなやかな柔軟さ」がありました。38年の教員人生をかけて「教育を社会とつなぐ」挑戦を続ける姿勢に、心から敬意を表したいと思います。

株式会社NOLTYプランナーズ