先生の声②
NOLTYスコラ プログラムを導入した経緯
私が赴任した当初、生徒たちは授業、実習、寮生活、部活動、プライベートと波のように押し寄せる様々なことに忙殺されていました。例えば学校で配られたプリントなどを鞄の中にぐしゃっと入れて、半年や一年入れられ続け何の整理もされていなかったり、明日何の授業があるのか先週何をやったのかといった質問に答えられなかったり、とにかくその日暮らしになっていました。その課題から脱却したいというところから手帳の活用が始まりました。
「スコラ」を使う理由
本校の生徒は卒業後、日立グループに就職します。社会に出て働く際に、自ら学び、考え行動しながらPDCAサイクルを回していくことは本当に大切です。その中で記録し、時間を意識し、振り返りをしてPDCAサイクルを学び、問題意識を持つという社会人基礎力に通じる大事な要素をルーティン化して身につけることができる点がスコラのよいところですね。PDCAサイクルも一種の経験学習ですから、生徒たちが意識しなくても自然と発揮できることが理想です。そのために、手帳をベースに活用しながら、日常の生活管理はもちろん、将来の目標管理やキャリア教育も視野に入れ本校独自の視点を加えて実践しています。
主体的に過ごす高校生活のために手帳を使う
今を生きることはもちろん大切ですが、やはり過去を振り返り、未来を目指していく過程の中に「今」があります。だからこそ、平面図形である「今」を、過去・未来含めて立体(空間認識)的に捕らえる能力を身につけるためには手帳が必要だと感じています。手帳を通して一覧でその空間を見ることで認知能力が身につけられると思います。今だけを生きていると場当たり的になってしまい、その結果、ストレスを抱えたり他人に攻撃的になったりします。また、スケジューリング力は段取り力に繋がると考えています。料理をするにしても事前に準備をして、実際に料理をして、後片付けをしてなどと先々を考えながら作業をしますよね。スケジューリング力とは、そのようなことと同じだと思います。そうした取り組みの積み重ねの中で生徒たちは自分の可処分時間(自由に使える時間)を作っていくことができます。自分の生活の中でこの時間が空いている、この時間だったら好きなことをやれるみたいな。生徒たちにはやらされていると感じながらそれに流されるのではなく、自分で可処分時間を作りその中で様々なことを主体的に取り組み、自分の人生の主人公になって欲しいと思っています。
Google Classroom(以下Classroom)を活用したチェック
本校ではClassroomを利用して生徒の手帳を回収し評価やコメントをしています。以前は先生が手帳を回収して、それを全部チェックして生徒に戻していました。それはそれでうまくいっていたのですが、手帳活用が身についた生徒であればあるほど、手帳の存在が大きく、一瞬たりとも手放したくないのに、先生が回収している間は、その間は記録することができず、活用から離れてしまっていました。特に本校の場合、先生によっては終日実習のため、朝のSHRで回収して帰りのSHRで返却といったケースもありました。そこでデジタルを活用することで手帳が生徒の手元に残る運用に変更しました。私の学年では、毎週月曜日の朝にClassroomから手帳の週間ページを課題として写真で提出させています。Classroom内に手帳のトピックを立てておくことで、毎週の記録が蓄積されていきます。生徒は手帳を撮影しアップロード、提出ボタンを押すだけなので提出に手間はかからず、常に手帳を持ち歩けます。先生も画像を見て評価をして必要があればコメントをするだけで済むため、手帳を都度回収して当該箇所を開き手書きでコメントする作業を簡略化できます。
手帳をルーブリックで評価する目的
Classroomの課題には、優・良・可・不可の簡単なルーブリック評価を設定しています。しっかり書かれており他の模範となりうるものが優で10ポイント、しっかりと書かれており整理されているものが良で7ポイント、書かれているが不十分であるものが可で5ポイント、全く書かれていないまたは欠けている部分があるものが不可で0ポイントとしています。手帳で人を評価することは大して大事なことではありません。ただ、ルーブリック評価を行うことでゲーム性が高まり、生徒たちの継続的な手帳活用に繋がるため実施しています。この評価方法の最大の効果は、生徒たちが自分の立ち位置を発見し、自覚してここよりももっと高いところに行きたい、目指したいという意欲的な学びに繋がることです。ですから、ルーブリック評価には難しい言葉ではなく生徒たちも理解できる言葉で明確に提示することがポイントになります。
生徒の伴走者としての時間を大切にする
一番大事なことは生徒が継続して手帳を活用していくことです。しかし、手帳を習慣化させるためにはやはり誰かの伴走がないと厳しいと思います。そのため1週間に1回は回収して評価やコメントをしています。私は先生というものは生徒の隣で一緒に同じ時間を共有することが一番大切な仕事だと思っています。だからこそ、その時間を何よりも先に確保しなければならない。そのためにいわゆる「作業」の時間はなるべく効率化していく必要があります。そして、今やっている先生の仕事の“忙しい部分は一体何か”は棚卸しする必要があるかと思います。そういった意味でClassroomを活用して回収している点は先生の作業の効率化であり、ルーブリックでの評価やコメントは生徒とのコミュニケーションだと思っています。