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NOLTYスコラ プログラムの導入事例

NOLTYスコラ プログラム

導入校の事例をご紹介します。

生き方教育につながる、手帳を使ったキャリア教育。
取材日 : 2019.08.13
  • 高等学校
沖縄県立八重山商工高等学校 様

生き方教育につながる、手帳を使ったキャリア教育。

進路指導部が中心となって行うキャリア教育の一環として、1、2年生には『スコラ ライト』、3年生には『スコラ』を採用して約1年の沖縄県八重山商工高等学校。卒業後は、全校生徒の約6割が就職する中、生徒たちの自立を促し、社会で生きる力をはぐくむために手帳を活用しています。その具体的な取り組みについて、進路指導部の伊集満枝先生、前泊究治先生、新垣綾乃先生の3人にお話を伺いました。

プロフィール
日本最南端、および最西端にある八重山商工高等学校。商業科と工業科を併設し、「友愛津梁」を校訓として国際感覚にあふれた「世界を結ぶ架橋となる人材」の育成を目指す。学校教育のあらゆる場面で「文武両道」を実践するとともに、「キャリア教育の充実」などにも力を入れる。
都道府県 沖縄県

子どもたちの現状を変える手段としての手帳

『スコラ』を採用する前は、どのようなキャリア教育を行っていたのですか?

(伊集満枝先生)
本校が「キャリア教育」に本格的に取り組み始めたのは3年ほど前。それまでは、キャリア教育はインターンシップをやればよいという認識にすぎませんでした。以前は「キャリア教育=就職教育」という考え方がメインでしたが、最近は「生き方教育」へと舵を切るようになっています。そういった世の中の変化と時期を同じくして、本校でも生徒たちのキャリア教育に別の角度から取り組む必要があると実感するようになったんです。

(前泊究治先生)
その頃、私たちが一番気にしていたのは、生徒たちが目的や目標がないまま、なんとなく学校生活を送っているということでした。そのような気持ちのまま卒業し、進学や就職をするのですが、結局、定着せずにすぐ辞めてしまうというケースが少なくないのです。そういう状況をなんとかしたいと感じていましたね。

(伊集満枝先生)
本校ではそれ以前、進路学習がまったくなされていなかったのも、要因のひとつでした。普通校であれば、たいてい1年生から卒業後を見据えた進路学習を指導するのですが、そういう機会がなかったんです。しかしながら、卒業後の出口が決まればよいということではなく、生徒たちが卒業後も自立して生きていけるように学校は育てていく必要があります。その最もよい教材が、キャリア教育。キャリア教育を充実させることで、生徒たちの意識改革を実現できればと。

前任の校長先生が『スコラ』に興味を持って導入を決めたとのことですが。

(伊集満枝先生)
はい。上のような問題意識を抱えていた頃、前任の校長が『スコラ』について書かれた新聞記事を目にしたのがきっかけですね。「手帳の導入を考えてみてほしい」という話が進路指導部にあり、具体的な検討が始まりました。「子どもたちが抱える問題を解決し、現状を変えてあげたい」という思いが前校長にはあったんだと思います。これが平成23年春のことです。

どのような活用をしようと考えていたんですか?

進路指導部では「手帳を導入する」というミッションを受けて、さっそく『スコラ』のサンプルを取り寄せました。このように、まずは「手帳ありき」でスタートしたプロジェクトですが、どう使うべきか考えたときに浮かんだのが、新しいキャリア教育に活かすという道でした。具体的にどのようにキャリア教育に活かせばよいのか、ブレインストーミングを重ねた結果、子どもたちを「自立させる」ために一番役立つツールが手帳だと分析したんです。 そこで、まずはお試しに平成25年度から本校がオリジナルで作成した手帳を使い、生徒たちに使わせてみることにしました。1年間の試用期間を経て、今年度から全校生徒に『スコラ ライト』と『スコラ』を導入しています。

週1回、10分間の朝活を中心に、徹底的に手帳を使い活用する

手帳がキャリア教育に最適だと考えた理由とは?

(伊集満枝先生)
進路指導部としては、講演会などの行事をおこなっても、それが単発のイベントとして終わってしまっているという問題点がありました。次の行事と関連づけられるわけでなく、あくまでもそれで終了。ひとつひとつが単独で、積み重ねがないんです。キャリア教育は、やはり毎日の積み重ねの中で蓄積していくもの。特に子どもの教育では、毎日の訓練が非常に大切になってきます。そう考えたときに、毎日向き合うことができる手帳が非常に有効な手段だと思い至りました。

生徒たちにもそのようなことを伝えていらっしゃったんですか?

日頃から、生徒たちには「毎日が大事、今が大事」ということをよく話しています。日々の振り返りと、先の見通しを立てることの繰り返しが、少しずつ形を作っていくもの。もちろん、単発のイベントのようなものもそれはそれで大切です。手帳は、ハレ(イベント)とケ(日々の積み重ね)を繋ぐような存在かもしれませんね。

導入当初の生徒たちの反応はどうでしたか?

