ビジネスにおいて、自分や周囲の観察は欠かせません。自分を観察し、客観的に把握することを「メタ認知」と呼びます。
この記事では、メタ認知とは何か、メタ認知能力が高い人の特徴や、メタ認知能力の鍛え方も紹介します。社員や自分自身の生産性を高めたいと考えている方は、ぜひご覧ください。
目次
メタ認知とは
メタ認知とは、自分の思考や行動などを客観的に把握することです。
そもそも「メタ」とは、「より高次の」という意味の言葉です。
メタ認知について、次の項目に沿って詳しく解説します。
1. メタ認知の重要性
2. ビジネスにおいてメタ認知能力を高めるメリット
3. メタ認知能力を高めるデメリット
1. メタ認知の重要性
メタ認知は、自分の欠点を受け入れたり、自己認識と周囲の認識とすり合わせたりするために重要です。
メタ認知能力が低い人は、自分の欠点を受け入れられず、アドバイスを拒絶してしまう傾向にあります。また、自身を正しく評価できないため、自己認識と周囲の認識にズレが生じることも多いです。
そのため、他人から「自己中心的で扱いにくい」「空気が読めない」と思われ、人付き合いに支障をきたす恐れがあります。
また、自分の欠点を受け入れられず、自己認識と周囲の認識にズレがある状態では、自身を改善するために必要な課題を設定することも難しいです。そのため、何度も同じ失敗を繰り返したり、自身の成長機会を逃したりすることもあります。
2. ビジネスにおいてメタ認知能力を高めるメリット
メタ認知能力を高めることは、ビジネスにおいて活躍できる人材になるためにも有効です。
自分自身を客観的に理解できるようになれば、強みを伸ばし、弱みを改善するための行動を取れるようになります。たとえば、得意な領域の仕事を積極的に引き受ける、苦手な仕事はほかの社員のサポートを受けるなど、成果を出すために必要な行動を選択できるのです。
自分自身で考え、仕事に主体的に取り組めるようになることで、楽しさやモチベーションを感じられるようにもなります。仕事に意欲的に取り組め、さらに成果が出やすくなるという好循環も生まれるでしょう。
3. メタ認知能力を高めるデメリット
メタ認知能力を高めることには、デメリットもあります。最大のデメリットは、常に考え続けている状態となり、頭を使いすぎてしまうことです。
常に何かを考え続けている状態では、疲労感が大きくなります。そのため、メタ認知能力が高い人は、意図的に休む時間を作らなければなりません。
また、考えすぎて行動できなくなってしまうこともあります。考えるのに疲れてしまった時や判断に迷う時には、自分1人で考えるだけでなく、ほかの人に相談してみましょう。
メタ認知能力が高い人の特徴
メタ認知能力が高い人には、次のような特徴があります。それぞれの項目について、詳しく解説します。
●適切な目標を設定できる
●物事の本質を捉えられる
●周囲の人に配慮できる
●感情を爆発させずに対処できる
●柔軟に対応できる
●適切な目標を設定できる
メタ認知能力が高い人は、適切な目標を設定できます。自分の現状や理想を客観的に把握できるため、理想の状態にたどり着くにはどのように行動すればよいかわかるのです。
メタ認知能力が高い人は、課題をクリアするための目標を立てながら、着実に成長できる人と言えます。
●物事の本質を捉えられる
物事の本質を捉えられるのも、メタ認知能力が高い人の特徴です。「なぜこういう結果になったのか」「自分はなぜこのように考えたのか」など、常に物事を深いレベルまで考える癖がついているためです。
仕事の本質を捉えながら働けるため、生産性が高まりやすい傾向にあります。
●周囲の人に配慮できる
メタ認知能力が高い人は、些細なことにも気づきやすく、周囲の人に配慮できます。
自分が周囲からどのように見られているのか認識できるということは、他人が置かれている状況や感情の変化などにも気づきやすいということです。
この特徴を活かすことで、リーダーとして活躍する可能性も期待できます。
●感情を爆発させず冷静に対処できる
