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2024.01.19

ESG情報開示とは?実施の重要性と実践の手順・ポイントを徹底紹介

近年、企業のESGへの取り組みを評価して投資先を決定する「ESG投資」が注目されており、実践する投資家も増えています。

ESG投資の対象として選んでもらうためには、ESG情報開示が重要です。ESG情報開示を行っている企業は依然として少ないため、積極的に情報を開示することで、自社を投資対象として選んでもらえる可能性が高まります。

そこで今回は、ESG情報開示の重要性や開示を行う手順、ポイントなどを紹介します。

目次

ESG情報開示とは

ESG情報開示とは、企業のESGに関連する非財務指標を開示し、投資家をはじめとしたステークホルダーに提供することを指します。

ESGは、環境(E: Environment)、社会(S: Social)、ガバナンス(G: Governance)の頭文字を取った言葉です。企業が持続的な成長を維持するために必要な3つの項目を示したものです。

近年、企業が社会や環境にどれだけ貢献しているかを判断基準として投資先を決める「ESG投資」が広がっています。しかし、財務情報と比べると、ESGに関する情報を社外の人間が収集するのは難しいです。

そこで、企業にはESG情報開示が求められるようになりました。ESG投資の対象として選ばれるためには、ESGに関する情報を積極的に開示することが必要です。

ESG情報開示の重要性

ESG情報開示が重要な理由は、次の2つです。

●財務データ以外の部分で評価を受けられる
●企業の信頼性向上につながる

それぞれ、詳しく解説します。

●財務データ以外の部分で評価を受けられる

ESG情報を開示することで、企業は財務データ以外の部分で投資家から評価を受けられます。

従来、投資家は財務データを主な判断材料として投資先を決定していました。しかし、ESG投資では、財務データには現れない事項も判断材料にしなければなりません。
非財務情報を開示することで、投資家がESGに関する取り組みを評価できるようになります。
その結果、財務データのみを公開している企業と比べて、自社を投資先として選んでもらえる可能性が高まるのです。投資を受けられれば、集めた資金を活用して自社の企業価値をさらに向上させられるでしょう。

●企業の信頼性向上につながる

ESG情報の開示によって、企業の長期的な価値をアピールでき、信頼性の向上につながるというメリットもあります。

ESGの取り組みの中には、すぐには成果が出ないものも少なくありません。例えば、エネルギー関連会社であればカーボンフットプリント、小売業であれば労働基準の整備などは、成果が出るまでに時間がかかる取り組みといえるでしょう。財務情報だけを開示している場合、そういった取り組みを評価してもらえない可能性が高いです。

ESG情報を開示することで、売上や利益に反映されにくい取り組みの成果をアピールできます。企業の持続可能性をアピールでき、ステークホルダーからの信頼獲得につながるでしょう。

ESG情報を開示し、企業が積極的に社会貢献活動に取り組み、社会的責任を果たしていることをアピールしましょう。

ESG情報開示を実践する手順

ESG情報を開示する手順は次のとおりです。

1. ESG情報を収集する
2. 集めた情報を整理する
3. 情報を開示する媒体を決定し情報を開示する

それぞれ、詳しく解説します。

1. ESG情報を収集する

まずは、自社の現状を知るためにESG情報を収集しましょう。

何からはじめればよいかわからない場合には、ISO26000を活用するのが効果的です。ISO26000とは、組織が社会的責任を果たすためにどのような行動を取るべきかを示す国際規格です。ISO26000の補助ツールとして用意されている「やさしい社会的責任」の資料を利用することで、チェックすべきポイントを理解できるでしょう。

また、同業他社がどのような情報を開示しているかを確認することも大切です。同業他社の開示内容を参考にすることで、自社がどのような情報をどのように公開すべきか、方針を立てられます。

このとき、一度に多くの情報を集めようとすると、整理しにくくなってしまう可能性が高いです。まずは自社が重視したいポイントに絞って情報収集を始めましょう。企業の重要課題であるマテリアリティを特定しているのであれば、マテリアリティに沿った情報を集めるのがおすすめです。

マテリアリティについては、次の記事で詳しく解説していますのであわせてご覧ください。

コラム:マテリアリティとは?企業が発信すべき理由と特定のプロセスを解説

2. 集めた情報を整理する

集めた情報をそのまま開示するだけではわかりにくいため、わかりやすいように整理してから公開する必要があります。

「自社にとって重要な情報」と「社会にとって重要な情報」を中心に、集めた情報を整理しましょう。そして、集めた情報の中からマテリアリティに沿ったものを公開します。

必ずしも、多くの情報が公開されていればよいとは限りません。情報過多になってしまうと、わかりにくい開示書類になり、最後まで目を通してもらえる可能性が下がってしまいます。重要なポイントのみを抽出して伝えましょう。

3. 情報を開示する媒体を決定し情報を開示する

最後に、集めた情報をどのような媒体で開示するか決め、実際に情報開示を行います。

情報開示に活用できる媒体は数多くあります。まずは、スピード重視で開示する媒体を選ぶのがおすすめです。特に便利なのがWebサイトです。既存のサイトにページを追加するだけで公開でき、リアルタイムで情報を更新できます。

情報開示のターゲットとする相手が、どのような媒体から情報収集しているかもチェックしておくことが大切です。例えば、主に投資家を対象にESG情報を開示する場合には、投資家が普段情報収集に活用しているIRページに情報を掲載するのが効果的です。採用候補者にアピールしたい場合は、採用ページやSNSを活用して公開するのがよいでしょう。

ターゲットが普段活用している媒体や、各媒体で情報発信する手間を考慮したうえで、どの媒体が自社に合うのか検討してください。

ESG情報開示のポイント

ESG情報開示を行う際には、次のポイントに注意しましょう。

●品質が高く整合性の取れたデータを集める
●英語での発信も検討する

以下では、それぞれのポイントについて詳しく解説します。

なお、ESG情報開示については、東京証券取引所が実践ハンドブックを公開しています。こちらも併せて参考にするのがおすすめです。

ESG情報開示実践ハンドブック

●品質が高く整合性の取れたデータを集める

ESG情報開示のために集めるデータは、品質が高く整合性の取れたものである必要があります。

データの品質と整合性は、ESG情報の信頼性に直結します。例えば、自社に都合の良い部分だけを切り出したようなデータは、品質が高いとはいえません。不利な部分があっても隠さずに伝え、虚偽の情報開示をしないよう徹底しましょう。

また、開示したデータ同士が矛盾していると、情報の信頼性が下がってしまうでしょう。開示する際は、内容に一貫性があるかをチェックしてください。

●英語での発信も検討する

海外からの投資比率が高い場合には、英語での情報発信も検討しましょう。

日本語のみで発信した場合、海外の投資家が情報を確認する可能性は期待できません。英語で発信していれば、海外の投資家にも情報が届きやすくなります。

情報をわかりやすく伝えられるよう、ピクトグラムやイラストを活用するのもおすすめです。

ESG情報開示が企業の成長につながる

ESG情報の開示とは、ESGに関して自社がどのような取り組みを実施し、どのような結果が出たか、また、どのような目標を目指して事業活動をしているのかをステークホルダーに示すものです。

ESG情報を開示することで、財務データ以外の部分でも自社を評価してもらえる可能性が高まります。また、ESG投資を重視する投資家からも注目されやすくなり、より多くの投資を集められるでしょう。

まずはマテリアリティに沿って、重要な項目についての情報収集から始めてみることが大切です。

この記事を参考に、ESGの情報開示の準備を進めてみてはいかがでしょうか。

株式会社NOLTYプランナーズ