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2023.10.02

CSVとは?CSRとの違いや取組むポイントとメリットを解説

企業が社会問題の解決に貢献する方法のひとつとして、「CSV」という考え方があります。しかし、CSVとはどのようなものか、何から始めるべきなのか、よくわからないと感じている方も多いでしょう。

この記事では、CSVとは何か、CSRとの違いを含めて詳しく解説します。さらに、CSV経営に取り組むメリットや、取り組む際のポイントも紹介します。CSV経営について詳しく知りたい方や、自社でCSV経営に取り組むためのイメージを掴みたい方は、ぜひご覧ください。

目次

CSVとは

CSVは、Creating Shared Valueの略で、企業が事業を行うこと自体を社会問題の解決策につなげる、という考え方です。2011年に、経営学者のマイケル・ポーター氏によって提唱されました。

社会のニーズや課題に取り組むこと(社会価値)と、事業として利益を創出すること(企業価値)を同時に実現していくのがCSVの特徴です。 企業の営利活動と社会貢献活動を分離して考えることなく、本業、つまり企業としての営利活動によって社会課題が解決できるような仕組みを作り、推進していくという考え方です。

CSVとCSRの違い

CSVと似た概念に、CSRがあります。CSRは、Corporate Social Responsibilityの略で、企業としての責任を果たすために、社会貢献活動に取り組む、という考え方です。

CSVとCSRの大きな違いは、営利活動と社会貢献活動を同一と考えるか否か、にあります。

CSRでは、営利活動と社会貢献を別々のものとして考えるのがポイントです。ボランティア活動をイメージするとわかりやすいでしょう。あくまでも「企業の責任として社会問題に取り組む」のが、CSRの考え方といえます。
CSRは本業にプラスアルファで行っていく形になるため、予算や業績によって制約を受けやすく、持続可能性が低くなってしまいがちです。一方、CSVの考え方では、事業を通して社会貢献を行うため、持続可能性が高くなるという点でも異なってきます。

CSVが注目される背景

CSVが注目される背景として、企業に対して社会貢献が求められていることが挙げられます。

CSVが提唱される以前は、利益追求と社会貢献活動は両立できないものと考えられていました。そのため、社会貢献が重要だと理解はしつつも、利益の獲得にはつながらないため、積極的な取り組みが難しい、と考える企業は少なくありませんでした。

しかし、CSV経営に取り組めば、利益を追求しながら社会貢献ができます。そのため、利益に直結しない活動は難しいと考えていた企業にとっても、取り組みやすいのがポイントです。

多くの企業が持続可能性を保ちながら社会問題に貢献できる方法であるため、CSVへの注目が高まっています。

CSV経営に取り組むメリット

CSV経営に取り組むメリットは、以下の4つです。

1. 社会問題の解決、SDGsに貢献できる
2. 新規事業の創出につながる可能性がある
3. 社内での交流機会が増加する
4. 周囲の企業や組織との交流機会が増加する

それぞれ、詳しく解説します。

1. 社会問題の解決、SDGsに貢献できる

CSV経営の大きなメリットは、事業を通じて収益を得ながら、社会問題の解決に貢献できる点です。

企業は、社会の中で資源を活用しながら経済活動を行っています。企業は社会の一員であり、資源を利用するからには、何らかの形で貢献しなければなりません。

自社の強みや事業そのものを生かしながら、どう社会問題 に貢献していくかを考えることは、企業としての持続可能性を高めることにつながるだけではなく、地球の持続可能性にもつながります。つまりSDGsへも貢献できることになります。

2. 新規事業の創出につながる可能性がある

CSVを考えることで、新たな事業の創出にもつながる可能性があります。
社会問題とは、本来あるべき状態とのギャップです。自社の技術や強味を生かして、まだ手を差し伸べられていないそのギャップを埋める手段が見つかれば、企業にとっては競合のいない市場で事業を行えるチャンスとなります。

