サーキュラーエコノミーとは、持続可能な形で資源を利用するための方法です。これまで廃棄物と考えられていたものから資源を抽出することで、廃棄物の発生と資源消費を抑制できます。
国際的にも注目されている考え方ですが、実はサーキュラーエコノミーについて詳しいことはよくわからないと感じている方も多いでしょう。
そこでこの記事では、サーキュラーエコノミーとは何か、サーキュラーエコノミーが必要とされる背景や、実際に取り組んでいる企業の事例も紹介します。
サーキュラーエコノミーについて詳しく知りたい方は、ぜひご覧ください。
目次
サーキュラーエコノミーとは
サーキュラーエコノミーとは、これまで廃棄されていたものを資源と考え、循環させる経済システムのことです。消費された製品から資源を抽出し再び製造に利用することで、廃棄物の発生や新たな資源の消費を抑制します。
サーキュラーエコノミーの考え方を取り入れることで、一方通行ではなく持続可能な形で資源を利用できます。資源消費の最小化と廃棄物の発生抑止を目指し、自然への負荷を低減できるのが特徴です。
サーキュラーエコノミーについて、次の4つの観点からさらに詳しく解説します。
1. リニアエコノミーとサーキュラーエコノミー
2. サーキュラーエコノミーの3原則
3. サーキュラーエコノミーと3Rの違い
4. サーキュラーエコノミーとシェアリングエコノミーの違い
1. リニアエコノミーとサーキュラーエコノミー
サーキュラーエコノミーに対して、これまでの大量生産・大量消費のスタイルを「リニアエコノミー」と呼びます。リニアエコノミーを続けていると、将来的に社会や経済が破綻する恐れがあります。
そのため、リニアエコノミーからサーキュラーエコノミーに切り替え、新たな資源の消費を減らす必要があるのです。
2. サーキュラーエコノミーの3原則
国際的にサーキュラーエコノミーを推進している「エレン・マッカーサー財団」は、サーキュラーエコノミーの3原則を以下のように定義しています。
・廃棄物や汚染を生み出さない設計
・製品と素材の循環
・自然の再生
サーキュラーエコノミーにおいては、製品を設計する段階から、できる限り廃棄物を発生させないよう考慮しなければなりません。廃棄物を減らせるよう原料や構造を工夫すれば、より多くの素材が循環可能となります。
素材を循環させることにより、天然資源の消費量を削減できます。より多くの天然資源を保存し、自然環境を再生させることも、サーキュラーエコノミーの原則のひとつです。
3. サーキュラーエコノミーと3Rの違い
サーキュラーエコノミーと似た考え方に「3R」があります。3Rとは、Reduce(リデュース)・Reuse(リユース)・Recycle(リサイクル)の頭文字を取ったものです。
3Rは、使用済みの商品を上手に活用し、廃棄物の発生量を減らすという考え方です。「人が生活するうえで、ある程度の廃棄物は発生するもの」という考え方に基づいています。
一方、サーキュラーエコノミーは、そもそも廃棄物を発生させないことを軸とした仕組み作りです。
また、3Rが主に廃棄物のみに注目した活動であるのに対して、サーキュラーエコノミーでは、商品の設計時点から廃棄物の削減や省資源を考慮します。
3Rの取り組みに加えて、サーキュラーエコノミーにも取り組むことで、より廃棄物の量を減らせます。
4. サーキュラーエコノミーとシェアリングエコノミーの関係
シェアリングエコノミーとは、個人が保有する物や場所などの資産を共有して利用する仕組みのことです。貸し出し側にとっては資産の有効活用、借りる側にとっては所有せず資産を利用できる点がメリットです。
シェアリングエコノミーでは、使用済みの製品から資源を取り出しているわけではありません。しかし、新たに資源を消費せず、さらに廃棄物を出さずに経済的利益を出している点から、サーキュラーエコノミーの一環として扱われます。
サーキュラーエコノミーが必要とされる背景
サーキュラーエコノミーが必要とされるのには、次のような背景があります。
●廃棄物の増加による環境の悪化
●エネルギー消費量の増加による資源不足
●SDGsに対する注目度の上昇
それぞれ、詳しく解説します。
●廃棄物の増加による環境の悪化
近年、大量消費・大量廃棄のスタイルによって廃棄物が大幅に増加しており、地球環境の悪化がすすんでいます。
