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探究指導コラム

NOLTYスコラ 探究プログラム

中学校・高校の「探究」に関する記事をまとめています。

2021.09.24

探究活動で主体的に行動する力を育む 神田女学園中学校高等学校インタビュー②KANDA×NOLTYスコラ 探究プログラム

神田女学園中学校高等学校では、総合的な探究の時間を「NCL(ニコル)・プロジェクト」と名付け、「品格ある個人」として行動できる力の育成に向けて積極的に取り組まれています。7年前のNCL(ニコル)・プロジェクトの立ち上げからご尽力されている池田先生にお話を伺いました。

 

教務企画室室長としてNCL(ニコル)・プロジェクト(総合的な探究の時間)を主導される池田 幸代先生

 

 

――貴校では「NCL(ニコル)・プロジェクト」と称して探究活動に取り組まれています。名称の由来と、始めたきっかけを教えてください。

 

NCL(ニコル)・プロジェクトのニコルはN=ネイチャー(自然科学)、C=カルチャー(社会科学)、L=ライフ(人文科学)。生徒が取り組むテーマをおおよそ網羅できるような3つのテーマの頭文字を集めてNCL(ニコル)・プロジェクトと称しています。約7年前、中学校にグローバルコースを創設した際、生徒が主体的に取り組める、教科横断的な探究学習ができないかと思ったのがきっかけです。最初は中学部のグローバルコース1クラスだけの取り組みでしたが、こんなによい学びができるのであればと他コースや高校にも広がり、今では中学1年生から高校2年生までの全クラスで取り組んでいます。

 

――どこの学校も探究の立ち上げが大変と伺います。最初に苦労されたことはありますか。

 

立ち上げ時は各教科の先生から一人ずつ集まりプロジェクトチームを結成しました。最初に育てたい生徒像や生徒に身に付けさせたい力を設定して、そこから教材を作成していきました。

当初はこちらで「貧困」「SDGs」など地球規模の問題をテーマに設定し、テーマありきで探究活動を進めていたのですが、徐々に生徒のモチベーションが低くなってくるのを感じていました。テーマ自体は生徒も興味を持ってくれるのですが、どうしてもやらされていると感じてしまうんですね。

そういった経緯で現在のような生徒自身が興味・関心のあるテーマを選んで取り組む形に変化していきました。「テーマを用意した方が生徒はやりやすいんじゃないか」という議論も先生たちの中で起こりましたが、そうなると生徒は主体的になれない、よくて「自主的」止まりだと思い、断固反対しました。

最初は生徒たちの選ぶテーマが幅広く、どう進めていくべきか苦労しましたが、今は生徒がそれぞれ選んだテーマ別に、自然科学・社会科学・人文科学の3つに振り分けて、学年やクラスをミックスしたチームを作って探究活動を進めています。例えば中学校では中学3年生がリーダーになり後輩を引っ張り、中学2年生がサブリーダーとしてリーダーを支えながら、翌年自分がリーダーになるためのやり方を学んでいく。先生が全部教えるのではなく、生徒自身が壁にぶつかりながら、苦しみながらも楽しんで学んだことをどんどん下の学年へ教えていくやり方ができてきました。実際、教員が話すよりも、先輩からの経験をもとにアドバイスしてもらった方が生徒は真剣に聞きますし、よく分かるのです。

 

――生徒同士で教え合うのですね!他の学校のお悩みとして、「先生が口を出しすぎてしまう」というお話もよく伺います。また反対に先生方は生徒からわからないことを聞かれるのが怖い、聞かれたくないという気持ちもあるかと思いますが、そういった先生方の意識を変えるために工夫されたことなどありますか。

 

先生方には年度の最初に「あまり喋らないでください」と伝えています(笑)。中には授業中、熱意からついつい講義が始まってしまう先生もいるのですが、講義をすると生徒たちは聞かないといけないので作業ができず、思考がストップしひたすら聞いてしまいます。そういう時には先生に「先生が教える部分を減らして」と伝えるようにしています。また生徒はよく私たちに答えを求めてきます。しかし、先生方はわからないから教えられないと思ってしまいます。だから先生方には「教えなくていいです」と伝えました。なぜならば、生徒に答えを教えるのではなく、答えにたどりつくための方法を教えることが探究における私たちの役割だからです。ファシリテーターになって、手が止まっている生徒にヒントを与えて手を差し伸べるという姿勢でいたいと思っています。

 