(新垣綾乃先生)
ちょうど私が赴任したのが、手帳の取り組みを始めたときでした。「書く」ということすら慣れていない子どもたちも多いので、うまくいくのかな?という気持ちはありましたね。

その反応はだんだん変わっていったんでしょうか?

はい、実際に始めてみると、もともと書く事が好きな女子生徒たちは「どう書いたらいいの?」と聞きにきたり、「こんなふうに書いたよ」と見せに来たりしてくれるようになったんです。
反対に男子生徒はなかなか書いたり、持ち歩いたりというのが苦手で……。それでも、やっていくうちに少しずつ手帳を使えるようになって「手帳を書くようになって忘れ物が減った」とか「自分のやったことを振り返るようになった」という声を聞くようになりました。そういう生徒たちを見ていると、思った以上に定着しつつあるな、というのが率直な感想です。

具体的には、どのような取り組みを行っていますか?

(前泊究治先生)
毎週金曜日、朝10分間の「朝学」と呼んでいるキャリア学習をスタートさせました。

(伊集満枝先生)
最初の1学期はこの朝学の時間を使って、とにかく手帳に書かせることを目標にしました。例えば中間試験の日程が出たら、それを手帳に書かせる。次に試験1週間前になったら学習の予定を書かせる。あとは、1年間の目標をなんでもいいから手帳の最初のページに書いてみるなど、毎週、毎週、手帳を開いて何かを書くことを徹底的に行いました。

(前泊究治先生)
手帳に書くことに慣れるのが1学期の目標だとしたら、 手帳を活用するのが2学期の目標です。自分のキャリアプランに向き合ったり、それまでの活動を振り返るような質問を書いたプリントを配布して、そこに自分の回答を記入します。その回答を踏まえて、今後の目標やそれを実現するためにするべきことを手帳に書き写す、ということを繰り返してやっています。 プリントでは、例えば「あなたの最優先に取り組むべきこと」「1週間を振り返ろう」ということを書かせたりしますね。ほかにも「昨日の7時~9時は何をしていましたか?」「有意義に過ごした時間を手帳のマス目に埋めてみましょう」などという投げかけをすることも。これは、手帳の1日の予定を書くスペースをどんどん埋めて、自分がどのように時間を活用したかがひとめでわかるようにするのが狙いです。『スコラ』の右ページにあるマス目は本来、科目別の勉強時間を書く欄ですが、このようにアレンジした使い方も取り入れています。

(伊集満枝先生)
この「有意義」というのも、自分の将来につながることというのが定義です。将来に役立つような時間だったかどうかが、手帳のマス目を埋める基準。本人がアルバイトをしている時間が有意義だったと思っていてもダメで、資格試験の勉強をしたとか、そういう時間が当てはまります。

手帳の記入状況はどのようにチェックしているのですか?

(伊集満枝先生)
すべての情報を手帳に書くということが大前提です。ですから、朝学でもプリントに記入したことを手帳に書き写しますし、講演会があればその感想も手帳に記入します。授業中に持ち物や小テストの告知なども手帳に書く。そうやって、学校生活のあらゆる情報が手帳に集まるようにしています。

朝以外の手帳の使い方はどのような感じですか?

(伊集満枝先生)
すべての情報を手帳に書くということが大前提です。ですから、朝学でもプリントに記入したことを手帳に書き写しますし、講演会があればその感想も手帳に記入します。授業中に持ち物や小テストの告知なども手帳に書く。そうやって、学校生活のあらゆる情報が手帳に集まるようにしています。

自分が認められたと実感できる、手帳コンテスト入賞

手帳がキャリア形成にどのように役立っていると感じますか?

(伊集満枝先生)
自ら進んで書くということを繰り返すことで、「できる」という自己肯定感が高まっていくと考えています。手帳に向き合うことで、自己肯定感や効力感を感じるようになって、自分で自分を育てられる人間に成長してほしいと思っています。それに自己肯定感・効力感があれば、自己管理能力も自ずと身についてくるはず。それらが学力向上の基盤となって、家庭学習時間もどんどん増えていくというプラスのサイクルが生まれていくんではないでしょうか。

校内で手帳コンテストも実施しているそうですね。

(前泊究治先生)
昨年度は年3回、今年度は2回実施しました。自薦、他薦のどちらでもよく、一番使えていると思うページをコピーして審査。3位までを表彰するというものです。

(伊集満枝先生)
手帳コンテストに入賞する子たちは、わりと大人しい感じの生徒が多いのですが、実際に自分が書いている手帳が表彰されることで、ものすごく自分が認められたと感じるようです。それが手帳へのモチベーションになって、もっとがんばろうという意欲になっています。

(前泊究治先生)
入賞者はそれぞれ工夫を凝らした使い方をしているのですが、私が印象に残っているのは、後ろのフリースペースに自分の成績を折れ線グラフにして記入するというもの。自分の目標とするラインを決めて、上がった、下がったというのがひと目でわかるようになっています。

