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2023.10.24

マテリアリティとは?企業が発信すべき理由と特定のプロセスを解説

企業の非財務指標のひとつに「マテリアリティ」があります。マテリアリティとは、企業や組織にとっての最重要課題のことです。マテリアリティを発信することで、社会貢献活動に積極的に取り組んでいることをアピールできます。

この記事では、マテリアリティとは何か詳しく解説します。マテリアリティを発信するメリットや特定のプロセス、実際に発信している企業の事例も紹介しているため、ぜひご覧ください。

目次

マテリアリティとは

マテリアリティとは、組織や企業にとっての最重要課題のことです。企業活動を行ううえで何を重要視するかを表すもので、非財務指標のひとつでもあります。

マテリアリティが特定されていると、投資家や株主、消費者といったステークホルダーは、SDGsをはじめとした企業の社会的責任に対する取り組みへの評価を実施しやすくなります。

特にESG投資(※1)を受けて資金調達をしたい企業や、エシカル消費(※2)を心がける消費者から選ばれる企業を目指す場合は、マテリアリティを設定し、積極的に発信するとよいでしょう。

※1 ESG投資:環境・社会・ガバナンスへの取り組みを評価軸とし、投資先を決める手法
※2 エシカル消費:社会や環境への影響を考慮し、購入する商品を決める考え方

企業がマテリアリティを発信すべき理由

企業がマテリアリティを発信すべき理由としては、以下が挙げられます。

1. 社会的な貢献を果たしていることをアピールするため
2. ESG投資の対象として選んでもらえる企業になるため
3. 企業の特徴を知ってもらうため

いくら積極的に社会貢献に取り組んでいたとしても、取り組みをアピールしなければ、消費者に知ってもらうことは難しいです。特に、社会貢献意識が高い消費者が増えている中で、多くの消費者から選ばれるためには、マテリアリティを発信し、アピールすることが大切です。

また、マテリアリティを発信することで、ESG投資の対象として選んでもらえる可能性も高まります。投資家に自社の活動を認知してもらい、投資対象として検討してもらいましょう。

さらに、マテリアリティを発信することで、自社ならではの特徴や強みを、多くの方に理解してもらうことにもつながります。マテリアリティには、各企業の考え方や強みが表れるためです。

マテリアリティを特定するプロセス

マテリアリティの特定は、次のステップで進めましょう。

1. 課題の洗い出し
2. 課題の重要度を評価
3. 課題の優先順位を設定
4. 妥当性の確認


以下では、各プロセスについて解説します。

1. 課題の洗い出し

まずは、社会的な問題に関連する社内外の課題をリストアップします。

課題の洗い出しを行う際には、国際的な報告や法規制、自社が環境にかけている負荷などを参考にしましょう。環境に悪影響を与えると発表された成分を排出していないか、海外では規制がかけられている原料を使用していないかといった観点に注目し、課題を見つけてください。

自社の事業だけでなく、バリューチェーン全体を視野に入れて課題を抽出することも大切です。視野を広げ、多くの課題を見つけましょう。

2. 課題の重要度を評価

次に、前のステップで洗い出した各課題が、自社にとってどの程度重要であるかを評価します。

各課題が、持続可能性に対してどれだけ大きな影響を与えるかを調査しましょう。さらに、ステークホルダーが課題に対してどれだけ関心を持っているかも考慮しながら、自社にとっての重要度を評価します。

ステークホルダーがどのような課題に関心を持っているかを知るためには、アンケートやインタビューの実施が効果的です。一般的な調査結果だけでなく、実際のステークホルダーの声をもとに、課題の重要度を評価しましょう。

3. 課題の優先順位を設定

上記で設定した評価をもとに、課題の優先順位を設定します。優先順位の設定と同時に、外部への情報発信を行う場合もあります。

このとき、どの課題に優先的に取り組むか決めるとともに、どのようなやり方で課題を解決するかも考えておきましょう。社会課題の中には、自社で取り組むのが難しいものもあります。取り組みが決まっていなければ、課題解決に向けて本当に行動できるのか、評価できません。

4. 妥当性の確認

自社が取り組むべき課題の優先順位を決定したら、その妥当性を確認しましょう。妥当性の確認とは、本当に優先的に取り組むべき課題なのか、課題解決のためにコストや労力がかかりすぎないか、などを評価することです。

経営層や取締役会などで妥当性を確認し、承認を受けてマテリアリティの特定は完了です。

ただし、時間が経つにつれて自社や社会の状況は変わります。そのため、一度マテリアリティを特定して終わりにするのではなく、定期的に見直すことが大切です。

マテリアリティを特定・発信している企業事例

マテリアリティを特定・発信している企業には、次のような例があります。以下では、各企業のマテリアリティについて解説します。

●住友商事
●KDDI
●東京ガス

どのようなマテリアリティを設定すべきか迷っている方は、ぜひ参考にしてください。

住友商事

住友商事は、次の6つのマテリアリティを設定している企業です。

・地球環境との共存
・地域と産業の発展への貢献
・快適で心躍る暮らしの基盤づくり
・多様なアクセスの構築
・人材育成とダイバーシティの推進
・ガバナンスの充実

上記のマテリアリティに対する取り組みとして、リユース蓄電池プロジェクトやアジアでの工業団地事業などを行っています。

参考:住友商事「マテリアリティ(重要課題)」

KDDI

KDDIは、次の6つのマテリアリティを設定しています。

・通信を核としたイノベーションの推進
・安心安全で豊かな社会の実現
・カーボンニュートラルの実現
・ガバナンス強化によるグループ経営基盤強化
・人財ファースト企業への変革
・ステークホルダーのエンゲージメント向上

各課題に対して、企業が提供できる価値とサステナビリティ目標が設定されているのも特徴です。

たとえば「通信を核としたイノベーションの推進」の項目では、提供できる価値として「未来社会の創造」を挙げ、「サテライトグロース戦略に基づく事業創造・研究開発プロジェクトの推進」というサステナビリティ目標を掲げています。

参考:KDDI「サステナビリティ経営」

東京ガス

東京ガスは、次の7つのマテリアリティを設定しています。

・脱炭素社会への責任あるトランジション
・地球環境の保全
・エネルギーの安定供給
・安全と防災の徹底・安心なまちづくりへの貢献
・ウェルビーイングなくらしとコミュニティへの貢献
・多様な人材が活躍できる組織の実現
・サプライチェーン全体における人権の尊重

上記のマテリアリティに対する取り組みとして、 CO2の削減やカーボンニュートラルシティに関する地域・自治体連携の推進、女性管理職比率の向上といった、多様な活動を行っています。

参考:東京ガス「東京ガスグループのサステナビリティ」

まずはマテリアリティの特定から始めよう

マテリアリティとは、組織や企業にとっての最重要課題のことです。

マテリアリティが設定されていると、企業がどのようなことを重視し、どのような強みを持っているかがわかりやすくなります。企業がマテリアリティを発信することで、SDGsをはじめとした企業の社会的責任に対する取り組みを、ステークホルダーが評価しやすくなります。

また、社会貢献活動を行っていることをアピールでき、自社の特徴を知ってもらう機会にもなります。この記事を参考に、まずはマテリアリティの特定から始めてみてはいかがでしょうか。

株式会社NOLTYプランナーズ