生徒に自己を表現する技術を身につけさせたい
手帳を利用しようと考えたきっかけを教えてください。
私は国語の教師ですので、生徒に「書く力」をつけさせたい、と常に考えております。
最近の傾向として活字離れとか、表現力が足りない、欠如しているということが叫ばれています。その様な部分を何とか取り戻してあげたいという気持ちを持っています。特にこの学校に赴任してからその様に感じることがありました。
本校は卒業後に就職する生徒が多いのですが、就職試験の際には面接試験が合否の判定の鍵を握っています。
企業の担当者の方に面接をしていただき「一生ここで働こう」と意欲を見せるのですが、うまく話ができないんです。
「就職活動では自分を表現することが大切ですよね。
本校の生徒は女子が9割で、教師の指示通りに素直に従順にコツコツやるたち子供たちが多いんです。
その反面、自分たち自ら何かを始める、切り開く、ということはあまり見られませんし、その様なことが苦手な生徒が多いと感じます。
ですから企業の担当者の方に「三年間高校生活を過ごして、自分が何をしてきたか」と問われて、答えられないのです。挨拶などの受け応えは充分できるので、 コミュニケーション能力を身に付けるというのも本校の課題の一つだと思いますね。
課題解決には手帳が有効だと感じたきっかけはありましたか?
以前に務めていた浦和北高校という単位制の学校では、生徒が自分で時間割を作るという埼玉県で初めての学校でした。
その学校で私は、独自の取り組みで生徒の司会による朝のSHR(ショートホームルーム)を行っておりました。
生徒自身が「書いて」「確認しながら」自分たちの生活を作っていく、このスタイルをこの学校でも実現できないか?試してみよう、と年度当初に思いました。
本校では商業科で総合実践という授業があります。本校におけるメインの特徴的な授業だと思います。
週に二日、計四時間、3〜4人のグループで仮想の会社を作り、社長、営業、販売というような役割分担をします。
小切手を切ったり発注をしたり、営業計画を立てたり、ということを実践します。その授業の中で手元を見ずに相手の顔を見ながらメモをする、という技術をマスターします。
就職試験の面接において、その技術が企業のご担当者から大きな評価を頂いています。
他の学校の生徒さんに比べ、本校の生徒だけが手帳を出して話を熱心に聞きながらメモをとる。面接試験において企業のご担当者の方に褒めてもらいました、と生徒が報告をしてくれます。
私たちが学校で学んだ技術は間違いではなかった、自信を持てました、と喜んで報告をしてくれます。やはり、書く力があってこそだと思います。
大きなきっかけになったのでなないでしょうか?
本校の生徒はしっかりと聞き書きができる技術を習得できる、ということから、訓練をすれば「書く力」が備わり「表現する力」や「コミュニケーション能力」が育つ、と考えました。
であれば、早い時期から取り組ませたいと強く考えるようになったんです。
意向を教務主任に伝え、是非自分のクラスで実践させてくださいと相談をし実現しました。
基本的な考えは「国語」からきているのですが、本校の生徒なら「かならずできる」と思ったことが、大きなきっかけでした。
手帳導入前は他のツールを利用されていたのでしょうか?また、そのツールに問題点はあったのでしょうか?
三年生でメモを用意しなさいと指導していたので、基本的には1,2年生ではツールなどは用意していませんでした。
教師が前に立って「今日の連絡は・・」と言っても、生徒によってはメモをとらずに聞いているだけ、ということもありましたね。