3. 社内での交流機会が増加する

CSV経営の取り組みがきっかけで、社内での交流機会が増加するというメリットもあります。

CSV経営は、一部門の取り組みだけでなし得るものではありません。さまざまな部門で協力し、全社的に取り組む必要があります。

そのため、従来は交流する機会がなかった部門同士のコミュニケーションが活発化する可能性が期待できます。

部門同士の交流が増えれば、チームワークの強化につながり、これまでよりスムーズに業務を進められるようになるでしょう。エンゲージメントの向上も期待できます。

4. 周囲の企業や組織との交流機会が増加する

CSV経営によって、社内の部門同士だけでなく、社外との交流機会が増える場合もあります。

CSV経営で取り組む社会問題の中には、規模が大きく、1社だけでは解決できないものも少なくありません。同業他社や近隣の企業などと協力し、問題解決に向けて取り組む必要があります。

他社との交流が活発化すれば、新たな事業のヒントやノウハウが得られるでしょう。取引の拡大や業務提携など、ビジネスチャンスにつながる可能性もあります。

CSV経営を実現するための3つのポイント

CSV経営を実現するポイントとして、マイケル・ポーター氏が提唱したのは次の3点です。

1. 製品や市場を見直す
2. バリューチェーンを改善する
3. 産業クラスターを作る

それぞれ、詳しく見ていきましょう。

1. 製品や市場を見直す

まずは、自社の製品やサービス、市場の見直しを行います。

自社の製品やサービスの中で、社会問題の解決に貢献できるものはないかを考えましょう。既存の製品や自社の強みを活かして取り組める課題があれば、現在の事業を応用して、社会問題の解決に貢献できます。

さらに、社会的なニーズに目を向け、ニーズを満たせる製品やサービスが登場していない市場を探しましょう。そうした市場で事業を展開することで、人々のニーズを満たして社会に貢献しながら、自社も利益を獲得できます。

2. バリューチェーンを改善する

バリューチェーンの改善によって、社会問題の解決に取り組むことも大切です。

バリューチェーンとは、企業が利益を生むために行う一連の活動のことです。具体的には、材料の調達や加工、製造、販売、配送といった工程を指します。

バリューチェーンの各工程を見直し、社会問題解決に貢献できる部分がないか探してみましょう。

例えば、多くのプラスチックを使った梱包を行っているのであれば、梱包を簡素化することで、使用するプラスチックの量を減らせます。環境に配慮した梱包資材を使う、という方法も考えられるでしょう。

3. 産業クラスターを作る

産業クラスターを形成することも、CSV経営においては重要なポイントです。

産業クラスターとは、あるひとつの事業に関わる企業が多く集まる地域のことを指します。IT企業が多く集まるシリコンバレーが代表的な例です。

産業クラスターを作ることで、企業間の連携が強化され、1社だけでは解決できない大きな問題にも取り組みやすくなります。地域資源を活用した事業の開発や、地域の人材育成支援も可能なため、地域経済の発展にも貢献できるでしょう。

CSV経営では長期的な取り組みと連携が必要

CSV経営は、短期的な取り組みだけで実現できるものではありません。長期的な取り組みが必要になることを前提に、CSV経営を始める必要があります。すぐに結果が出ないからといって、取り組みをやめてしまうのでは意味がありません。

また、1社だけで解決できる社会問題は少なく、連携が必要です。ステークホルダーからの理解と協力を得ながら、ほかの企業や研究機関、政府などの組織と連携し、取り組みを進めることが欠かせません。

企業の利益と社会貢献を両立するCSV経営

この記事では、CSV経営について解説しました。

CSV経営とは、事業を通じて社会問題の解決に貢献する、という考え方です。営利活動と社会問題の解決に向けた取り組みを両立できるため、取り組みやすく、より多くの企業が社会に貢献できます。

CSV経営に取り組むことで、新規事業の創出やや交流機会の増加といったメリットも享受できる可能性があります。また、社会問題解決への取り組みが評価されれば、結果として企業イメージやブランド力の向上にもつながり、ステークホルダーや求職者からの信頼も獲得しやすくなるでしょう。
まずは、自社が貢献できる社会問題はないかを考え、CSV経営に取り組んでみましょう。

株式会社NOLTYプランナーズ