SDGsに対する取り組みを行うべきだろうと感じつつも、利益に直結しない活動はなかなか難しいと感じている方も多いでしょう。そこで考えたいのがSDGsブランディングです。SDGsブランディングに取り組むことで、企業イメージの向上や他社との差別化が実現します。
この記事では、SDGsブランディングとは何か、SDGsブランディングに取り組む方法やメリットなどを解説します。SDGsブランディングについて詳しく知りたい方は、ぜひご覧ください。
目次
SDGsブランディングとは
SDGsブランディングとは、企業のブランディングの一環として、SDGsに対する取り組みを行うことです。
本来、SDGsは持続可能な社会の発展のためにすべての組織が取り組むべき目標です。企業も組織の1つであるため、積極的な取り組みが求められます。
しかし、SDGsに対する取り組みが必要なことはわかっていても、売上や利益に直接つながらない活動に積極的に取り組むのは難しい、という企業も多いでしょう。取り組むこと自体に無理が生じるのであれば、持続可能とはいえません。
そこで考えたいのが、SDGsブランディングです。SDGsへの取り組みを積極的に発信することで、企業のイメージアップにつながり、ブランディングに役立ちます。消費者からの評価が得られれば、売上につながる可能性も高いです。
せっかくSDGsに取り組むのであれば、同時にSDGsブランディングにも取り組むのがおすすめです。
ただし、「ブランディングのためにSDGsに対する取り組みを行う」という意識が強すぎると、SDGsウォッシュと指摘される可能性があるため注意してください。
SDGsウォッシュとは、表面でSDGsの取り組みをアピールしながら実態が伴わない状態のことです。SDGsウォッシュと指摘されてしまうと、企業イメージが大幅に悪化するリスクがあります。
SDGsウォッシュについては次の記事で詳しく解説しているため、あわせてご覧ください。
コラム「SDGsウォッシュとは?4つの事例と避けるための対策5つを紹介」
SDGsブランディングが注目される背景
SDGsブランディングが注目されているのには、次の2つの背景があります。
1. SDGsに対する注目度の高まり
2. ESG投資が積極的に行われるようになった
それぞれ、詳しく解説します。
1. SDGsに対する注目度の高まり
地球温暖化や格差の拡大といった社会問題が深刻化している現在、国内外問わず、SDGsへの注目が高まっています。社会の構成員である企業にも、SDGsに対して取り組むことが求められているのが現状です。
SDGsに取り組んでいることを積極的に発信すれば、世界中に自社をアピールできます。そのため、大手企業を中心に、SDGsブランディングに取り組む企業が増えています。
2. ESG投資が積極的に行われるようになった
ESG投資が積極的に行われていることも、SDGsブランディングが注目されている理由の1つです。
ESG投資とは、企業が環境問題や労働問題、人権問題、ガバナンス上の問題などに配慮した経営を行っているかを重視して、投資先を決める考え方です。利益だけを追求するのではなく、健全な運営を行っている企業に対して積極的に投資します。
SDGsブランディングに取り組み、社会貢献意識の高い企業だと投資家から認知されれば、ESG投資の投資先として選ばれる可能性が高まります。
SDGsブランディングに取り組むメリット
SDGsブランディングへの取り組みは、企業に次のようなメリットをもたらします。
1. 企業イメージが向上する
2. 同業他社との差別化に役立つ
3. 海外からの評価を得られやすくなる
4. 優秀な人材を採用しやすくなる
それぞれ、詳しく解説します。
1. 企業イメージが向上する
SDGsブランディングによって「社会貢献をしている企業」として認知度を高められれば、企業イメージの向上につながります。
消費者や投資家からの信頼獲得にもつながるため、売上アップや投資金額の増加も見込めるでしょう。認知度が高まりファンが増えれば、売上の安定も見込めるため、企業にとってはメリットが大きいです。
2. 同業他社との差別化に役立つ
SDGsブランディングによって、社会貢献の面で同業他社と差別化でき、消費者に選んでもらえる可能性が高まります。
若い世代、特にZ世代は、社会貢献活動を行っている企業の商品やサービスを選ぶ傾向にあります。
社会貢献活動を行っている旨を積極的にアピールすれば、消費者に選ばれる企業となるため、価格競争を避けられるでしょう。
3. 海外からの評価を得られやすくなる
SDGsブランディングによって、日本だけでなく海外からの評価も得られる可能性があります。
SDGsは、日本だけでなく世界全体で取り組むべき目標です。グローバル展開している企業や海外進出を検討している企業にとって、SDGsの取り組みを発信することは、評価を得るための有効な手段だといえます。
4. 優秀な人材を採用しやすくなる
SDGsブランディングによって、社会貢献意識の高い優秀な人材を採用しやすくなるのもメリットです。
社会に貢献している企業に就職したいと考えている若者は少なくありません。自社の取り組みを積極的に発信し、採用候補者から選ばれる企業を目指しましょう。