メタ認知能力が高い人は、冷静さを保って物事に対処できます。自分の感情を客観的に把握し、外に出すべき感情と出すべきでない感情を考えられるためです。怒りや不機嫌、イライラなどをむやみに表に出すことなく、適切な行動をとれます。
冷静な対処によって、人間関係のトラブルも避けられるでしょう。そのため、メタ認知能力が高い人は、顧客対応業務のような多くの人と関わる仕事にも向いています。
●柔軟に対応できる
メタ認知能力が高い人は、周囲の状況に応じて柔軟に対応できます。自分が何を求められているのかを考えて行動できるためです。通常時はもちろん、トラブルやマニュアルどおりにいかない事態が発生した際も、自分がすべき行動を臨機応変に考えて対処できます。
また、周囲の人がすべきことも考えられるため、的確な指示を出せるのも強みです。
メタ認知力を高めるトレーニング方法
メタ認知能力は、トレーニングで鍛えられます。メタ認知能力を鍛える方法は、以下のとおりです。
●セルフモニタリング
●コーチング
●ライティングセラピー
●日記を書く
個人的に取り組むことはもちろん、社員教育の一環としてこれらのトレーニングを取り入れるのもおすすめです。生産性を高め、成果を創出できる組織づくりに役立ちます。
●セルフモニタリング
セルフモニタリングは、自分を客観的に観察して、自分の欠点や思考の癖、やりがちな失敗などを理解する方法です。
自分がどのような行動をする傾向にあるのか、どのような考え方をするのかなどを知り、自分に対する理解の解像度を高められるのがメリットです。
特に、トラブルが発生した際の振り返りに役立ちます。トラブルの状況や原因を考えるとともに、トラブルへの対処法を評価し、自分がどう行動すればトラブルが起きなかったかも考えましょう。
●コーチング
コーチングは、第三者からアドバイスを受けることで、自分の考え方の偏りに気づく方法です。
メタ認知の習慣がつかないうちは、1人でトレーニングを行うとどうしても主観的になってしまいがちです。コーチングでは、コーチが客観的な視点を与えてくれるため、思い込みに気づけたり、自分について新しい発見ができたりします。
また、コーチングでもらったアドバイスを参考に、日頃から自身を客観的に見るトレーニングを行うことで、メタ認知能力をさらに高められるようになるでしょう。
●ライティングセラピー
ライティングセラピーは、ネガティブな思考や感情を書き出し、客観的に観察できるようにする方法です。10〜20分程度時間を確保し、頭に浮かんだことをすべて書き出しましょう。
自分では大きな問題だと思っていても、書き出してみることで、深刻に捉えすぎていたことに気づける可能性があります。客観視することで、解決策がすぐに思い浮かぶ場合も多いです。
また、辛い気持ちや悲しみを書き出すうちに、自然と気持ちが落ち着くこともあります。 メタ認知能力を高めるだけでなく、不安の解消にも役立つ方法です。
●日記を書く
その日1日の自分を振り返り、手帳に日記をつけるのも有効です。日記が習慣化すると、自分自身を客観的に振り返る時間を自然と確保できます。
日記を書きながら、できたこと、できなかったことを把握しましょう。出来事とともに「どのように感じたか」も一緒に記録しておくと、自分の感情や考えを客観的に把握できるようになります。
さらに一歩進んで、できなかったことに対する改善策を考え、書き加えるのもよいでしょう。
手帳を活用してメタ認知能力を育てよう
メタ認知とは、自分の思考や行動を客観的に把握することです。メタ認知能力が高い人は、適切な目標の設定や周囲への配慮が得意なため、ビジネスでも活躍できるでしょう。社員のメタ認知能力を高めることで、組織全体の生産性の向上にもつながります。
メタ認知能力は、トレーニングで鍛えられます。トレーニングの際には手帳を活用するのがおすすめです。感情を書き出して整理する際に使えるほか、自分の強みや弱みなどを後から振り返りやすくなり、それらを意識して行動できるようになります。予定の管理だけではなく、自身を客観視するためにも手帳を取り入れてみましょう。
この記事を参考に、メタ認知能力を高めるトレーニングを実践してみてはいかがでしょうか。