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2023.05.26

人権問題とSDGsの関係とは?企業ができる取り組みの例を紹介

人権とは、誰もが持っている人間らしく生きる権利のことです。実は、人権問題とSDGsには深い関係があります。

企業活動の中でも、人権問題が発生する可能性は十分にあります。企業内で発生する人権問題に対処するのも、SDGs達成に向けた取り組みの1つです。

この記事では、人権問題とSDGsの関係や、企業ができる人権問題への取り組みの例を紹介します。人権問題について、企業でどのような取り組みができるのか知りたい方はぜひご覧ください。

目次

SDGsと人権の関係

まずは、SDGsと人権の関係について知っておきましょう。次の2つのポイントに分けて、SDGsと人権の関係を解説します。

1. そもそも人権とは何か
2. 人権と関連するSDGsの目標

1. そもそも人権とは何か

人権とは、人間らしく生きる権利のことです。日本では、憲法で「侵すことのできない永久の権利」として保障されています。人権が重要と考えられているのは、日本だけではありません。国際連合では、すべての人民と国とが達成すべき共通の基準として「世界人権宣言」が採択されています。

世界人権宣言で人権として定められた項目は非常に多くありますが、一例は次の通りです。

・すべての人間は、生れながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利とについて平等である。
・すべて人は、生命、自由及び身体の安全に対する権利を有する。
・すべて人は、各国の境界内において自由に移転及び居住する権利を有する。

出典:外務省「世界人権宣言(仮訳文)」

人権は、特定の誰かに与えられるものでもなければ、義務を果たさなければ得られないものでもありません。生まれた瞬間から、すべての人が持っている権利です。

2. 人権と関連するSDGsの目標

SDGsで掲げられている各目標は、いずれも人間が生きていくのに関わる項目です。また、SDGsに取り組むにあたって「誰一人取り残さない」ことを誓っていることもあり、幅広く見ればすべての目標が人権に関連しているともいえます。

中でも、特に関連が深い項目は次の7つです。

目標1.貧困をなくそう
目標3.すべての人に健康と福祉を
目標4.質の高い教育をみんなに
目標5.ジェンダー平等を実現しよう
目標8.働きがいも経済成長も
目標10.人や国の不平等をなくそう
目標16.平和と公正をすべての人に

また、各目標ごとに定められているターゲットの中にも、人権と関係の深いものが数多くあります。一例を次にご紹介します。

人権と深い関連があるターゲットの例

目標4.5 2030年までに、教育におけるジェンダー格差を無くし、障害者、先住民及び脆弱な立場にある子供など、脆弱層があらゆるレベルの教育や職業訓練に平等にアクセスできるようにする。

目標5.4 公共のサービス、インフラ及び社会保障政策の提供、並びに各国の状況に応じた世帯・家族内における責任分担を通じて、無報酬の育児・介護や家事労働を認識・評価する。

目標8.7 強制労働を根絶し、現代の奴隷制、人身売買を終らせるための緊急かつ効果的な措置の実施、最悪な形態の児童労働の禁止及び撲滅を確保する。2025年までに児童兵士の募集と使用を含むあらゆる形態の児童労働を撲滅する。

出典:農林水産省「SDGs(持続可能な開発目標)17の目標と169のターゲット (外務省仮訳)」

企業活動に関連する人権問題の例とその悪影響

企業活動の中でも、人権に関わる問題が発生する可能性はゼロではありません。日本での企業活動において発生する人権問題の例として、次のようなものが挙げられます。

1. 雇用における差別
2. 各種のハラスメント
3. 長時間労働

人権問題の放置は、企業活動に悪影響を与える場合もあり、各企業が取り組みが必要です。ここでは、企業活動に関連する人権問題の例とその悪影響を詳しく解説します。

1. 雇用における差別

企業活動の中で、従業員の採用は欠かせない活動です。採用活動の中では、さまざまな理由で差別が生じることがあります。差別につながる項目の例は次の通りです。

・人種
・国籍
・宗教
・障がい
・性別
・性的指向
・年齢
・健康状態

厚生労働省は、公正な採用選考を行う必要性を呼びかけています。以下のような事項を訪ねて、採用活動時に把握することは、就職差別につながるおそれがあるため注意が必要です。

