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2022.07.06

SDGコンパス ステップ3 「目標を設定する」でやるべきことと注意点



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SDGコンパス ステップ1

SDGコンパス ステップ2



SDGコンパスのステップ3では、目標を設定します。

SDGsに取り組んでいる企業のご担当者の方の中には、どのように目標を決めればいいかわからないという方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。

そこで本記事では、SDGコンパス ステップ3でやるべきことを具体的に解説します。目標を設定する際の注意点も解説していますので、ぜひご覧ください

目次

SDGコンパス ステップ3:目標を設定する


SDGコンパスのステップ3は「目標を設定する」です。SDGコンパスのステップ2で決定した優先課題に基づいて目標を設定します。

目標を設定することにより、各取り組みで目指すべきゴールが明確になります。また、現時点でどれだけ目標に近づけたのか、これからどれだけの取り組みが必要なのかの判断も可能です。

目標を設定しないまま取り組みを行うと、どれだけの効果が出ているのか判断しにくくなります。目標を設定しておくことで、より効率的かつ意欲的にSDGs達成のための取り組みを実施できます。







SDGコンパス ステップ3でやるべきこと


SDGコンパス ステップ3でやるべきことは次の4つです。

●目標範囲の設定とKPIの選択
●ベースラインの設定と目標タイプの選択
●意欲度の設定
●目標を公表する

それぞれの項目について、詳しく解説します。




目標範囲の設定とKPIの選択


まずは、目標範囲の設定とKPIの選択を行います。目標範囲の設定とは、SDGsの17の目標に紐づく169のターゲットのうち、どのターゲットに対しての取り組みを行うかを決めることです。

SDGsのターゲットは経済・社会・環境と3つの分野に分類可能です。目標範囲は、これらをすべて網羅するものが望ましいとされています。

一般的に、環境に関する目標は設定しやすく、社会的側面に関する目標は設定されにくい傾向があります。なぜなら、社会的な課題はモニタリングや計測の難易度が高いためです。

しかし、難易度が高いからといって多くの企業が社会的課題に対する目標設定を避けていては、持続可能な社会の達成は難しいです。そのため、SDGコンパスでは、すべての課題を網羅するのが望ましいとされています。

なるべくすべての分野を対象に、SDGコンパス ステップ2で決定した優先課題を網羅する目標範囲を設定してください。

目標範囲を設定したら、次にKPIを設定します。KPIとは、目標の達成度合いを確認するための指標のことです。

KPIを設定することで、目標の達成にどれだけ近づいたかを数字で確認できます。SDGコンパスでは、次のポイントを満たすKPIを選ぶのがよいとされています。

●具体的で計測可能である
●取り組みの影響または結果が直接わかる
●一般的に使われている

これらをすべて満たすのは難しい場合もありますが、できる限り上記の条件に沿ったKPIを選択してみてください。

特に、取り組みの影響または結果がわかるKPIは、さまざまな事情で計測が困難もしくは不可能な場合が多くあります。その場合、投資する資本や実施する研修など、どれだけのリソースを割いて取り組みを行うかをKPIとしても構いません。

例えば、名古屋銀行の働き方改革宣言には「お互いを尊重し、すべての人がこころもからだも健やかな働き方を実現します。」とあります。しかし、社員が健康かどうかを数値化し、計測するのは困難です。

そのため名古屋銀行では、がん検診の受診率や喫煙率などをKPIとして定めています。

(参考:ワークライフバランスへの取組み|名古屋銀行


このように、目標達成度を適切に示せるKPIを探してみてください。





ベースラインの設定と目標タイプの選択


次に、ベースラインの設定と目標タイプの選択をします。ベースラインとは、比較対象となる特定の地点または期間のことです。

たとえばセブン&アイグループでは、2050年の食品廃棄量を2013年度比で75%削減するとの目標を設定しています。このとき、2013年度の食品廃棄量をベースラインと呼びます。

(参考:GREEN CHALLENGE 2050


ベースラインを設定する際には、選び方や選んだ理由に透明性を確保しましょう。また、合併や買収、撤退などによって測定結果や取り組みの一貫性が損なわれる場合には、ベースラインを設定し直す必要があります。

目標タイプは、絶対目標相対目標の2種類です。

上記のセブン&アイグループの例でいえば、売上百万円あたりの食品廃棄量を2013年度比で75%削減すると設定されています。このように、企業の成長や衰退を考慮して設定された目標が相対目標です。

