COLUMN

2023.04.17

クレドとは?企業がクレドを作成するメリットと周知方法を解説

企業の考え方を示す手段のひとつに「クレド」があります。しかし、クレドとは何か、作成するとどのようなメリットがあるのかよく知らないという方も多いでしょう。

本記事では、クレドの概要とクレドを作成するメリット、従業員に対してクレドを周知する効果的な方法を紹介します。

この記事を読めば、クレドの活用方法がわかります。クレドの作成に関してお悩みの方はぜひご覧ください。

目次

クレドとは

クレドとは、ラテン語で「約束」「信条」「志」などの意味を持つ言葉です。ビジネスでは、企業やそこで働く従業員が行動の指針や活動の拠り所とするべき言葉のことを指します。企業の価値観を示す言葉とも言えるでしょう。

クレドが注目される背景として、2000年代に多くの企業で不祥事が発生したことが挙げられます。不祥事とクレドの関係は、1982年に起きた「タイレノール事件」までさかのぼります。タイレノール事件とは、ジョンソン・エンド・ジョンソンが販売したタイレノールという頭痛薬を飲んだ人々が突然死した事件のことです。

事件の発生直後、ジョンソン・エンド・ジョンソンは「まず顧客を守るための行動をする」と決定しました。この決定は、ジョンソン・エンド・ジョンソンのクレドである「我が信条」に基づいたものです。

ジョンソン・エンド・ジョンソンは、事件の原因がはっきりわかる前に、次のような行動を起こしました。

●マスコミを通じての情報公開
●専用フリーダイヤルの設置

その後、自ら製造・販売を中止し、商品を回収するとともに検査機関に対して調査を依頼しました。その結果、さらなる被害を避けられたため、危機管理対策にクレドが効果的だとして注目されるようになったのです。

クレドと企業理念の違い

クレドと混同されやすいのが企業理念です。企業理念とは、その企業が存在する意義やあるべき姿、顧客に提供すべき価値などをまとめたものです。企業の価値観を示すものという意味では、クレドと同様です。

クレドと企業理念は、具体性に違いがあります。企業理念が抽象的となる場合が多いのに対して、クレドでは具体的で従業員が実践しやすい内容が示されます。

例えば、「顧客を笑顔にする」という趣旨の企業理念に対して「顧客の安全を最優先に考えて行動する」という趣旨のクレドが設定されるイメージです。顧客を笑顔にするためにはさまざまな方法が考えられますが、「顧客の安全を最優先に考える」という具体的な内容が示されたことで「どの方法を選ぶのがより安全か」を考え、行動を決定できます。

クレドとミッション・ビジョン・バリューの違い

クレドと混同しやすいもうひとつの言葉が「MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)」です。ミッションとは、企業の使命を示すものです。何のためにその企業が存在するのか、その意義を示すものといっても良いでしょう。

ビジョンは、企業がミッションを達成した後の未来を示しています。企業が将来目指すべき姿とも言えます。

バリューは、企業の行動指針や価値観のことであり、クレドと同じ意味です。ミッション・ビジョンとセットで使われる場合には、バリューと呼ばれることが多い傾向があります。

ミッション・ビジョン・バリューと企業理念の関係は曖昧です。主に、次の3種類の考え方があります。

●ミッションと企業理念は同じものである
●ミッション・ビジョン・バリューの上に企業理念がある
●ミッション・ビジョン・バリューのセットが企業理念である

どれが正解と決まっているわけではないため、自社がどのように考えているか確認してみると良いでしょう。

企業がクレドを作成するメリット

企業がクレドを作成するメリットは次の4つです。

1. 従業員の意識改革につながる
2. 従業員の主体的な行動を促す
3. 従業員のモチベーションが高まる
4. 他社との差別化に役立つ

それぞれ、詳しく解説します。

1. 従業員の意識改革につながる

クレドの作成は、従業員の意識改革、ひいては企業のコンプライアンス遵守につながるのがメリットです。

クレドを作成すると、従業員の行動指針や活動の拠り所が明確になります。今まで判断に迷っていたようなことも、クレドに基づいて判断できるようになるでしょう。

クレドがない場合、金銭的な損得や目先の問題解決を優先して動いてしまうこともあります。法に則った判断や、倫理的な意思決定ができなくなるリスクもあるのです。

クレドがあれば、社会に貢献できるような企業活動を行う、という意識を従業員一人ひとりに浸透させられ、優先順位を取り違えずに判断を下せるようになります。

2. 従業員の主体的な行動を促す

従業員が判断に迷ったとき、上司の判断を仰ぐケースは多いです。しかし、上司の判断を待ってからでは、どうしても意思決定や行動に時間がかかってしまうでしょう。上司の判断を聞かないと行動できなくなり、従業員の主体性が育たないというリスクもあります。