また、自社が社会貢献を重視していることを社内にもアピールすることで、社員の愛社精神やモチベーションが高まり、離職率を下げられる可能性もあります。
SDGsブランディングに取り組む方法
SDGsブランディングのための情報発信には、さまざまな方法があります。社外だけでなく、社内に向けた情報発信も欠かせません。ここでは、具体的な方法を3つ紹介します。
1. WebサイトやSNSでの情報発信
2. 統合報告書での情報発信
3. インナーブランディングの実施
1. WebサイトやSNSでの情報発信
WebサイトやSNSを活用すると、自社の取り組みをリアルタイムに発信できます。
Webサイトを活用する場合、取り組み内容を詳細に解説したページを作成すると効果的です。
また、SNSを活用すれば、どのような取り組みを行っているのか、写真や動画などを使ってアプローチできます。拡散力も高いため、これまで自社のことを知らなかった方にも、情報を届けられる可能性があります。
2. 統合報告書での情報発信
投資家向けの情報として、統合報告書に取り組みの内容を掲載するのも効果的です。ESG投資を呼び込みたい場合は、特に有効な情報発信手段となります。
ただし、統合報告書は投資家向けの報告書であるため、消費者に見てもらえる可能性は期待できません。消費者向けに、WebサイトやSNSでの情報発信も行うのがおすすめです。
3. インナーブランディングの実施
インナーブランディングとは、自社の価値観を社員向けに浸透させる活動のことです。
インナーブランディングを行うことで、自社がSDGsへの取り組みを行っていることを社員に理解してもらえます。
また、SDGsへの姿勢や取り組みに対して社員が共通認識を持てるため、SDGsブランディングに反した行動や発言を避けられる可能性があるのもメリットです。
インナーブランディングについては、次の記事で詳しく解説しています。
コラム「インナーブランディングとは?目的や手法・メリット・デメリットを解説」
SDGsブランディングに取り組んでいる企業事例
SDGsブランディングに取り組んでいる企業は数多くあります。その中から、次の3社の事例を紹介します。
●ファーストリテイリング株式会社
●味の素株式会社
●ピープルポート株式会社
ファーストリテイリング株式会社
ユニクロを運営するファーストリテイリング株式会社は、「よい服をつくり、よい服を売ることで、世界をよい方向へ変えていくことができる」を掲げてSDGsに取り組んでいます。
取り組みの内容をWebサイトに掲載することで情報を発信し、SDGsブランディングにつなげているのが特徴です。
さらに、2023年4月には、環境への配慮を訴える拠点となる店舗を前橋市にオープンしました。前橋市の店舗では、次のような取り組みを行っています。
1. 自然光を活かして消費電力を削減
2. 穴・ほつれの修理や刺繍を行うカウンターを設置
3. 着なくなった服をリサイクルして断熱材に採用
自然光を活かすために大きな天窓を作る、断熱材の一部をガラス張りにして来店者から見えるようにするなど、店を訪れた人に取り組みをアピールできるよう、各所に工夫が凝らされています。
味の素株式会社
味の素株式会社は、「食」を通じてSDGsに貢献する取り組みを行っている企業です。取り組みの内容は、WebサイトやSNSで、豊富な写真とともに紹介しています。
Webサイトのトップページでは「商品」や「レシピ」といった項目と同じ大きさで「サステナビリティ」が表示されています。このことからも、味の素株式会社がSDGsへの取り組みの紹介に力を入れていることがわかるでしょう。
また、味の素株式会社が販売している商品には、プラスチック容器をやめて紙パックを採用したものも多いです。プラスチックの削減をアピールするための特設ページも用意し、SDGsブランディングに役立っています。
参考:味の素株式会社「SDGsってなに?味の素社の考えるSDGs」
ピープルポート株式会社
ピープルポート株式会社は、企業で不要になったパソコンを回収し、販売する取り組みを行っています。事業自体がSDGsと深く関連しており、社会貢献活動に積極的な企業であることがわかります。
また、企業で不要になったパソコンをリユース・リサイクルし、その収益を子供たちへの寄付金とする「こども支援プロジェクト」を行っているのも特徴です。企業のトップページでは、プロジェクトについて大々的にアピールしており、はじめてサイトを訪れた方にも取り組み内容が十分に伝わります。
SDGsブランディングで企業イメージを向上
SDGsブランディングとは、SDGsに対する取り組みを積極的に発信することで、自社のブランディングに役立てる考え方です。
SDGsブランディングに取り組むことで、企業イメージが向上し、同業他社との差別化に役立つといったメリットがあります。WebサイトやSNS、統合報告書を使って社外に情報発信を行うのはもちろん、社内に対しても積極的に情報を発信することが大切です。
この記事を参考に、できることからSDGsブランディングを始めてみてはいかがでしょうか。