SDGsの目標を達成するためには、製造業の取り組みが欠かせません。
しかし、具体的にどのような取り組みを行えばよいのか、どのような目標がSDGsに関連しているかなど、わからないことも多いでしょう。
そこで本記事では、製造業によるSDGsへの取り組み事例をご紹介します。
製造業とSDGsの関係や、製造業が貢献しやすいSDGsの目標についても解説していますので、ぜひご覧ください。
目次
製造業とSDGsの関係
SDGsとは「Sustainable Development Goals」の略で、日本語でいえば持続可能な開発目標と呼びます。
その名のとおり、持続可能でよりよい社会を目指す世界共通の目標です。
2030年までに達成すべき17の目標と、それを達成するために示された169のターゲットで構成されています。
SDGsへの取り組みは世界中で行われていて、日本でも注目が高まっています。
SDGsの目標を達成するには、製造業の取り組みが欠かせません。
なぜなら製造業は、現状製品を生産するために、多くのエネルギーを利用しているためです。
また、普段の業務を見直すことで貢献できるSDGsの項目も多くあります。
製造業と関係が深いSDGsの目標5つ
製造業と関係が深いSDGsの目標は、次の5つです。
・目標7:エネルギーをみんなにそしてクリーンに
・目標8:働きがいも経済成長も
・目標9:産業と技術革新の基盤を作ろう
・目標12:つくる責任・つかう責任
・目標13:気候変動に具体的な対策を
各目標の内容と、企業でできることの例を具体的に紹介します。
目標7:エネルギーをみんなにそしてクリーンに
目標7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」は、世界中すべての人々が、安価で信頼できる、持続的なエネルギーの確保を目指すものです。
石油・石炭・天然ガスなどの化石燃料を利用する際に発生する二酸化炭素は、温暖化を加速させる原因のひとつです。
また、化石燃料は埋蔵量が有限であるため、使い続けると数十年後には枯渇する可能性があります。
太陽光や風力などのクリーンエネルギーを利用すれば、二酸化炭素の排出を抑えられます。
また、クリーンエネルギーは持続可能なエネルギーでもあるため、化石燃料の枯渇に向けた対策としても有効です。
製造業が目標7に貢献するためには、次のような方法があります。
・化石燃料を使わない製品の開発
・製造に利用するエネルギーをクリーンエネルギーに切り替え
目標8:働きがいも経済成長も
目標8「働きがいも経済成長も」は、持続可能な経済成長と、働きがいのある人間らしい雇用環境を目指すものです。
世界的に見れば、厳しい環境で働いている方や、働いていても貧困から抜け出せない方は多くいます。
また、日本では長時間労働や正規職員と非正規職員の収入格差などが課題です。
製造業が目標8に貢献するには次のような方法があります。
・フェアトレードによる原材料の調達
・ワークライフバランスを改善するための取り組み
目標9:産業と技術革新の基盤を作ろう
目標9「産業と技術革新の基盤を作ろう」は、各種のインフラを整備し、産業や技術革新を産むための基礎構築を目指すものです。
世界には、まだまだ生活のためのインフラが整っていない地域が多くあります。
インターネットや携帯電話の利用ができない地域も少なくありません。
日本では、インフラの災害対策が必須です。
地震や津波などの災害が起きた際に、より早く復旧できるインフラが求められます。
製造業が目標9に貢献するには次のような方法があります。
・停電の際に自家発電が可能な仕組みの用意
・発展途上国のインフラ整備に対する支援災害時に電力やインターネット回線を提供するような製品の製造
目標12:つくる責任・つかう責任
目標12「つくる責任・つかう責任」は、持続可能な消費と生産の構築を目指すものです。
従来の先進国では、大量消費・大量生産がスタンダードとなっていました。
現在でも、地球が生産する資源より、人間が消費する資源の方が多い状態が続いています。
このままでは将来地球の資源は枯渇してしまうため、持続可能な消費活動に切り替えていかなければなりません。
製造業が目標12に貢献するには次のような方法があります。
・壊れにくく長く使える製品の製造
・製造過程で出る廃棄物のリサイクル
目標13:気候変動に具体的な対策を
目標13「気候変動に具体的な対策を」は、気候変動の発生や影響を抑えるための緊急対策を求めるものです。
地球温暖化により、世界各地でさまざまな気候変動が起き、被害が発生しています。
例えば日本では、大雨の日数が増加傾向にあります。
そのため、気候変動への具体的な対策が急を要しており、被害を減らさなければなりません。
二酸化炭素の排出を減らすような取り組みを行うとともに、異常気象による被害を減らすような対策も重要です。
製造業が目標13に貢献する方法は、次のようなものがあります。
