
フィードフォワードという言葉を耳にしたことがあるものの、フィードバックやコーチングなどとの意味の違いを知っている方は少ないのではないでしょうか。
この記事では、フィードフォワードの意味やメリット・デメリットについて紹介します。また、導入するステップについても解説しました。取り組みを検討している方は、ぜひ参考にしてください。
目次
フィードフォワードとは
フィードフォワードとは、目標達成に向けて改善点をあげたり、アイデアを提案したりして積極的に話し合う取り組みです。結果をもとに助言を与える、受ける関係であるフィードバックの反対と考えるとわかりやすいでしょう。双方が意見を出し合い、話し合うというのが大きな特徴です。
フィードフォワードの取り組み方はさまざまです。上司・部下の関係に限らず、チームのメンバーで行う場合もあります。また、意見交換をする際、対面での打ち合わせだけでなく、チャットやWeb会議を通じた対話など形式にもとらわれないのも特徴です。
フィードフォワードとフィードバックとの違い
フィードフォワードとフィードバックの違いは大きく3つあります。
●時間軸
●関係性
●視点
3つの中で最も大きな違いは、時間軸です。フィードバックは過去の結果について言及するのに対して、フィードフォワードは未来について話します。
また、フィードバックは上司から部下に向けるという関係性がほとんどです。一方でフィードフォワードは、部下から上司に行ったり、役職の上下関係がないメンバー同士で話し合ったりなど、すべてが対象に含まれます。
フィードフォワードとフィードバックは話し合う視点も異なります。フィードフォワードは目的を達成するためにどう改善すべきかという「解決するための手段」を話し合う場合がほとんどです。フィードバックは、過去に起きた「欠点や問題」を扱い、改善する方法は別途考えるケースが多いでしょう。
このように、フィードフォワードとフィードバックという言葉は似ていますが、まったく別の事柄を表します。
フィードフォワードとコーチングの違い
フィードフォワードとコーチングは、似ている部分があります。目的を達成する未来に向けて、改善・解決する手段を話し合う点はほとんど同じです。
一方で、関係性は大きく異なっています。フィードフォワードは「協力」する関係、コーチングはコーチと受け手がいて、指導して「個人で努力する」という違いがあります。
対話の目的・課題発見などのプロセスが異なるため、フィードフォワードは組織で活用されやすく、コーチングは個人に対して効果的です。
フィードフォワードがビジネスで必要とされる背景
フィードフォワードがビジネスで必要とされる理由として、現代社会の変化が激しいという背景があります。自発的に動けるような人材を育成したい企業は取り入れ始めています。前向きに提案できるフィードフォワードはモチベーションアップに有効だからです。
また、日本は少子高齢化が進んでおり、労働人口の減少が社会問題になっています。人材不足になる企業が増える可能性は高いでしょう。そこで、ネガティブに受け止められやすいフィードバックより、ポジティブに未来について提案し合うフィードフォワードのほうが、組織づくりに効果的であると注目を集めています。
フィードフォワードのメリット
フィードフォワードのメリットは以下の3つです。
●良い人間関係を構築しやすい
●批判的な意見だけを言う方が減る
●組織の変革につながりやすい
続けて、それぞれのメリットについて詳しく説明します。
良い人間関係を構築しやすい
フィードバックは、結果に対しての問題点や欠点を挙げるという性質上ネガティブに受け取られやすい傾向があります。一方、フィードフォワードは互いにより良くするための解決方法を話し合う場合が多く、ポジティブな会話が生まれやすいでしょう。
フィードフォワードはネガティブな感情が少なく、組織の目的に対して、ポジティブに意見を言いやすくなる効果があります。そのため、社内で活発的な意見交換を常時行える仕組みが生まれ、良好な人間関係が構築しやすくなります。
批判的な意見だけを言う方が減る
フィードフォワードは、改善や解決策についてポジティブな提案をしていきます。そのため、そもそも批判的な意見が出にくい仕組みです。
さらに、ネガティブな意見が出にくいようにしたい場合は、「反対意見を言う場合は代わる方法を提案する」というようなルールを作るとよいでしょう。
組織の変革につながりやすい
フィードフォワードは、上司や部下または複数のメンバーで協力して進めるため、組織変革を起こしやすいです。意見交換がスムーズになれば、組織全体のあり方にも目を向けやすくなります。組織のために自分がするべきことも明確化になるため、モチベーションアップにもつながるでしょう。
保守的な企業文化を変えたいと考えている組織の上層部の方は、フィードフォワードを取り入れるよう検討してもよいでしょう。
フィードフォワードのデメリット

フィードフォワードにはメリットが多い一方で、デメリットもあります。
●定着するまで時間がかかる
●導入で従業員の理解を得る必要がある
続けて、2点のデメリットについて詳しく説明します。
定着するまで時間がかかる
フィードフォワードのデメリットは、取り入れてから定着するまでは時間がかかることです。人事評価や異動制度のように、一気に変えられません。
また、フィードフォワードには即効性がありません。そのため、一部の部署で試して効果を確認してから導入するのもよいでしょう。
導入で従業員の理解を得る必要がある
新しいやり方を取り入れるのにはストレスがかかるため、拒否反応を示す方もいます。新しい取り組みに対して、常に一定数の消極的な方がいるため、配慮して進めましょう。
フィードフォワードを取り入れたあとに、効果が出るまで継続するのも重要ですが、導入前の説明も丁寧に実施しましょう。
フィードフォワードの導入手順

フィードフォワードの導入手順には以下のような段階があります。
1.説明して理解を得る
2.フィードフォワードを実施
3.実施状況を把握する
4.適切な方法を模索する
フィードフォワードを導入する際は、組織のメンバーに対して丁寧に説明する必要があります。機会を設けて、背景・メリット・実施方法・ルールなどを、公表しましょう。
次に、フィードフォワードを導入します。まず、トライアル的に一部の部署で導入しましょう。その後、実施状況を把握します。
実施した方たちがこれまでの制度と比べてどこが良くて、どこが難しかったかなどのデータを取ります。
データを取ったうえで、改善しつつ、自分たちの組織にふさわしい運用方法を決めましょう。ほかの実績のあるマネジメント手法と併用するのがよいとされています。導入手順はありますが、まずは組織の上層部や企画する方たちが十分にフィードフォワードを理解してから、進めましょう。
未来から逆算して仕事や計画する際にフィードフォワードを活用しよう

フィードフォワードは、フィードバックやコーチングと異なり、話し合ってよりよい提案をしていく取り組みです。
組織の目的やありたい将来像から逆算して行動する際に、役立つツールとなり得ます。導入での説明や定着するまでが長いデメリットもありますが、役職や立場などの関係性を問わず前向きな方法を模索できるメリットがあります。また、硬直している組織を変革しやすくなるのも良い点です。
まだフィードフォワードを取り入れていない組織で活用できそうであれば、ぜひ検討してはいかがでしょうか。