・人種や国籍のような本人に責任のない事項
・本来自由であるべき、思想信条にかかわる事項

参考:厚生労働省「公正な採用選考の基本」

採用での差別があると、職場の多様性が失われてしまいます。多様性を尊重する企業では、多様なアイデアが生まれたり、さまざまな顧客のニーズを予測できたりするでしょう。ビジネスの面から考えても、雇用における差別をなくし、多様性のある職場を作ることは重要です。

2. 各種のハラスメント

セクシャルハラスメントやパワーハラスメントなど、各種のハラスメントも大きな問題です。ハラスメントは、職場の環境悪化や従業員のモチベーション低下、離職などにつながるリスクがあります。

ハラスメントへの対策を行うことで、従業員が安心して働ける良い職場環境をキープできます。ストレスを感じずに働ける環境づくりは、生産性の向上にもつながる大切な取り組みです。

3. 長時間労働

業務量が多すぎる場合、長時間労働やサービス残業が発生する可能性があります。長時間労働は健康を害し、過労死につながってしまうこともあり、人間らしい働き方を阻害する問題です。そのため、長時間労働は人権問題の1つとして考えられています。

長時間労働を是正することで、従業員は健康的な状態で働けます。無理せず働ける職場では、生産性の向上や、離職率の低下も期待できます。

人権問題への取り組みとして企業ができること

企業で何も対策を行わない場合、上記のような人権問題が発生する可能性があります。そのため、企業は人権問題に対するさまざまな取り組みを行わなければなりません。人権問題への取り組みとして、企業ができることの例は次の通りです。

1. ポジティブ・アクションを実施する
2. ハラスメント相談窓口を設置する
3. 業務を見直し効率化する

こうした取り組みを行うことで、誰でも働きやすい、良好な職場環境が実現します。SDGsへの取り組みとして外部へアピールすることもでき、企業のイメージアップにもつながるでしょう。

ここでは、人権問題に対して企業ができる具体的な取り組みを3つ紹介します。

1. ポジティブ・アクションを実施する

人権問題に対して企業ができる取り組みの例として、ポジティブ・アクションが挙げられます。ポジティブ・アクションとは、積極的な格差の是正措置のことです。社会の構造によって不利益を被っている方に対して、機会を提供することで格差の是正を目指します。

例えば、管理職における男女の比率をできるだけ1:1に近付けるため、積極的に女性の登用を進めるような取り組みは、ポジティブ・アクションの1つです。

ポジティブ・アクションによって、個人の努力以外の部分で発生している格差を是正できます。また、職場の多様性が確保され、多くの人にとって働きやすい環境を作れます。

2. ハラスメント相談窓口を設置する

ハラスメントの相談窓口を設置することも、人権問題への取り組みの1つです。大企業では、すでに設置が義務化されています。ハラスメント相談窓口を設置することで、迅速に対応し、問題の深刻化を食い止められる可能性が高いです。

ハラスメントを受けた社員は、大きなストレスを抱えます。ストレスがある状態では、能力を十分に発揮できません。ストレスから、退職してしまうことも考えられます。

つまり、ハラスメント相談窓口を設置し、良好な職場環境を保つことで、生産性の向上が期待できるのです。また、窓口を設置することで離職率を下げられる可能性もあります。

3. 業務を見直し効率化する

業務を見直し効率化することで、残業を減らして長時間労働を避けられる可能性があります。

毎日の業務を見直すと、実は成果に直結していない作業が見つかるかもしれません。業務を見直し、少しずつ無駄を削ることで、労働時間を減らせます。

労働時間を減らせば、従業員が健康的に過ごせるようになります。疲れた状態で働き続ける場合と比べて、生産性の向上も期待できるでしょう。

企業にとっても、残業代の支払い負担が減る点は、大きなメリットです。

企業は人権問題への取り組みでSDGsに貢献できる

企業活動の中では、人権に関する問題が発生することがあります。人権は、誰もが生まれながらに持っている権利です。企業において人権問題が発生しているのであれば、解決のための取り組みを行わなければなりません。

人権問題に対する取り組みを行うことで、企業には多くのメリットがあります。SDGsへの取り組みとして、外部にアピールできるのもメリットの1つです。

この記事を参考に、自社でできる人権問題への取り組みについて考えてみてはいかがでしょうか。




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