・マイカーでなく乗合バスで出勤できるような体制を整える
・業務中の熱中症対策を徹底する
製造業がSDGsに取り組むメリット
製造業がSDGsに取り組むのには、次のようなメリットがあります。
・製品・企業の付加価値になる
・新たなビジネスにつながる可能性がある
・災害に強い体制を作れる
・ESG投資の対象となる
それぞれ、詳しく解説します。
製品・企業の付加価値になる
製造業がSDGsに取り組むと、SDGsに積極的な企業の製品を購入しようと考える顧客から選ばれるようになり、製品や企業に付加価値を上乗せできます。
特にZ世代と呼ばれる15〜24歳の世代では、SDGsや社会的課題に配慮して商品を購入したことがある方の割合は、20%を超えています。
積極的にSDGsへの取り組みは、若者向けのアピールになるといえるでしょう。
企業や製品に付加価値があると、競合との価格競争から脱却できる可能性があります。
また「SDGsに取り組んでいる企業」としてブランディングも可能です。
SDGsへの取り組みにより、社会貢献に積極的な企業とのイメージを与えられるため、従業員や取引先・採用候補者など、社内外からの信用獲得にもつながります。
新たなビジネスにつながる可能性がある
SDGsへの取り組みが、新たな市場の開拓や、新しいビジネスにつながる可能性もあります。
例えば、以前は電気自動車の市場はありませんでした。
環境への負荷を考え、電気をエネルギーとする車が登場し、現在では新しい市場として成立しています。
電気自動車の誕生・一般化によって、ほかのさまざまな分野で新たなビジネスが生まれる可能性もあります。
災害に強い体制を作れる
SDGsに対する取り組みを行うと、災害に強い製造体制を作れます。
例えば、目標9の項目で紹介した自家発電で電力を確保できる仕組みがあれば、災害時に電気が止まってしまっても、製造を続けられる可能性が高まるでしょう。
また、目標13の項目で解説した通り、常日頃から異常気象による災害の被害を減らせるよう備えておけば、万が一被害にあってもより早い復旧が期待できます。
SDGsへの取り組みは、世界のためだけでなく自社のためにもなります。
ESG投資の対象になる可能性がある
EGS投資とは、従来投資の指標とされていた財務諸表だけでなく、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)を考慮して投資を行う手法です。
企業が持続的に成長し続けるためにはESGへの取り組みが不可欠なことから、近年投資家から注目されています。
つまり、SDGsに取り組むと、資金を調達しやすくなるのです。
大掛かりな設備投資や事業の拡大には、資金調達が欠かせません。
投資を受けられる可能性が高い状態に保っておくことは、企業の成長のためには重要です。
製造業のSDGs取り組み事例
製造業のSDGs取り組み事例として次の3つをご紹介します。
・カネパッケージ株式会社
・武蔵精密工業
・株式会社髙坂工業
カネパッケージ株式会社
カネパッケージ株式会社では、プラシェル樹脂を使った製品の開発に取り組んでいます。
プラシェル樹脂とは、卵の殻や卵の抗菌剤を配合した樹脂のことです。
従来の素材と比べて、プラスチックを60%削減できます。
プラシェル樹脂は、スプーンやマドラー・トレイなど、さまざまな用途に利用可能です。
プラスチックの使用量を減らせるだけでなく、産業廃棄物として捨てられていた卵の殻を有効活用できる点もメリットです。
参考:カネパッケージ株式会社
武蔵精密工業
武蔵精密工業では、愛知県豊橋市と協力し、地域マイクログリッドの構築に取り組んでいます。
地域マイクログリッドとは、大規模災害などで電線が切れてしまったとき、太陽光発電や蓄電システムを活用して周辺地域に電気を送る仕組みです。
地域マイクログリッドの構築は、災害時のインフラを確保し、地域社会に貢献する重要な取り組みです。
また、平時から太陽光で発電された電気を利用し、二酸化炭素の排出量を削減できるため、環境負担も減らせます。
参考:武蔵精密工業
株式会社髙坂工業
株式会社髙坂工業では、外壁塗装などに利用する塗料として「ガイナ」を採用しています。
ガイナとは断熱塗料の一種で、ロケットの先端部分にも使われています。
外壁にガイナを使用することで断熱ができるため、冷房や暖房の使用時間を抑制し、二酸化炭素の排出量を削減可能です。
参考:株式会社髙坂工業
事例を参考にSDGsへの取り組みを
製造業は、多くのエネルギーを必要とすることから、SDGsと関連が深い業種です。
製造業が貢献しやすいSDGsの目標は5つあり、取り組みを行うことでさまざまなメリットを得られます。
この記事で紹介した事例を参考に、SDGsへの取り組みとして何ができるか考えてみてください。
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