The Teacher's Learning

静岡サレジオ高等学校・山田邦彦先生が描く“地域とともに育つ教育” の新しいかたち
取材日 : 2025.06.20
静岡サレジオ中学・高等学校 数学科 教諭

山田邦彦 先生

静岡サレジオ高等学校・山田邦彦先生が描く“地域とともに育つ教育” の新しいかたち

記事の読みどころ(サマリー)
本記事では、静岡サレジオ高等学校の数学教員・山田邦彦先生が創設時から担当・牽引する「草薙フューチャーセンター」にフォーカスします。学校と地域、生徒と社会、若手教員と実践――それらをつなぎながら、新しい学びの場を創り出す山田先生の取り組みと思想を丁寧に取材しました。
「教育は学校の中だけで完結しない」という信念のもと、探究活動や地域コラボを通じて、教員自身も教育者として成長していくプロセスに迫ります。地域連携の始め方から仕組みづくり、資金調達、教員自身のマインドセットに至るまで、協働に挑戦するすべての先生方へ多くの示唆を届けます。

読み終わるまでの目安時間:7分

みなさん、こんにちは!

現場の先生方の実践を紹介する連載「プロジェクトE」。第6回は、静岡サレジオ中学・高等学校山田邦彦先生にお話を伺いました。

山田邦彦先生のプロフィール

静岡サレジオ中学・高等学校 数学科教諭。教職歴32年。中高の数学授業に加え、草薙地域と連携した「フューチャーセンター」を創設時から担当・運営を担う。市民講座講師、外国ルーツの子ども支援、ボランティア活動にも積極的。趣味は料理、ホットヨガ、海外旅行。数学オリガミのワークショップをライフワークとしている。

草薙フューチャーセンターとは?

https://note.com/bourbaki9215/n/nda08b313a8ab

草薙フューチャーセンターは、2016年初代リーダーを務めた一人の生徒の発案から始まりました。当時草薙地域の朝活(初稿通り)に参加していた山田先生が顧問となり、サレジオメソッドの一つとしてスタートしました。

「地域の人が大人同士で毎週朝、語り合っている場に、生徒や教員も自然に混ざっていけたら、それ自体が教育になると思った」と山田先生は語ります。「サレジオの高校生も地域のお祭りに参加したらどうか」という住民からの声かけをきっかけに、発案者の生徒とその友人達が中心となって、地域の方々も来校し共にまちづくりに参画し、当初は山田先生と同僚の音楽教員の2名でサポート。その後、学校と地域を結ぶ地域連携の拠点として確立しました。

山田先生は「教育は学校の中だけで行われるものではなく、社会全体で育まれるべき」と語ります。「大人も地域も一緒に学び合う、“もう一つの学校”があっていい」草薙フューチャーセンターはその信念の具体化であり、地域の人々や企業、大人たちも教育の担い手として関わる仕組みです。この取り組みは子どもたちの教育だけでなく、関わる大人たちにも希望とやりがいをもたらし、学校が持つ「みんなの幸せ」というカトリック的な理念を体現する場となっています。

現在では、草薙地域の自治体・企業・行政と生徒をつなぐ実践の場として、常時80名以上の生徒が参加。地元企業との協働、商品開発、イベント参加など、学びのテーマは“地域のリアル”。「つながる草薙夏フェス・冬フェス」や、地域の子ども会が主催するハロウィンイベントでは、生徒が仮装してお菓子を配るなど、なくてはならない存在になっています。

活動は年々拡大し、生徒の「やってみたい」という声を起点に、プロジェクションマッピング、フードロスに着目した弁当、環境問題に取り組む企画などが次々に誕生。草薙フューチャーセンターを目当てに入学を決める生徒も現れています。

教員が得られるメリット5選

  • 1. 教室の枠を超える発想力が身につく
  • 2. 協働・ファシリテーション力が鍛えられる
  • 3. 教育者としての自信と誇りが高まる
  • 4. 若手教員・若手社会人との共創(越境学習)
  • 5. 学び続ける教師のロールモデルに

山田先生は、自身が地域行事や行政イベントに積極的に関わることで築いた信頼関係を生徒へと還元。その姿勢が、活動の継続性と広がりを支えています。

また、静岡鉄道との協働では、若手社員と高等学校生が一緒にプロジェクトを進めることで、世代を超えた「学び合いの場」となっています。

これは、教員にとっても多様な視点から教育を再構築する貴重な機会となっています。

活動実例と成長エピソード

  • お弁当プロジェクト:廃棄ネギを活用した商品開発。企画・プレゼン・販売まで一貫して生徒が挑戦。
  • Jリーグ連携:2021年、エスパルスとの活動で「シャレン!アウォーズ パブリック賞」を受賞。
  • PULCLE事業:静岡市のシェアサイクル普及プロジェクトに参画。
  • 地域イベント:草薙商店街の夏フェス・冬フェス、子ども会主催のハロウィンイベントのボランティア
  • 若手社員研修の場:企業の新人研修としても活用されている事例がある。

教育活動の資金調達と持続可能性

草薙フューチャーセンターは、地域の信頼に支えられながらも、資金調達の仕組みづくりにも着手。

企業からの協賛、行政との受託事業、CSR活動資金、ロータリークラブからの支援など、安定的な運営と成長のために多様な方法が検討・活用されています。教員のパラレルキャリアとしての新規事業開発など、新たな試みも模索されており、「教育と経済」の持続可能な両立を見据えた挑戦が続いています。

教育の種を見つける

山田先生は、「地域には教育の種がある」と繰り返し語ります。「地域に転がっている“教育の種”を、どうやって自分の授業や学校の中に取り込むか。それを考えるのが楽しいんです」自分の“好き”や“理想の教育像”を軸に、地域の中にある多様な問いを拾い上げ、学校現場に持ち帰って実践することが教師の役割。

生徒と一緒に探究する喜びは、教員自身にとってもかけがえのない学びとなります。

取材あとがき

「教育は学校の中だけで完結しない」。その信念のもと、山田先生は学校の外に出て、地域と交わり、教育の枠を超えた実践を続けてきました。「“面白そう”から始めることが、教育を続ける原動力になる」

フューチャーセンターは、生徒にも教員にも、そして社会全体にも“学びの可能性”を開く場。学校、地域、企業が対等に向き合い、協働できる未来の教育の一形態として、その歩みに私たちは深く共感しました。

株式会社NOLTYプランナーズ