探究以外の科目でも授業が大きく変わってきています。5~6年前は黒板に板書を書いて、生徒がそれをノートに写して…という講義型が中心でしたが、現在は生徒演習型というか、先生は話し過ぎず生徒に作業させる、生徒が頭を働かせる時間が多い授業になってきています。それに伴って探究学習もだいぶやりやすくなってきたと思います。最初はNCL(ニコル)・プロジェクトだけが飛び出ていたのですが、各教科の授業も生徒主体になってきたと感じています。

 

――探究活動に取り組む生徒の反応はいかがですか。


最初は生徒たちも「やらされている」という反応でしたが、それが変わってきたのはテーマを自分で決めるようにしてからだと思います。

私たちからは探究活動の最初に「何をやってもいいよ、どこにでも行けるよ」と生徒に伝えています。「しかも今やっていることが大学に活かせるかもしれないよ。それが大学の研究テーマになって、就職するかもしれない。まずは突き進んでごらん」と伝えると、「やりたいことをやってみよう」という気持ちが生徒に芽生えるんですね。

自分の好きなことに突き進んだり、省庁や大学で専門家に話を聞けたりだってできる。そうしていると「こんなこともできるの!?」となって、生徒自身が楽しんで探究活動に取り組むようになりました。

「今まで全然面白くなかったけど、いろんな所へ行ってみて、『わぁ、楽しい!もっと知りたい!』と思えるようになった」と言ってくれた生徒もいました。そういう生徒がどんどん増えれば、探究以外の授業や活動でも探究の手法を使うことができるようになって、もっといろんなことが変わっていくんじゃないかなと思います。

 

正直なところ生徒の探究活動には、「え、そんなこともするの!?」と毎年驚かされます。「外務省に電話してください」とか「この企業に行きたいです」とか、こちらも尻込みするようなことがたくさんありますね。でも生徒に背中を押されながら「やるしかない」と。なかなか教員になって企業や大学に電話したり交渉したりすることはないので、こちらとしても良い経験になっています。

 

テーマ設定の際、安易なテーマだと途中で壁にぶち当たります。そうなって、もう一度、戻る。そうやって行きつ戻りつを何度も繰り返すことでどんどん内容が深まり、自分の進路に結びつくようになっていきます。

 

――池田先生のお話を伺っていると生徒さん達がすごく楽しそうに探究に取り組まれているのが印象的です。

現実の課題として、各教科に向かう力や意欲、基礎学力と探究学習の結びつきが弱いと感じる学校は多くあると思います。貴校での取り組みから感じられた生徒の変化はありますか。

 

今の高校3年生は中学1年生から6年間探究活動に取り組んできた初めての学年ですが、教員に言われなくても自発的にやる生徒が多いのが特徴だと思います。今までは「勉強しなさい」などと大人から言われてやってきた生徒が多かったですが、「自分でスケジュールを組んで取り組む」という中学からの探究活動や日々のスコラ手帳での学びや経験が活きています。それが勉強に結びついていて、自分自身の推進力をもって物事に取り組めています。あとは探究を経験したことで調べ方や小論文の書き方などしっかり基礎ができているので、進路指導にも役立っています。

 

一時期、勉強時間を増やすためにNCL(ニコル)・プロジェクトを辞めた方がいいんじゃないかという議論もありましたが、自分の今まで知らなかった世界を見て、目をキラキラさせている生徒を見るとやっぱりやっていてよかった、続けてきてよかったなと感じます。

先生たちもキラキラした生徒を見て「頑張ろう」と思うようです。初めて探究に取り組んだ先生などから「生徒たちが一生懸命で、楽しそうで、どんどん主体的に取り組む姿を見て、勉強やテストだけではわからない部分が見えて、すごくいいと思った」という声もよく聞きます。

 

――先生方のモチベーションの源はやはり生徒さんたちの成長なのですね。生徒さんのモチベーションが上がって、先生方もモチベーションが上がって…の繰り返しよいサイクルが生まれていますね。

 

本当にそうですね。大学に進学するにはこんな力が必要だとか、先生はシビアなことも言いたくなってしまうとは思います。でもそこばかり伝えると生徒は嫌になってしまうんですよね。だから本当に自分の好きなテーマでやらせることが大切だと思います。 そうじゃないと生徒は自分でやらないしできない。最初の歯車のスタートのエンジンがかからない。

 

あとは先生が楽しみながらやっていると生徒も楽しみながらやることができるということです。先生たちが必死すぎると、反面生徒には「先生たちが必死だな」と冷めた目で見られてしまうこともあるため、まずは先生自身も探究を楽しむことが大事だと思います。生徒が調べてきたことに対して「へえ、知らなかった」「それおもしろいね」「よく調べたね」と、教員が知らなかったことについても素直に返すことで、生徒も「もっとやろう」という気になっているようです。

