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2024.02.14

TNFDとは?TCFDとの違いや要点・開示項目をわかりやすく解説

自然資本や生物多様性は、経済活動と大きな関連があります。しかし、自社のビジネスがどのように生物多様性から恩恵を得て、どのようにリスクを与えているのか、適切に評価するのは簡単ではありません。

このような生物多様性と自社のビジネスの関連を評価するための枠組みを示す組織が、TNFDです。この記事では、TNFDの概要やTCFDとの違い、TNFDで開示が求められる項目について詳しく解説します。

目次

TNFDとは

TNFDはTaskforce on Nature-related Financial Disclosuresの略で、日本では「自然関連財務情報開示タスクフォース」と呼ばれます。タスクフォースとは、緊急の課題を解決するための組織のことです。

TNFDでは、自然資本や生物多様性の変化と自社の活動にどのような関連があるか、リスクや機会を評価するためのフレームワークを示しています。フレームワーク自体のことをTNFDと呼ぶこともあります。

TNFDとはどのようなものか、次の2つの観点からさらに詳しく見ていきましょう。

●TNFDが設立された目的
●TNFDのフレームワーク

●TNFDが設立された目的

TNFDは、生物多様性が失われつつあることへの危機感を背景に設立されました。

自然環境と生物多様性には大きな関連性があります。生物多様性によって環境が保たれた海や森は、気候の安定に寄与します。また、珊瑚礁やマングローブが自然の防波堤として機能するように、生物多様性によって自然災害の被害を低減できるケースもあるのです。

生物多様性の減少は、自然環境の減少につながります。自然環境の悪化による異常気象や災害の増加は、経済活動のみならず人類の存続にも関わる大きな問題です。

そこで注目されているのが、ネイチャーポジティブです。ネイチャーポジティブとは、生物多様性の損失を食い止め、反転させ、回復させることを指します。各企業が、ネイチャーポジティブに向けて取り組むことが必要です。

TNFDでは、企業がネイチャーポジティブ経営を推進するためのガイドラインを提供しています。

●TNFDのフレームワーク

TNFDのフレームワークは、ベータ版として発表されたv0.1からv0.4の4種類と、最終提言であるv1.0が発表されています。

最終的に公開されたv1.0は、「ガバナンス」「戦略」「リスクとインパクトの管理」「指標と目標」の4つの柱で構成されています。また、自社のどのような事業が生物多様性に影響を与えるかを特定するLEAPアプローチについても最終版が公表されました。

TNFDとTCFDの違い

TNFDと混同されやすいものに、TCFDがあります。TCFDは、各企業が実施している気候変動への取り組みの開示を推奨するタスクフォースであり、TNFDはTCFDから派生したものです。

TNFDは自然資本を重視するものである一方、TCFDは気候変動を重視するもの、という違いがあります。

また、TNFDではより多角的な視点が必要なのもポイントです。気候変動に関する取り組みは、温室効果ガスの排出量という統一された指標で評価できます。一方、自然環境や生物多様性を守るために必要な取り組みは地域によって異なり、単一の指標では評価できません。

TNFDとTCFDは異なるものですが、TNFDはTCFDと整合性がとれるよう考慮されています。両者の整合性をとりながら取り組みを進めることで、気候変動と生物多様性に対する取り組みを統合して情報開示できるよう設計されているのです。

TCFDについて、詳しくは次の記事で解説しているため、併せてご覧ください。

コラム:TCFDとは

TNFDで開示が求められる項目

TNFDでは、次の4つについて開示が求められます。

ガバナンス

自然に関する依存、インパクト、リスク、機会(以下、自然に関するインパクト等)に関する組織のガバナンス

戦略

自然に関するインパクト等が、事業や戦略、財務計画に与える影響

リスクとインパクト

管理組織が、自然に関するインパクト等をどのように特定、評価、管理しているか

指標と目標

自然に関するインパクト等を評価し管理するために使用される測定指標や目標

それぞれにさらに具体的な開示内容が定められており、合計14の項目が存在します。

TNFDでは、TCFDとの整合性を図るために、TCFDで開示が求められる11項目がすべて含まれているのが特徴です。

まずはTCFDに関する取り組みから始め、その後TNFDに必要な項目を追加しながら取り組みを進めるのがよいでしょう。

TNFDを理解するためのポイント

TNFDを理解するためのポイントは、以下の3点です。

●TNFDにおける「自然」の定義
●自然がビジネスに与える影響
●地域によって異なるリスクと機会

それぞれ、詳しく解説します。

●TNFDにおける「自然」の定義

TNFDにおける自然の定義は、「人間を含む生物の多様性と、生物同士および環境との相互作用に重点を置いた自然界」です。そして、自然は「陸域」「海洋」「淡水」「大気」の4つで構成されており、社会は4つの領域すべてと相互に関係しているとされています。

まずは、TNFDが定義する自然の4つの領域の中で、自社がどこに大きく影響を与えているかを考えることで、リスクや機会を見つけやすくなるでしょう。

●自然がビジネスに与える影響

自然がビジネスに与える影響を知っておくことも、TNFDを理解するための重要なポイントです。

森林・土壌・水・大気・生物資源などは、自然資本と呼ばれます。人間の生活は、多様な自然資本から大きな恩恵を受けています。例えば、豊かな森と土壌は、一時的に水を蓄えて土砂災害を防ぐ重要な存在です。海洋生物の多様性は、多くの人々の食生活を支えています。こうした自然資本が生み出す恩恵を受けて、社会や経済は成り立っているのです。

自然資本が失われることで、社会や経済が受けられる恩恵は減ってしまいます。従来のビジネスが成り立たなくなる可能性も否定できません。

自然がビジネスに与える影響や、多様性を維持するメリットを知っておくことで、TNFDへの理解が深まるでしょう。

●地域によって異なるリスクと機会

地域によってリスクや機会が異なることを理解しておくことも、TNFDを理解するための欠かせないポイントです。

自然環境は地域によって異なります。そのため、たとえ同様のビジネスをしていたとしても、そのビジネスが自然環境に与える影響は異なるのです。

TNFDを推進する際には、ビジネスと地域の自然環境の関連に注目する必要があります。自社のビジネスが地域の生物多様性からどのようなメリットを得ているのか、また地域の生物多様性にどのようなリスクを与えているのか、理解しておかなければなりません。

TNFDに賛同するメリット

TNFDに賛同する大きなメリットは、サステナブルな事業活動の推進をステークホルダーに理解してもらえることです。

自然環境の保護をはじめとした社会貢献活動は、実際に行っていても適切に情報を公開するのが難しいものです。TNFDのガイドラインに沿って情報開示を行うことで、ステークホルダーに適切な情報提供ができます。

サステナブルな事業活動の推進を理解してもらうことで、社会貢献意識の高い企業と評価され、ESG投資の対象になる可能性も高まります。

TNFDとTCFDの整合性を取りながら情報開示を進めよう

TNFDとは、「自然関連財務情報開示タスクフォース」のことで、自然資本や生物多様性と自社のビジネスにどのような関連があるか、機会やリスクを評価するための枠組みを示しています。

生物多様性の減少への危機感を背景に設立されたTNFDは、気候変動に関する取り組みを開示するTCFDと類似する部分もあります。TNFDに取り組む際には、TCFDへの取り組みと整合性を取りながら進めることが重要です。

まずは、TNFDとはどのようなものか知り、自社にできることから取り組みを始めてみましょう。

株式会社NOLTYプランナーズ