例えば、廃棄物の焼却時には温室効果ガスが排出されます。温室効果ガスは、地球温暖化や異常気象、大気汚染などさまざまな問題の原因です。
他にも、廃棄物の増加は環境に次のような影響を与えます。
・不法投棄による土壌や地下水源の汚染
・最終処分場の不足
・海洋ゴミによる意味の生態系への悪影響
こうした環境の悪化が大きな問題となっていることから、廃棄物を出さないサーキュラーエコノミーが求められているのです。
●エネルギー消費量の増加による資源不足
現代の産業は、多くが化石燃料に依存しています。しかし、化石燃料は限りある資源です。
今後、新興国の発展によりエネルギー消費量がさらに増加すると予想されています。そのため、化石燃料がいずれ枯渇する可能性が高いです。
また、化石燃料を燃やす際に大量の温室効果ガスが発生するのも問題です。
そのため、サーキュラーエコノミーの考え方を取り入れ、化石燃料の使用量を減らすことが必要です。
●SDGsに対する注目度の上昇
温暖化や環境問題の悪化に伴って、SDGsに対する注目度が高まっているのも背景のひとつです。最近では、社会問題に貢献する企業の商品を選ぶ「エシカル消費」の考え方を取り入れる消費者も増えています。
サーキュラーエコノミーは、SDGsに対する取り組み手段のひとつです。サーキュラーエコノミーへの取り組みによって、消費者や取引先などのステークホルダーから評価を得られる可能性があります。
サーキュラーエコノミーに取り組む企業の事例
ここからは、サーキュラーエコノミーに取り組む企業の事例を3つ紹介します。
●100%サステナブルマテリアル化(株式会社ブリヂストン)
●POOL PROJECT TOKYO(レコテック株式会社)
●Megloo(株式会社カマン)
●100%サステナブルマテリアル化(株式会社ブリヂストン)
株式会社ブリヂストンでは、100%サステナブルマテリアル化を掲げて持続可能な資源の利用に取り組んでいます。
具体的な取り組みの例は次の通りです。
・使用済みタイヤの有効利用
・スタッドレスタイヤのレンタルサービス
・自動車用品の交換サービス
・リサイクル原材料の利用拡大
・使用済タイヤから合成ゴム原料を製造するケミカルリサイクル技術の研究
さらにエレン・マッカーサー財団のプログラムに参加し、サーキュラーエコノミーに関する知見を獲得するとともに、他の企業や政府、研究機関との連携も模索しています。
参考:環境長期目標(2050年以降):100%サステナブルマテリアル化
●POOL PROJECT TOKYO(レコテック株式会社)
レコテック株式会社が展開しているのは、商業施設から発生するプラスチックを回収・リサイクルする事業「POOL PROJECT TOKYO」です。
東京都内の商業施設から回収された廃プラスチックは、リサイクルして再度利用できる原料「POOL樹脂」に生まれ変わります。POOL PROJECT TOKYOでは、POOL樹脂のブランディングやPOOL樹脂を利用した製品の開発も進めています。
今後は回収拠点を全国に拡大するとともに、ベトナムをはじめとしたアジアへの事業展開を視野に入れているとのことです。
参考:プラスチック資源を循環させるPOOL事業を、東京都全域に拡大開始
●Megloo(株式会社カマン)
株式会社カマンが展開するMeglooは、地域共通のテイクアウト容器をシェアして活用できるサービスです。テイクアウト容器は洗って再利用できるため、使い捨て容器の使用量を削減できます。
利用者は、事前に予約して専用のテイクアウト容器に入った商品を受け取ります。食後は、テイクアウト容器をMegloo参加店舗に返却し、洗って再利用されるという仕組みです。
商品を購入した店舗以外でも返却できます。また、容器は通常の使い捨て容器に比べて密閉性が高く、持ち運びにも便利です。
ゴミを削減できるだけでなく、利用者にとっても利便性の高いサービスといえるでしょう。
まずはサーキュラーエコノミーを知ることから始めよう
サーキュラーエコノミーとは、廃棄物を発生させず資源として再利用する考え方です。廃棄物を処理する際に温室効果ガスが排出されることに加え、資源不足が懸念されていることから、注目が高まっています。
多くの企業が、サーキュラーエコノミーへの取り組みを実施しています。これから取り組みを行うのであれば、まずはサーキュラーエコノミーについて知ることから始めてみましょう。