 

――総合的な探究の時間を様々なタイミングで始めている学校がありますが、「うちは探究的な学習の型ができているから」と言われることがよくあります。貴校では約7年間のNCL(ニコル)・プロジェクトを通して探究学習のやり方が固まっている中で、弊社プログラムを導入してくださった理由をお話いただけますか

 

NOLTYスコラ 探究プログラムを導入するまでは、将来役立つものをと考えて卒業論文でも使えるような手法を習得するための学校独自のプリントを毎回作成していました。授業当日はプリントを渡して、その日の流れを説明し、生徒主体で進めていました。しかしそれでも「今日何やるの?」と生徒に聞かれることも多く、授業ごとにプリントを配布していたので、生徒が探究活動の全体が見通せないことが悩みでした。その際にNOLTYスコラ 探究プログラムを知り「あぁ、これは私たちがやっていることと同じだ」と。卒論にも使えるような基本的なフレームワークが抑えられながら、一冊のノートにまとまっているので、これなら生徒たちが探究活動の流れを理解できるかなと思いました。これが導入を決めた一つの理由です。

 

もう一つは新しい先生が赴任されたときに進めやすいのではないかというのも大きな理由です。NOLTYスコラ 探究プログラムには指導書がついているので、探究の経験のない先生も授業が進めやすく、こちらもフォーマットがあることで一から説明する必要がなく内容が共有しやすいです。

 

――実際に導入されていかがでしょうか


生徒たちが探究活動の全体を見通して、ゴールに向けて計画を立てられるようになりました。もう「今日何やるの?」とは聞かれなくなりましたね(笑)。

振り返りの欄もしっかり書けるようになっていていいですね。今までのプリントでは振り返り欄は1行程度でしたが、探究ノートはしっかり書けるようになっているので、生徒も後で見返したときにまた次も頑張ろうと思えるのではないかと思います。

 

また私たちとしては、一からプリントを作っていたところを探究ノートで代用することで手が空き、そこで新しい要素を取り入れて工夫しようという冒険ができるようになりました。その結果、今年は長年やり方を変えてみたいと思っていた文化祭と探究活動を絡めることにチャレンジすることができました。

 

ブレインストーミング一つとっても、色々な方法を試すとなると、先生たちも学ぼうと思いますし、生徒は違った角度から物事を見ることができて、視野を広げることができます。昨年とまったく同じだと学ぼうという意欲が低下し、どんどん衰退していくと思います。そういった意味では、探究ノートのおかげで内容を深化させることができていますね。

 

――弊社の探究プログラムのような外部のリソースを利用することで、より先生方のパフォーマンスを発揮する。先生方がチャレンジする部分で学校の特色を打ち出していく、というのが非常にうまくご活用いただいていると感じます。

 

 

――池田先生は立ち上げから7年間ずっとNCL(ニコル)・プロジェクトに関わられていらっしゃいますが、学校のよくある悩みとして、人員の入れ替わりから探究活動が形骸化のほころびが出るとお伺いします。そこへの対策はありますでしょうか。

 

そのためのNOLTYスコラ 探究プログラムだと思っています。毎回授業の前に先生方へ講習をするわけにもいかず、新しい先生への探究活動の共有をどうしようというのがずっと悩みでした。毎週の授業前に学校内のメールシステムに今週の授業内容を載せて、共通認識を作るようにはしていますが、やはり手元に探究ノートや指導書、スライドなど、ベースとなる教材があると、次はこのページぐらいまでいくよ、というのを先生たちがイメージしやすいんですね。最初は全体を私が先導していましたが、今はクラスに分かれて各担任で進めています。


――ここまで体系立ててしっかり探究学習と絡めて授業構築されていて、何よりそこで生徒さんが楽しまれているのが素晴らしいですね。

最後に、今後挑戦してみたいこと、新しくやってみたいことを教えてください。

 

やはり永遠の課題は生徒の主体性です。その課題解決に取り組み続けるためにも、私自身が楽しく探究に取り組み、内容をブラッシュアップしていくことが大切だと思っています。まずは、学校全体の取り組みがニコル的になってきたので、文化祭だけでなく他の行事も生徒が探究しつつ進められたらなと。これからも少しずつ新しいことを取り入れつつ探究活動を続けていきたいと思います。

 


 

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