目次
総合的な探究の時間はいつから開始される?
総合的な探究の時間とは?
高等学校で行われる、教科や科目の枠を越えた横断的・総合的な学びの時間のことです。特定の教科の枠にとらわれず、生徒たち自身が主体的に課題を設定し、成果や研究結果を発表することを狙いとしています。
総合的な探究の時間の開始時期
総合的な探究の時間は2022年度から高校のカリキュラムにおいて開始されます。 学習指導要領の改訂自体は文部科学省から2018年に告示されており、「総合的な学習の時間」から、今回「総合的な探究の時間」に変更されます。
「総合的な探究の時間」と「総合的な学習の時間」の違い
従来の総合的な学習の時間は、「総合的な学習を通して課題解決能力や主体的な学びを育む」ことを目的とした授業でした。つまり課題を設定・解決することで、自己の生き方を考えることを狙いとしていました。
対して2022年度から高校において新たにスタートする総合的な探究の時間は、生きる力、社会で求められる力の育成を強く求める授業になります。自己の在り方・生き方と切り離せない課題を、生徒自らが発見・解決していくことを目標としています。
中学校では、2022年度以降も名称は総合的な学習の時間から変わりません。しかし、学習指導要領では高等学校と同様に探究的な学びが求められています。
総合的な探究の時間が求められる理由
では、なぜ今探究的な学びが求められているのでしょうか。それは自分の意思で進路を選択し、社会で生き抜くための資質や能力を持つ生徒を育成することが求められているためです。情報化やグローバル化が進展する社会において、困難かつ予測不可能な時代=VUCA時代(VUCA:Volatility(変動)、Uncertainty(不確実)、Complexity(複雑)、Ambiguity(曖昧)の頭文字をまとめた言葉)に突入したと言われています。そういった環境で活躍できる生徒を育成するためには、学力だけではなく「自ら課題発見に取り組み、答えに向かう力」を育成することが必要不可欠です。
学習指導要領によると、総合的な探究の時間では学んだことを人生や社会に生かそうとする「学びに向かう力、人間性等」の涵養、実際の社会や生活で生きて働く「知識及び技能」の習得、未知の状況にも対応できる「思考力、判断力、表現力等」の育成という3つの柱が挙げられています。
出典:文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 総合的な探究の時間編」
https://www.mext.go.jp/content/1407196_21_1_1_2.pdf
総合的な探究の時間における学習の流れ
STEP1:課題の設定
探究学習においては、生徒が自分自身で課題を設定することが大切になります。しかし、何を課題としていいのかわからない生徒が多いという先生からの声もよく聞かれます。そういった生徒には、まず身の回りの物事に興味関心を持たせることが必要です。NOLTYスコラ 探究プログラムでは課題設定の準備段階として、興味関心のステップをオリジナルで用意しています。 また、最初はテーマを与えて、探究型学習の練習をすることも一つの方法です。その場合は地域、文化祭、修学旅行など生徒がイメージしやすいテーマを与えると取り組みやすくなります。
STEP2:情報の収集
自ら立てた問いに対しての答えに近づくための情報を収集します。先生方は答えを示すのではなく、調べ方のアドバイスをすることが大切です。書籍やインターネットでの調べ学習に加え、インタビューやアンケートといった選択肢もあります。先生方からは生徒に「こういう本を読むといいよ」「こういう調べ方もあるよ」などといった声かけをするとよいでしょう。
STEP3:整理・分析
分類・比較・構造化を意識して整理・分析を行います。得た情報を整理・分析することで物事を新たな視点で見ることができます。偏った情報だけに注目しないこと、自分と異なる意見を持つ人の視点に立つことも重要です。
STEP4:まとめ・発表
整理・分析した情報をPowerPoint等でまとめ、発表を行います。クラス・学年内で発表する学校、他学年も交えて体育館でポスターセッションを実施する学校など発表形式は様々です。
NOLTYスコラ 探究プログラムではまとめ・発表の終了後に独自で振り返りのステップを設けています。興味を持った社会課題や生徒自身がどう貢献していくかを考えさせ、探究学習をキャリア教育につなげることを狙いとしています。
総合的な探究の時間における注意点
先生はファシリテーターに徹する
総合的な探究の時間では、生徒が主体的に探究活動を進めていくことが目的とされています。そのため、先生方は生徒たちの意見を聞いた上で、生徒の内発的動機を引き出すことが重要です。生徒の思考を整理し、課題を見つけるヒントを与えるようにしましょう。先生方が中立的に学びをサポートするファシリテーターとしての役割を担うことが、生徒たちが探究学習に取り組みやすい環境に繋がります。
総合的な探究の時間と特別活動
特別活動と総合的な探究の時間との関連について,特別活動の学習指導要領には以下のようにあります。 両者とも,各教科・科目等で身に付けた資質・能力を総合的に活用・発揮しながら,生徒が自ら現実の課題の解決に取り組むことを基本原理としている点に共通性が見られる。体験的な学習,協働的な学習を重視し、自己の生き方についての考えを深める点においても通じるところがある。 両者の目標を比べると特別活動は「実践」に,総合的な探究の時間は「探究」に本質があると言うことができる。特別活動における「実践」は,話し合って決めたことを「実践」したり,学んだことを学校という一つの社会の中で,あるいは家庭を含めた日常の生活の中で,現実の課題の解決に生かしたりするものである。総合的な探究の時間における「探究」は,物事の本質を探って見極めようとしていくことである。特別活動における「解決」は,実生活における,現実の問題そのものを改善することである。総合的な探究の時間における「解決」は,一つの疑問が解決されることにより,更に新たな問いが生まれ,物事の本質に向けて問い続けていくものである。 学習プロセスにおいては重なり合う面もあるが,目指しているものそのものが本質的には異なっているということになります。
総合的な探究の時間はいつから開始される?学習の流れと注意点
ここまで総合的な探究の時間が始まる経緯や学習の流れ、注意点について見てきましたが、改めてまとめたいと思います。 総合的な学習の時間は、困難かつ予測不可能な時代=VUCA時代を生き抜く力の育成を目的とし、2022年度から高等学校で開始する授業です。探究学習には課題設定⇒情報収集⇒整理・分析⇒まとめ・発表という4つの段階があります。どのステップにおいても生徒自らが主体的に学びに向き合うことが、価値ある探究学習に繋がります。そのためには先生方はファシリテーターとしての役割を担い、生徒の学びをサポートすることが重要です。