(伊集満枝先生)
起床時間と就寝時間を毎日つけている子もいました。いつもと時間が違ってくると、生活リズムが崩れていると自覚して修正するそうです。

(新垣綾乃先生)
手帳コンテストの結果や、どんな使い方をしているかという事例は進路だよりに掲載。ほかの生徒も参考にできるようにしています。特に女の子たちは、いいなと思う点をどんどん真似しているようですね。

(伊集満枝先生)
手帳を使うのを途中でやめてしまった子と話す機会があったときのことですが、「やっぱり手帳に書かなきゃダメだと思っている。手帳を使わないと、毎日が流されてしまって、昨日何があったかもわからない」と語っていました。いつの間にか、生徒たちも手帳の意義を実感するほど成長していたようです。

手帳を介した教員と生徒のコミュニケーションはありますか?

(伊集満枝先生)
『スコラ』を自分の手帳としてかなり使いこなしている教員がひとりいるのですが、同じ手帳を使っているということで、面談のときなど会話が盛り上がるようです。「先生はどんなふうに書いているの?」などと、生徒から聞かれたりして、自分の使い方を見せたりもしているみたいですね。

手帳を導入して約2年。最近の生徒たちの様子はいかがですか?

(新垣綾乃先生)
本校では、学年ごとに手帳を活用する目的を設定しています。『スコラ ライト』を使っている1年生は自己理解を深めて自己管理ができる自立力の育成、2年生は課題対応能力。『スコラ』を使っている3年生は、キャリアプランニングの育成が目的です。2年間使っているということもあり、特に3年生はかなり手帳を使いこなせるようになっている生徒もいますね。

(前泊究治先生)
3年生は就職活動のスケジュールを記入したり、就職説明会のときも手帳を持っていってメモをするなど、手帳を使う機会が多いので、それも活用できている理由です。

(新垣綾乃先生)
企業の方に会うときは、必ず手帳を持っていくようにと伝えています。「これ(手帳)を持っているのと、持っていないのでは、印象が全然違うからね」と。

(前泊究治先生)
1年生も入学してすぐに手帳をもらうので、うれしそうに使っていますね。だんだん、そういう新鮮な気持ちがなくなってしまうので(笑)、モチベーションをどうやって維持するかがこれからの課題ですね。まだ本格的に導入して1年目。生き方教育の実践という意味では、結果が出るのはまだまだ先になると思っています。今、手帳を使っている生徒たちが、3年後、4年後にあのとき手帳の使い方を習得したことがよかったな、と思ってもらえるといいですね。

手帳導入校が増えることで、地域全体の学力アップを期待

今後の課題としてはどんなことがありますか?

(新垣綾乃先生)
現時点で一番課題となっているのは、教員の共通理解を深めることです。すべての教員が進路指導部と同じくらいの意識で、手帳を活用した生き方教育に取り組めば、結果はかなり違ってくるはずですから。手帳を使ったキャリア教育は、生徒には随分浸透してきています。次は、教員の意識が変わることで、生徒がもっと変わっていくと思います。

(伊集満枝先生)
教員向けには4月のタイミングでガイダンスを実施しました。なぜ手帳なのかという意味づけ、自作のDVDで手帳の使い方についても解説したほか、各担任から生徒の状況などの意見交換も行いました。こういった教員向けのガイダンスも、定期的にやっていく予定です。

(新垣綾乃先生)
最初は「とにかく手帳を点検してください」と各担任にお願いしたのですが、「プライバシーが…」と戸惑う先生がいたのも事実です。でも、あくまでも教材の一環。見る前提、見せる前提で使うというコンセンサスのうえで、手帳を点検してもらっています。やはり「チェックする」という縛りがなければ、なかなか生徒たちに手帳を書く習慣は身につかないですから。

(伊集満枝先生)
手帳は教員自身がどれくらい普段から使っているかなどで、生徒への指導の仕方に大きく差がでる教材だということも感じています。そういう意味では、同じような指導をするための工夫が今後の課題のひとつです。

手帳によるキャリア教育は、将来、生徒たちの大きな糧になりそうですね。

(伊集満枝先生)
本当にそう思います。社会に出るといろいろな戸惑いに直面しますが、そのときに手帳を使って自己管理ができるというだけでも、大きなアドバンテージになりますよね。手帳を導入する前に卒業した生徒に会うと、「自分たちのときもやってほしかった。進学しても就職しても手帳がないと話にならないが、どうやって書いていいのかがわからない」と言われます。別の卒業生で、在学中に手帳を使っていた子のケースでは、会社で電話をしながらメモをとるのがなかなか上手くできない、と。「学校にいるときに、もっと手帳を使いこなしておけばよかった」と言っていました。

(前泊究治先生)
校内だけでなく、PTAや地域にも手帳の活用で身につく能力について、もっとPRしていきたいと考えています。本校だけでなく、地域で手帳に取り組む学校が増えることで、地域全体の学力が向上するという効果もあるのではないかと期待しています。

株式会社NOLTYプランナーズ