一方、食品の販売量にかかわらず、単純に2013年度と2050年度の食品廃棄量を比較して75%削減するといったような目標を、絶対目標と呼びます。




意欲度の設定


ベースラインを設定したら、次に意欲度を設定します。

意欲度とは、言い換えれば目標の大きさのことです。上記のセブン&アイグループの例でいえば、「75%」という数値が意欲度にあたります。

意欲度の高い目標を設定することで、社会に対するより大きな影響を期待できます。

また、多くの企業が意欲度の高い目標を設定すると、同業他社もそれに沿った方針を取らざるをえません。なぜなら、異なる方針で運営を行うと、業界に取り残される恐れがあるためです。

目標設定の方法には、「アウトサイド・イン・アプローチ」「インサイド・アウト・アプローチ」の2種類があります。

相対目標と絶対目標は、どちらも完全に全体像を掴めるものではありません。そのため、なぜその目標を設定したかをきちんと説明できるようにしておく必要があります。



アウトサイド・イン・アプローチ とは、世界的・社会的なニーズという「外部の視点」に基づいて目標を設定し、現状の達成度と求められる達成度のギャップを埋めていく方法です。インサイド・アウト・アプローチでは、過去のデータや経営資源など「企業内部の視点」に基づいて、同業他社の達成度などを目安としながら目標を設定します。

意欲度の高い目標設定はアウトサイド・イン・アプローチで行うのが望ましいです。インサイド・アウト・アプローチは、目標設定が消極的になりがちだからです。

世界中の各企業が積極的に取り組まなければ、SDGsは達成できません。そのため、アウトサイド・イン・アプローチでの目標設定が推奨されています。




目標を公表する


設定した目標は、企業の公式サイトなどで公表しましょう。

目標を公表すると、SDGs達成に積極的に取り組む企業であることを外部にアピールできます。また、従業員や取引先のモチベーションが高まることも期待できます。

また、企業の場合国連のWebサイト上に目標を公表可能です。ただし、国連のWebサイトに掲載されるためには、毎年報告書による情報発信を行わなければなりません。






SDGコンパス ステップ3に取り組む際の注意点


SDGコンパス ステップ3に取り組む際には、次の3つのポイントに注意しなければなりません。

●大きな目標に対するKPIは具体的かつ計測可能なものを複数選択する
●長期的な目標には短・中期的な目標をあわせて設定する
●リスクとメリットを考えて目標を公表する

それぞれの項目について、詳しく解説します。





大きな目標に対するKPIは具体的かつ計測可能なものを複数選択する


大きな目標に対するKPIは、一つだけでなく複数選択しましょう。

SDGコンパスでは、大きな目標の例として「カーボンニュートラルを達成する」が挙げられています。カーボンニュートラルの達成は重要ではありますが、これだけではどのように目指すか漠然としています。

そのため、大きな目標を達成するためには、たとえば再生可能エネルギーの使用量を増やす、CO2の分離回収を行うなど、具体的に実行できる取り組みを複数設定しましょう。それぞれにKPIを設定することで、目標達成までにすべきことが明確になります。




長期的な目標には短・中期的な目標をあわせて設定する


長期的な目標は、ステークホルダーに大きなインパクトを与えられます。例えば、「2030年までに再生可能エネルギーの使用率を50%にする」という目標より、「2050年までに再生可能エネルギーの使用率を100%にする」という方が、インパクトは大きくなります。

一方で、長期的な目標は担当者の変更や従業員の入れ替わりなどで責任があいまいになりがちです。そのため、長期的な目標を設定する場合には、短・中期的な目標もあわせて設定することが推奨されています。





リスクとメリットを考えて目標を公表する

目標を公表することは、外部へのアピールになり、従業員らのモチベーションアップが期待できます。一方、未達成の場合は批判されるリスクを負います。

設定した目標は、必ずしもすべて公表しなければならないわけではありません。目標を公表する前に、メリットとリスクのバランスを考えておきましょう。







SDGコンパス ステップ3で目標を決めよう



SDGコンパスのステップ3は、目標を決定するステップです。ステップ2で決めた優先課題を踏まえて、具体的に目標を設定しましょう。

漠然とした目標を設定するだけでなく、KPIの選択や意欲度の設定も必要です。本記事を参考に、SDGコンパス ステップ3に取り組んでみてください。



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