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2024.02.02

TCFDとは?概要や開示項目・賛同するメリットをわかりやすく解説

近年、投資の際には財務状況だけではなく、企業の気候変動に対する取り組みも重視されるようになりつつあります。しかし、これまで気候変動に対する取り組み内容を開示するための仕組みはなく、投資家は情報を入手するのが難しい状況でした。

そこで登場したのがTCFDです。この記事では、TCFDとは何か、概要や開示項目、賛同するメリットなどをわかりやすく紹介します。TCFDについて知りたい方は、ぜひ参考にしてください。

目次

TCFDとは

TCFDとはTask Force on Climate-related Financial Disclosuresの略で、日本では「機構関連財務情報開示タスクフォース」と呼ばれます。各企業が気候変動に対して実施している取り組みを、具体的に開示することを推奨する国際的な組織です。適切な情報の開示を促すため、TCFDでは情報開示のためのガイドラインも提示しています。

TCFDについて、次の2つの観点からさらに詳しく解説します。

●TCFDが設立された背景
●プライム市場におけるTCFDの開示義務化とは

●TCFDが設立された背景

TCFDが設立された背景としては、金融業界から気候変動に関する情報を求める声が挙がったことです。

企業の財務状況と気候変動には大きな関連があります。例えば、気候変動による災害が増えれば、建物や作物などに影響が生じる可能性が高いです。場合によっては、災害に対する何らかの対策を講じるため、費用がかかります。また、気候の変化によって人々の生活に変化が生じ、商品やサービスの売上に影響が出る可能性もあるでしょう。

そのため、金融投資の際には、気候変動に関する各企業の機会やリスクも判断しなければなりません。

しかし、これまでは気候変動に関する取り組みについての統一された開示基準がなく、投資家が情報を収集するのは難しい状況でした。そのため、投資家がより正確に状況を判断できるよう、TCFDが設立されたのです。

●プライム市場におけるTCFDの開示義務化とは

日本では、東証プライム市場に上場する企業に対して、2022年4月以降TCFDに基づく情報開示が義務付けられています。

従来は、TCFD非開示であっても理由を説明すればプライム市場の選択が可能でした。しかし2022年4月以降は、TCFDに基づく情報開示がプライム市場を選択するための必須項目となっています。

今後TCFDへの注目度がさらに高まれば、さらに多くの企業に対してTCFDの開示が求められるようになるでしょう。

TCFDのシナリオ分析

TCDFでは、企業にシナリオ分析を求めています。

シナリオ分析とは、将来の気候変動が企業にもたらすリスクや機会を想定し、それに基づく対策を事前に検討することです。

シナリオ分析では、複数のシナリオを想定する必要があります。今後どのような気候変動が起きるか、ある程度の予測は立てられても確実に予想するのは不可能です。予想していたよりもはるかに速いスピードで環境の悪化が進む可能性もあります。一方、さまざまな取り組みが功を奏し、ある程度環境悪化を食い止められる可能性もあるでしょう。

1つのシナリオを想定するのみでは、想定外の事態が起きた時に対応しきれない恐れがあります。複数のシナリオを想定し、シナリオごとに企業への影響や対策などを考えておくことで、気候変動に対して柔軟に対応できるのです。

TCFDの開示項目

TCFDでは、大きく4つの開示項目が定められています。

●ガバナンス
●戦略
●リスク管理
●指標と目標

開示項目には優先度が設定されており、上から順に優先度が高いとされています。以下では、それぞれの項目について見ていきましょう。

なお、それぞれの項目ごとにさらに具体的な開示内容が定められているため、開示項目は合計11個存在します。

●ガバナンス

ガバナンスは、気候変動に関するリスクと機会について、組織のガバナンスがどのようなものになっているのかを示す項目です。

気候変動に関するリスクや機会に対して、取締役会はどのような項目を監視するか、経営者はどのような役割を担うかを定め、開示します。

●戦略

戦略は、気候変動に関するリスクと機会が、組織の事業や戦略、財務計画にどのような影響を与えるかを開示する項目です。

自社が気候変動によって受けるリスクや機会にはどのようなものがあるのかを示すとともに、そのリスクや機会をどのように特定したのかも開示します。さらに、複数の気候シナリオを考慮したうえでの組織の戦略も示さなければなりません。

●リスク管理

リスク管理は、組織が気候変動に対するリスクをどのように識別・評価・管理しているかを開示する項目です。

リスクの識別と評価のプロセスを開示するとともに、リスク管理のプロセスも開示します。さらに、上記のプロセスが組織全体のリスク管理とどのように紐づけられているかも説明しなければなりません。

●指標と目標

指標と目標は、気候変動に関するリスクや機会を評価するための、指標と目標を開示する項目です。気候変動が自社にもたらすリスクや機会を、どのような指標を活用して評価するのかを開示します。

また、各指標でどのような数値を目標とするのかも示しておく必要があります。

TCFDに賛同するメリット

TCFDに賛同するメリットは次の4つです。

●気候変動に強い経営ができる
●投資家へのアピールができる
●ブランド価値が向上する
●新たなビジネスチャンスとなる可能性がある

それぞれ、詳しく解説します

●気候変動に強い経営ができる

TCFDに賛同することで、気候変動に強い経営ができるようになります。

TCFDに賛同し情報を開示するためには、さまざまな情報を収集・分析しなければなりません。情報収集と分析の中で、気候変動が自社のビジネスにどのようなリスクを与えるのかが理解できるようになります。

リスクを理解することで、リスクに対する対策や戦略も立てられます。その結果、気候変動に強い経営が可能となるのです。

●投資家へのアピールができる

TCFDへの賛同は、投資家へのアピールにもつながります。

近年ではESG投資の注目度が高まっており、気候変動や社会問題に関する取り組み内容をもとに投資をしたいと考える投資家も増えています。気候変動に対する取り組みを積極的に行っていたとしても、情報を開示できていなければ、投資家から適切な評価を受けるのは難しいでしょう。

TCFDのガイドラインに沿った情報開示によって、投資家への適切な情報提供が可能です。

●ブランド価値が向上する

TCFDへの賛同は、ブランド価値向上にもつながります。

TCFDのガイドラインに沿った情報開示により、企業の透明性が高まります。情報を積極的に公開し、企業の透明性を高めているという行動そのものが、投資家をはじめとした各種ステークホルダーからの高評価につながる可能性が高いです。

そのため、TCFDに賛同することで、ブランド価値の向上が期待できます。


●新たなビジネスチャンスとなる可能性がある

TCFDへの賛同は、新たなビジネスチャンスを生む可能性もあります。

TCFDのガイドラインに沿って情報公開の準備をするなかで、気候変動が自社のビジネスにどのような影響を与えるかがわかります。さらに、排出する炭素を減らすための取り組みや、クリーンエネルギーへの投資が自社のビジネスにどのような利益をもたらすか、などもわかるでしょう。

上記のような取り組みが、新しい製品やサービスの開発につながる可能性があります。

TCFDのガイドラインに沿った情報開示が重要

TCFDとは、企業が気候変動に対して実施している取り組みを開示することを促すタスクフォースです。

TCFDのガイドラインに沿った情報開示を行うことで、投資家に対して適切に情報を提供できます。また、TCFDへの賛同によって気候変動に強い経営ができるようになることや、新たなビジネスチャンスが生まれる可能性があるなどのメリットもあります。

まずは、TFCDについて知ることから始めてみてください。

株式会社NOLTYプランナーズ