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探究指導コラム

NOLTYスコラ 探究プログラム

中学校・高校の「探究」に関する記事をまとめています。

2019.11.19

【第3回】「総合的な探究の時間と教育改革」



2022年度より全国の高校で「総合的な探究の時間」が始まります。
NOLTYスコラ探究プログラムの先生向け指導書の監修者、明和学園短期大学 田口哲男教授に、社会の変化、なぜ始まるのか、どのように指導すればいいのかを伺いました。


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《第3回 総探と教科の関わりと指導ポイント》

総合的な探究の時間と教育改革
NOLTYプランナーズ(以下――)
キャリア教育、ゆとり教育、アクティブラーニング、ポートフォリオ、探究と、さまざまな施策が出てきて、対応するのが大変だと感じる先生は多いと思います。各施策には関係性はあるのでしょうか。


田口哲男氏(以下田口) 文科省の施策がいろんな形で出てきているところはあると思うのですけど、基本的にはこれから社会の変化が激しく、どのように変化するかわからないという時代に突入するであろうことを想定しています。ただ文科省の施策自体は変わっていないんです。

知識基盤社会では知識や情報がどんどん変わって(更新されて)いく。もちろん今後の社会でも知識は必要ですけど、それ以外の能力も必要なんじゃないか。それを身につけるような教育に転換しなければいけないというのが教育改革の一番大きなところです。

知識でないものを測るためにポートフォリオとかルーブリックが出てきています。知識の測定だけでいいという場合は、客観テストをやれば知識がどのくらいあるかということはわかりますが、今後の社会で一番求めたいのは知識も含め、資質・能力を身につけさせるということ。


――流れとしては実は変わっていない、1本の大きな流れの中にある、ということですね。


田口 はい。


「総合的な探究の時間におけるアクティブラーニング」

――アクティブラーニングを行う目的はなんでしょうか。


田口 一つは知識を定着させる、あるいは知識をしっかり身につける、そのためのアクティブ・ラーニングがあります。もう一つは、能力とか態度を身につけるためのアクティブ・ラーニングがあります。前者は知識到達型、後者は資質・能力を育成する、別の言い方をするとコンピテンシーを育成する型です。

知識到達型の場合は、正解は一つであり、アクティブ・ラーニングをやって正解に到達する型です。資質・能力育成型は答えが複数出たり、みんなが「いっぱい解があるけど、これが一番いいんじゃない?」と納得する解になったり、そういったものへの到達を目指すタイプです。ただその場合は正解探しが目的ではなくて、やっていく中で必要な資質・能力を身につけていく、そのためのアクティブ・ラーニングをやっているというふうに考えればいいと思います。


――普段の教科では知識到達目的、総合的な探究や特別活動などは資質能力育成目的、それぞれアクティブラーニングの果たす役割があるのですね。


田口 そうですね。理科とか数学で答えがいくつも出るようなものというのは、アクティブ・ラーニングに適してないんじゃないかと言う先生もいると思います。

ただ、知識を定着することを目的としてアクティブ・ラーニングをやる場合もあるし、答えが複数出てきて、一つ一つを検証して、最終的に納得解を作っていく場合もあります。アクティブ・ラーニングをやる目的が混乱してしまうと「アクティブ・ラーニングって何?」となると思います。


「総合的な探究の時間における指導と心構え」

――探究活動における指導はどのように考えたらいいでしょうか。


田口 大事なのはこのアクティブ・ラーニングは正解を求めるためにやるということではなく、主体性、協働性、多様性を認める資質・能力を育てるという部分です。資質・能力を育てていくことも必要だと理解してもらえれば、先生方がどう生徒の探究に関わったらいいかは、わかるのではないかと思います。


――専門外のことを生徒から質問されたら、と不安に思う先生もいらっしゃいます。


田口 どうしても知識があるかないか、持っているか持ってないか、そういう視点で先生方は捉えがちです。先ほど出たように、知識基盤社会では知識はどんどん更新されます。今求められているのは、知っている・知らないではなく、どうやって学ぶかという学び方であり、どういう態度で学んだらいいか。生徒同士のお互いの力の引き出し方、違った意見をうまく活用するやり方を身につけるような視点を先生方には持ってもらえばいいと思います。

これは自分の専門分野だ、専門分野ではないということではなく、生徒同士の学ぶ過程の中からお互いに持っているものを引き出したり、もし知識が足りなければ、図書館で調べたり、スマホで調べたりして、新しく知識を持ってくる、それを生徒に教えてあげることです。生徒に聞かれたらそれを先生が「これはこうだ」と知識の部分を単に伝達することが探究ではないと考えています。


――「総合的な探究の時間」と「教科」との関係はどうでしょうか。


田口 各教科・科目を横断したものが「総合的な探究の時間」だと思います。各教科・科目の知識とか、スキル、技能がありますよね。そういったものを探究の中で活用していく。

活用することによって、各教科・科目の知識やスキルというか技能が、今度はそれが深化、深まってきます。探究と、各教科・科目の学習が往還する。ですから、知識だけじゃなくて、見方、考え方という部分が「総合的な探究の時間」に生かされて、そのことによって各教科・科目の見方、考え方が深まってきます。

――探究自体がどういうものか分からず不安な先生もいらっしゃいます。先生自身が探究マインドを持つにはどのようなことが必要でしょうか。


田口 先生も探究を楽しむこと。それから、例えば学校経営、部活指導、教科の授業を検討するとき、探究の過程を通しているはずです。(普段やっていることを)振り返ってもらえば、そんなに新しいことではありません。先生自身、探究という授業は(学生時代に)経験していないのですが、社会の中、学校の中では十分それに近いことはやっているはずです。それを生徒に学ばせると考えれば、探究という新しいことが入ってきて、どうしよう、と心配する必要はありません。


――先生は、当たり前のように探究をしているので、難しいことと身構えなくて大丈夫だということでしょうか。


田口 そうですね。とくに社会ではディスカッションをする中で新しい企画、考え方が生まれるというのは、珍しいことではなく普通行われていることです。それを生徒に高校時代、早めに体験させると考えてください。

                                           

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田口 哲男(たぐち てつお) 氏

学校法人平方学園明和学園短期大学教授(https://www.hirakatagakuen.ac.jp/)

公立大学法人高崎経済大学非常勤講師 前群馬県立桐生高等学校校長

県立高校で「総合的な探究の時間」を実践するため学校体制や教員指導のための仕組みづくりに尽力する。

著書「高校における学びと技法 探究で資質・能力を育てる」(一藝社)

サイエンスインカレをはじめ理工系大学生対象支援事業企画評価委員〈文部科学省:2011年度~〉

日本バレーボール協会公認講師、日本スポーツ協会公認コーチ4、日本スポーツ協会公認コーチデベロッパー。
https://www.hirakatagakuen.ac.jp/wp/wp-content/uploads/2019/07/4c7534d55b0b8139842fcbe98c6a9494.pdf



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