しかし、クレドが設定されており、それに沿って行動することが定められていれば、従業員が自分自身で判断できる幅が広がります。結果的に、従業員の主体的な行動を促し、ビジネスのスピードアップが期待できるのです。

3. 従業員のモチベーションが高まる

企業の価値観が明確でないと、従業員はその会社で働く意味を見失ってしまうことがあります。また、行動指針が明確に示されていないためにさまざまなシーンで判断にブレが生じると、将来性に不安を感じてしまうこともあるでしょう。

クレドによって価値観を明確に示すことで、従業員がその会社で働く意義を見出せる可能性が期待できます。また、常に行動指針に沿った判断を下すことで、ブレを減らすことも可能です。さらに、クレドに基づいて従業員が主体的に判断できるようになると、業務に積極的に関われるようになるため、モチベーションアップにもつながります。

4. 他社との差別化に役立つ

クレドは、内部だけでなく外部に対しても公表します。クレドを外部に公表することは、企業がどのような価値観のもとに業務を行っているかを示すことです。

同じような業務を行っていても、価値観は企業によって異なります。そのため、クレドを公表することは、他社との差別化にも役立ちます。

クレドを従業員に周知する方法

クレドを従業員に周知するには、次のような方法があります。

1. カードを配布する
2. 社内に掲示する
3. 社員手帳に掲載する
4. 朝礼やミーティングで定期的に確認する
5. 社内SNSを活用する
6. 日常の業務に組み込む

どれか1つだけ選ぶのではなく、複数の方法で周知するのがおすすめです。それぞれの方法について、詳しく解説します。

1. カードを配布する

クレドを記載したカードの配布は、従業員への周知に役立ちます。カード形式のメリットは、従業員が自分に合ったスタイルでクレドを確認できることです。

例えば、デスクマットの下に挟む方もいれば、通勤に使うパスケースに入れる方もいるでしょう。

確認しやすいスタイルは人によって異なりますが、カードを配布すればさまざまな確認方法に対応できます。

2. 社内に掲示する

オフィスの見やすい場所にクレドを掲示している企業も多いです。社内に掲示すれば、クレドが自然と目に入り、クレドを意識した行動をとりやすくなります。

また、取引先など外部の人が利用する場所にクレドを掲示しておけば、自社について知ってもらい、アピールする手段としても活用できます。

3. 社員手帳に掲載する

社員手帳は、仕事の際には常に身につけておくものです。そのため、社員手帳にクレドを掲載すれば、従業員の目に入る機会が増えます。

最近では、リモートワークが浸透し、オフィスに出社しない社員も多いです。手帳であれば、オフィスに出社せず自宅で仕事をしている場合でも、クレドをすぐに確認できます。

4. 朝礼やミーティングで定期的に確認する

朝礼でクレドを読み上げる、全社ミーティングで共有する、などの方法で、クレドを定期的に確認するのもよいでしょう。

これまでに紹介した方法は、いずれも視覚でクレドを認識・確認するものです。朝礼やミーティングで確認する場合には、視覚だけでなく聴覚でもクレドを確認できます。さらに、自分自身で声に出してクレドを確認することで、より従業員自身の中にクレドを定着させやすくなります。

5. 社内SNSを活用する

社内SNSがある場合には、それを活用したクレドの周知も可能です。単にクレドを紹介するだけでなく、クレドに沿った行動を評価する場を作るのも効果的です。

社内SNSを活用すれば、クレドの周知とともに、社員同士のコミュニケーションの活性化にも役立ちます。

6. 日常の業務に組み込む

日常の業務で意見や見解を述べる際に、クレドを組み込んで話すよう意識することも大切です。例えば「この提案は、この部分がクレドに沿っていないので、クレドを再確認して修正してほしい」といったような話し方が考えられます。

まずは、経営陣がクレドをしっかり理解して、業務に取り込むことから始めましょう。「クレドに沿った意思決定をする」ことを経営陣が実践することで、ほかの従業員も自然とクレドに沿った判断ができるようになります。

クレドを作成して従業員に周知しよう

本記事では、クレドについて解説しました。クレドとは、企業の行動指針や価値観を示すものです。クレドを作成することで、従業員の意識改革につながる、主体的な行動を促せるなどのメリットがあります。

クレドを作成したら、社員手帳への記載や社内への掲示などで従業員に周知しましょう。この記事を参考に、まずはクレドについて知るところから始めてください。

株式会社NOLTYプランナーズ