第1回 私の「なりたい職業」の結末
みなさん、こんにちは。
今回からコラムを任せていただくことになりました。
今回限りというわけではなくて、隔週で来年6月くらいまでなので、全部で約14回あります。
テーマはゆるくてよいとのことで、徒然な感じになると思います。ですので、取り上げて欲しいことなどリクエストも大歓迎です。
皆様は、「なりたい職業」に就いているでしょうか。
動物園の飼育係、ドッグトレーナー、ピアニスト、バスケットボールプレーヤー、洋裁、輪島塗職人、キャビンアテンダント、通訳、僧侶、心理カウンセラー、言語聴覚士、アロマテラピスト。
これらは、私が小学生の頃から大学院時代までの記憶に刻まれている、歴代「なりたい職業」の変遷です。ところどころ、なんだこりゃ?というものもありますし、熱意の継続期間に濃淡もありますが、その時その時「絶対やりたい!」と研鑽を積んだり、調べ続けたりしていました。そして、結果として、これらのどれにもなっていません。これらについては、飽きたり、諦めたりを繰り返して今に至るわけですが、でも、今はこの職で良かったと思っています。
自分自身の「なりたい職業の変遷」をあらためてたどり、現在の大学教授になったという顛末を考えると、頭に思い浮かぶのは、クランボルツの計画的偶発性理論(Planned Happentance Theory)です。これはクランボルツという人が提唱したキャリア理論の一つで、次の3つがこの理論の重要なポイントです。
- 1. 人生のターニングポイントは予想していない出来事に左右される
- 2. 偶然の出来事が起きたとき、行動や努力で新たな人生の展開が拓ける
- 3. 何か起きるのを待つのではなく、意図的に行動することでチャンスが増える
私の場合で言うと、今の専門領域の大学教授になるきっかけは、家族の渡米でした。
ちょうど心理統計学を専門とした博士の学位を取って間もないタイミングでした。単なる帯同家族ではなく、せっかくならばと「アメリカの大学での研究員」ポストに就くため、複数の大学の学部長宛にメールを出して、私を採用してくれる研究室を見つけました。この研究員時代の経験が現在の仕事につながっています。しかしながら、今の専門は当時の専門ではなく、アメリカで偶然体験した大学院教育がきっかけで、「高等教育開発」という専門領域に変わりました。
このようにチャンスを「待つ」のではなく「起こす」、そして、活かすためには、クランボルツ理論では次のような行動特性が重要であると説いています。
- 1好奇心 なに?なんで?
- 2持続性 投げ出さない
- 3楽観性 なんとかなるさ
- 4柔軟性 別の道は?
- 5冒険心 やってみよう
私の場合は、こんな感じです。
- 1好奇心 アメリカの大学院の授業科目を色々と受ける
- 2持続性 英語でのコミュニケーションが全然完璧でないが、とにかく授業にでる
- 3楽観性 なんとかなるさの精神
- 4柔軟性 統計学ではない部分に興味を惹かれて、研究領域の変更を決意する
- 5冒険心 知らない先生にアポイントをとって、指導を申し込む
これらの行動特性は、では、いつ培われてきたか、というと、やっぱり冒頭の「なりたい職業」が次々変わっていった頃です。つまり、小学生や中学生、高校生の頃であり、家庭や学校の日々の生活において「そのときどきで取り組んだ」ことの蓄積において、こうした姿勢が育まれたと思います。ここで重要なのは、「真剣に取り組んだかどうか」です。たとえば、学校でいえば、日々の授業はもちろんのこと、部活動や文化祭などに真剣に取り組んだかどうか。この意味においても、学校という場の重要性をあらためて感じます。
参考書籍
J・D・クランボルツ, A・S・レヴィン (著), 花田 光世他 (翻訳)(2005)その幸運は偶然ではないんです!――夢の仕事をつかむ心の練習問題、ダイヤモンド社
Krumboltz, J. D. (2009). The happenstance learning theory. Journal of career assessment, 17(2), 135-154.


