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SDGコンパスとは?5つのステップと活用のためのポイントを解説
SDGコンパス ステップ5ではステークホルダーに対して報告とコミュニケーションを行います。SDGsに対する取り組みでどれだけ目標に近づけたのか、報告書を作成・公開してステークホルダーとコミュニケーションを取りましょう。
しかし、SDGsに取り組んでいる企業のご担当者の中には、どのように報告書を作成したらいいかわからないという方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで本記事では、SDGコンパス ステップ5でやるべきことを具体的に解説します。報告書作成にあたっての注意点も解説していますので、ぜひご覧ください。
目次
SDGコンパス ステップ5:報告とコミュニケーションを行う
SDGコンパスのステップ5は、「報告とコミュニケーションを行う」です。
SDGsのターゲット12.6では、各国政府に対して「特に大企業や多国籍企業などに対し、持続可能な取組みを導入し、持続可能性に関する情報を定期報告に盛り込むよう奨励すること」と定められています。また、ステークホルダーのニーズを把握し、それに対応するためにも報告やコミュニケーションが必要です。
SDGコンパスによれば、世界のトップ250社のうち93%が持続可能性の達成度に関する報告を行っているとされています。これからSDGsに関する取り組みを行う企業が増えることを考慮すると、今後持続可能性に関する報告を行う企業はますます増えていくと考えられます。
持続可能性に関する報告は、当初社会的な信頼を高めるためのものと考えられていました。しかし現在では、次のような目的を持った戦略的なツールとして扱われています。
・持続可能な意思決定プロセスの支援
・組織発展の促進
・達成度の向上
・ステークホルダーと協働し、投資を呼び込む
ぜひ、SDGsに関する適切な報告とコミュニケーションの方法について知っておきましょう。
SDGコンパス ステップ5でやるべきこと
SDGコンパス ステップ5でやるべきことは次の2つです。
・重要事項に注目して報告書を作成する
・ステークホルダーとのコミュニケーションを行う
それぞれ、詳しく解説します。
重要事項に注目して報告書を作成する
報告は重要事項に注目して行いましょう。SDGsに関する取り組みのすべてを報告としてまとめるのは大変ですし、それが負担になって取り組みのペースが落ちてしまうのでは元も子もありません。
持続可能性の報告において重要度が高い項目とは、次のようなものを指します。
・経済的・環境的・社会的な正または負の影響が大きい
・ステークホルダーの評価・決定に実質的な影響を与える
重要度が高い項目を視覚化するには、マトリックスを用いるのが有効です。SDGコンパスでは、次のようなマトリクスの例が紹介されています。
出典:SDGコンパス
さらに、持続可能性についての報告には、質の高い報告を作成するために重要とされている10の原則が定められています。原則の内容は次の通りです。
・ステークホルダーの包含
・持続可能性の文脈
・重要性
・網羅性
・バランス
・比較可能性
・正確性
・適時性
・明瞭性
・信頼性
特に、持続可能性の文脈は重要度が高い項目とされています。重要な項目を記載するだけでなく、これらの原則もふまえて報告書を作成しましょう。
報告書の作成方法は、従来の報告様式にSDGsへの取り組みを記載するやり方と、独立した報告書を作るやり方の2種類があります。
報告書を作成することで、企業がどのようにSDGsに取り組んでいるか、負の影響に対してどのような対処を行ているかを外部に伝えられます。
ステークホルダーとのコミュニケーションを行う
報告書を作成するだけでなく、SDGs達成度についてステークホルダーとコミュニケーションを行うことも重要です。コミュニケーションを行うことは、開示する情報の種類や報告内容の優先度を決定するのに役立ちます。
ステークホルダーとコミュニケーションを行うにあたって、企業が取り組みを行っているSDGsの項目について次のような情報の開示が必要です。
・取り組みを決めた理由とその過程
・取り組みを行なっている項目に関する著しい正または負の影響
・各項目に対する企業の目標とその進捗状況
・SDGsに関する影響を管理し、組織横断的な統合による目標達成のための戦略と実践
SDGsに対する取り組みは、各項目に対して相互に影響を与え合うこともあります。報告書の作成やステークホルダーとのコミュニケーションにおいては、1つの項目に対する取り組みが別の項目に対しての貢献ともなることを説明できると、より有益なコミュニケーションが期待できます。
SDGコンパス ステップ5に取り組む際の注意点
SDGコンパス ステップ5に取り組む際には、次のような注意点があります。
・わかりやすい指標を用いて報告書を作成する
・社会的弱者に関する報告では属性による分類が可能な指標を用いる
・既存型の報告書を作成する場合はSDGsに関する項目を強調する
それぞれの項目について、詳しく解説します。
わかりやすい指標を用いて報告書を作成する
報告書を作成する際には、わかりやすい指標を用いることでより伝わりやすくなります。具体的には、独自の指標を用いるよりも、国際的によく知られている原則や指標を用いて報告を作成するのが良いでしょう。
報告書をわかりやすくするために、追加的指標を使って補完してもかまいません。
社会的弱者に関する報告では属性による分類が可能な指標を用いる
SDGsの中には、不利な立場におかれた人や社会的弱者に関連する項目もあります。
例えば、目標1の「貧困をなくそう」の項目には「2030年までに、各国定義によるあらゆる次元の貧困状態にある、すべての年齢の男性、女性、子どもの割合を半減させる。」というターゲットが設定されています。
上記の項目に関する報告を行う場合であれば、人種や民族、障害の有無によって達成度に差が出ていないか確認が必要です。そのため、属性によって分類が可能な指標を設定しなければなりません。
既存型の報告書を作成する場合はSDGsに関する項目を強調する
SDGsに関する報告書の作成方法は、既存の報告書にSDGsに関する報告を追記する方法と、新規にSDGs関連の報告書を作成する方法があります。
既存の報告書に追記する方法を選択する場合、 SDGsに関する項目にアイコンをつけるなどして、強調するのが良いとされています。報告書の中でも良いですし、目次に印をつける方法も有効です。
SDGsに関する項目を強調しておくことで、読者は自分が関心を持った項目を素早く見つけられます。SDGsへの取り組みは企業の価値を上げるものでもあるため、情報が見つけやすくなるとユーザーから企業への評価が高まる可能性もあります。
SDGコンパス ステップ5で報告書を作成・公開しよう
SDGコンパス ステップ5は、「報告とコミュニケーションを行う」です。企業はSDGsに積極的に取り組むだけでなく、それに関する報告書を作成・公開する必要があります。
報告書の作成には、既存の報告書にSDGsに関する項目を追記する方法と、新規にSDGsに関する報告書を作る方法の2種類があります。どちらの方法を選択しても問題ありませんが、既存の報告書を利用する場合には、SDGsに関する項目を強調して伝わりやすくなる工夫をしましょう。
また、わかりやすい指標を用いることや、社会的弱者に関する項目では属性別の分類が可能な指標を用いることも重要です。
この記事を参考に、SDGコンパス ステップ5に取り組んでみてください。
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