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探究指導コラム

NOLTYスコラ 探究プログラム

中学校・高校の「探究」に関する記事をまとめています。

2020.04.20

【第4回】「生徒が躓く部分と指導のポイント」


2022
年度より全国の高校で「総合的な探究の時間」が始まります。
NOLTYスコラ探究プログラムの先生向け指導書の監修者、明和学園短期大学 田口哲男教授に、社会の変化、なぜ始まるのか、どのように指導すればいいのかを伺いました。

動画で視聴する場合はこちら(YOUTUBE)


《第4回 生徒が躓く部分と指導のポイント》

「生徒が躓く課題設定」

NOLTYプランナーズ(以下――)一般的な探究サイクルは課題設定から始まりますが、課題設定が難しいとよく言われています。なぜ難しいのでしょうか。


田口哲男氏(以下田口)
「問題」と「課題」は別なものと認識されてないといけないと思います。問いとか問題というのは、理想の状態があり、現状があって、その間のギャップのことで、それが「問題」になります。例えば、1000万円を売り上げることが理想でありそれを目標としたとき、現状では仮に500万円の売上しなかいとします。するとその差額である500万円がギャップであり、問題となります。現状の500万円をどのようにして1000万円まで持っていくか、それを解決するための方法を「課題」と考えています。「問題」と「課題」が混在すると、うまく解決できません。

課題を設定するときには、「これって本当なのか?」とクリティカル・シンキングで少し視点を変えることが必要になると思います。

グループで話し合うときは、こんな意見を言ったら恥ずかしい、ではなく、グループにおける多様な組み合わせがあるから多様な意見が出てくるのであり、そのことが大切であると思えるように指導します。そのためにも課題設定をグループで行う必要性があると思います。

――生徒は無意識に正解を探してしまう傾向があります。そのような大学生に対して先生はどのように指導をされていますか。


田口 高校の教育自体が正解探をしているので、当然そういう思考の生徒が大学に入ってきます。より大学で学ぶためには、グループワークの経験が必要です。グループで話し合うときには当然多様な意見、考え方が出てくるということを予め示しておくことが必要です。

多様な意見が出るためには「このようなこと言ったら恥ずかしい」とか、「バカにされるのではないか」ということがないような状態、つまり「安心安全な場」が必要です。それを作りながら、グループワークをしていくということが大切なことです。

意見を多様にするためには、グループ内の構成メンバーを変えることです。例えば、いつも同じ人、いつでも同じグループにいると多様性は出てきません。いろんな意見があること、正解は一つではないことを示すには、グループワークの時に色々なことが気兼ねなく話せる状況を作っていくとことが必要になります。授業ではそのようなやり方で実施しています。

――なぜグループワークがいいのでしょうか。

田口
 なぜ、グループワークなのかというと、メンバーからの話をインプットし、頭の中で再構成して、メンバーへアウトプットする、という機会をたくさん作ることができるからです。


また、グループにおける多様性という部分を意識せずにグループワークに入ってしまうと、「俺は別に参加しなくてもいい」と他人事として捉えてしまう学生が出てくることがあります。最初にグループで行う意義を明確にするということが大事になります。

何かを行うときにははじめにその見通しを持たせること、例えば、個人としては最初に到達目標を示す、グループには、そのグループの態度目標などをグループで決めさせてから、グループワークを始めると良いです。

ただ3人とか、4人とか、5人とかのグループを作ってワークを行っても、「自分の到達目標は何なのか?」「パーソナルゴールはどこなのか?」「グループの目指すところはどこなのか」ということが分からないままだと、自分は関係ない、時間つぶしにスマホをみてしまうという
場合が出てくると思います。最初の条件設定は留意する必要があると思います。

――なぜ3人4人のグループを目安にするのでしょうか。

田口
 2人ではアウトプットの機会は多くなりますが、多様性が低くなります。反対に5人ではアウトプットの機会は少なくなりますが、多様性が高くなります。3人・4人の場合はその中間なので、アウトプットの機会はあるし、多様性も低くはない。またペアにもなりやすい。3人4人のグループにすると、全体発表をするときにグループが多くなり、発表に時間がかかってしまうのではないかという話も聞きますが、全体で共有する必要がある場合もありますが、実はグループの中で共有すればよい場合もたくさんあるかと思います。あるいは3人や4人のグループを、例えば、3グループくらい合わせて「中グループ」を作り、その「中グループ」で発表会を行うという方法もあります。


グループ編成と共有の仕方を工夫することで時間のやりくりができると思います。

――正解は「探すもの」であると同時に納得解として「創り出す」という面もあります。

田口
 一つはアウトプットを意識させることです。言い換えるとアウトプットを予告するということです。


例えば、講演会の最初に「あなたは、最後に代表して謝辞を言ってください」と指名された人は、どんなにつまんない
講演内容であっても最後まで真剣に聞きます。それはインプットしたこと(講演の内容)を自分が話せるように再構成してアウトプット(謝辞)しなければならないためです。事前にアウトプットすることを通告されていれば、必ず講演を聞きます。アウトプットを常に予告する、最初に言うことが自分事として話を聴くためには必要だと思います。

グループワークの話に戻りますが、全体で発表させることの目的が再構成したものをアウトプットすることであるならば、発表する時間がないのであれば、グループ内で発表させるという
ことでもよいと思います。小テストを設定するということも、書いてアウトプットし、それが評価の対象となれば自分事になる確率は高いと思います。

――問題を自分事として取り組むにはそのようなことが必要ですか。

田口
 グループワークを行うときに、「正解到達型」のアクティブラーニングと、「学び方や学ぶ態度を育成する型」のアクティブラーニングと二つがあります。それがしっかりと明確になっていればよいと思います。例えば、「正解到達型」のアクティブラーニングならば最終的にはグループで正解を探すことを目指しても構わないと思います。一方、社会で何か問題が起こったときに、みんなで話し合っても、その問題を解決する方法には正解が無いわけですよね。


通常社会においては、正解が無い場合のほうが実は多いわけです。そのことを先生方も意識する必要があります。そして、そのことを始まってすぐの授業において明示してから、授業を行うことによって効果がかなり違ってきます。

生徒が、グループワークを行う中で、多様な意見を言ってくれる、それを活用していくことはアクティブラーニングにはよいことだという考え方で深めていくと生徒も安心します。


・4月23日(木)14:00~17:00
明和学園短期大学(前 桐生高校校長) 田口哲男氏参加!
『総合的な探究の時間』疑問を解決  ×【生徒の興味関心を引き出す】模擬授業体験ウェビナー
⇒詳細はこちら


田口 哲男(たぐち てつお) 氏

学校法人平方学園明和学園短期大学教授(https://www.hirakatagakuen.ac.jp/)

公立大学法人高崎経済大学非常勤講師 前群馬県立桐生高等学校校長

県立高校で「総合的な探究の時間」を実践するため学校体制や教員指導のための仕組みづくりに尽力する。

著書「高校における学びと技法 探究で資質・能力を育てる」(一藝社)

サイエンスインカレをはじめ理工系大学生対象支援事業企画評価委員〈文部科学省:2011年度~〉

日本バレーボール協会公認講師、日本スポーツ協会公認コーチ4、日本スポーツ協会公認コーチデベロッパー。
https://www.hirakatagakuen.ac.jp/wp/wp-content/uploads/2019/07/4c7534d55b0b8139842fcbe98c6a9494.pdf

株式会社NOLTYプランナーズ